ナイスアイディアじゃない?
アガレットさんとの話が終わって、帰ろうとしていたとき、廊下でひょっこりドーナツさんと出くわした。よかった、もう体、良くなったんだ! 服装も私服に変わっててサッパリしている。
その側にはエクレア先生とゼリーさんもいた。ナイス遭遇! ところで、三人でなに話してたんだろうね?
わたしが気づいたのと同時に、ドーナツさんもわたしに気づいて片手を上げた。
「オルさん、もう大丈夫なの?」
「アスナ! さっきはごめん!」
ドーナツさんはわたしに深く頭を下げてきた。
「えっ、そんな、気にしないで。ジャムのことで頭がいっぱいだったんだよね? わかるよ」
「ああ、そうだったんだ。けど、だからってアスナにあんな態度を取っていい理由にならない。だろ?」
「ん、じゃあ、許します。これでオッケー?」
「ありがとう」
ドーナツさんはニッと笑った。うんうん、いつものドーナツさんだ。元気になってくれて良かった。さっきはビックリするくらい空気がピリピリしてたもん。
「今から帰るところか?」
「うん、そうだよ。オルさんは?」
「これからギズヴァイン先生の家へ行って、調べ物を手伝うんだ。昨日ずっと走り回って陛下を探したけど、何の目撃情報もなくってな……。医務室で寝てたとき、先生が来てくれてさ、陛下を見つける手助けになるって言うから」
「はい。宰相閣下のことを知れば、行方の糸口が見つかるのではという話になったんです。父からそれを任されることになり、それで、彼に協力してくれるよう頼んだんです」
へぇ〜!
シャリアディースについて情報を集めるんだね。それはいい案だと思う。わたしも、アイツについてはあまり知らないし。
「よし、わたしも手伝わせてもらっちゃおうかな!」
「あら、いい案ですわね、アスナ」
「それとも、迷惑ですか?」
「迷惑だなんて、そんなことはありませんよ。むしろ大歓迎です」
わたしの提案に、エクレア先生が笑顔で頷いてくれた。
「じゃあ、一緒に今から行ってもいいですか?」
「頼む、アスナ。俺は正直役に立たない!」
ドーナツさん、正直すぎ!
「はい、ぜひお願いします。ジェロニモとオールィドさんだけでは不安だったので」
こっちもか! ゼリーさんてば!
「キャンディ、頑張って!」
「貴女も頑張るんですわよ」
キャンディを応援したら、真顔で怒られちゃった。
わたしたちはお城でお昼ごはんを済ませて、それから先生の家、もといギズヴァイン邸へ向かうことになった。
その途中、伝書機の話題になった。わたしだけじゃなくゼリーさんやドーナツさんも伝書機を欲しがっていて、一緒に同じ型のを買うことにした。そしたら、なぜかすでに自分のを持っているはずのキャンディや、魔力が少ないから持たないと言っていたエクレア先生までお揃いで買うことになってしまった。
なんでこうなるかな? 使えるかどうかはわからないけど、事情を聞けばきっと拗ねるだろうから、蜂蜜くんにも買っておくことにする。あと、アイスくんにも。
伝書機の形は、リボンタイ。男子の分は、正確にはリボンじゃないけどね。でも、やっぱり首もとに着けることに変わりはない。必要なときに魔力を通せば、手紙とかの軽いものを運んでくれる。
「この最新型は、メッセージも飛ばせるみたいですよ」
「本当? じゃあ、もうふたつ買う! お小遣い足りるかなぁ?」
エクレア先生がいいことに気づいてくれたから、すかさずわたしは、あとふたつ手に取った。
「そんなにどうするんだ、アスナ」
「あのね、これに伝言を吹き込んで、ジャムとシャリさんに届けようと思って。オルさんも一緒に吹き込もうよ」
「なっ、すげぇ! よく思いついたな」
「えっへっへ〜。って言っても、この機能に気づいてくれたアルクレオ先生のおかげだけどね」
「よし、わかった、その費用は俺が持つ。早くメッセージを吹き込もうぜ!」
お会計を済ませたわたしたちは、広場までやってきた。そしてさっそく、ジャムに宛てる伝書機にメッセージを吹き込み始めた。
「ジャム、どこにいるの? 連絡ちょうだい。アスナより」
「陛下、場所を知らせてください。必ず俺が迎えに行きます!」
「お兄様、ご無事をお祈りしておりますわ」
「陛下、どうかこれに触れて、送り返すだけでもなさってください。お帰りをお待ちしております」
わたし、ドーナツさん、キャンディ、エクレア先生の順番で声を吹き込んでいく。次はシャリアディース宛てだ。
「シャリさん、さっさと帰ってきて! アスナより」
「宰相閣下、俺です、ドゥーンナッツです。連絡をください」
「宰相閣下、アーシェイの娘です。ご無事でのお帰りをお祈り申しあげます」
「宰相閣下、ギズヴァインです。どうかこれに触れて、送り返すだけでもなさってください。お帰りをお待ちしております」
わたしはゼリーさんにも伝書機を向けたけど、黙って首を横に振られてしまった。ふたつとも、魔力を込めて飛ばすと、鳥みたいに翼を広げて飛んでいった。
「それにしても皆、シャリさんにだけ固かったね、伝言」
わたしの言葉に、三人ともビミョーな表情をしている。ああ、これは……シャリさんのことが嫌いというよりは、「仕方がない」みたいな反応だ。そういえば、ジャムには名乗らなかったのに、シャリさんには皆、名字を名乗ってたね……もしかして、声で識別できない?
「アイツ……シャリさん、皆のこと、もしかしてわかんない?」
「…………」
返ってきた沈黙が、事実を雄弁に語っていた。
「わかんないんだ……。ジャムにはわかるのに、シャリさんってば、声聞いただけじゃわかんないんだ……」
「そうなんです……」
信じらんない……。
わたしがドン引きしていると、エクレア先生が申し訳なさそうにしていた。いやいや、先生が落ち度を感じるところじゃないよ、絶対。先生の努力不足なんかじゃないからね?
わたしは蜂蜜くんとアイスくん用に買った伝言機にも「これ使ってね」ってメッセージを吹き込んで飛ばした。どうか無事に届きますように。




