いつも通りに……
「それで、何処にいくんだ?」
歩き始めてからヴェルナに尋ねた。
「そうね。とりあえず村か…街ね。」
「おおッ文明圏!」
ここに来てから初めて喋ったのはAIのシエルで、その次に接触したのはスライムのネフだ。野生動物達は……数に入れないとして、ヴェルナとリーネは初めて会う現地人だった。衣食住にそこまでこだわりの無い俺はこの薬草草原の生活にあまり不満が無かった。欲しいものはネットで買えるし、家の代わりのテントも不自由を感じ無い。そもそも気温も問題無く、夜は魔法を練習して魔力が切れたら強制睡眠待ったナシだった。疑問に思った事やただのおしゃべりにも相手になってくれるシエルのおかげで孤独感も感じなかった。
だが、やはり異世界の文明に興味が無い訳ではない。
そもそもこの2人とも普通に会話ができると言うことは、言語は日本語で問題無いということなのだろう。
シエルに貰ったアイテムがイヤに高性能でよく分からないファンタジーアイテムだからイマイチどんな世界なのか想像が出来ない 。
リーネはさっきの精霊喰いとの戦闘に剣を使った。
そして俺は魔法が使える。
ただし、攻撃魔法は全く使えない。
コレはこの世界の常識なのか、俺限定の事なのか……
この先戦闘になった時俺はどうすべきか、相談しないといけないな。
「……」
歩き始めてすぐにヴェルナがチラチラとこちらを見てくる。
最初はいかにも歩き慣れてない俺を気遣ってくれているのかと思ったが、どうも違うみたいだ。
「……えっと…何か気になる?」
思い切って尋ねてみた。
「…いや……その2人はいつも…その状態なのかしら…と思って……」
……2人?
「ああ!シエルとネフか。うん。移動する時は大体こうかな。」
シエルは小さくなって俺の右肩に座ってるし、ネフは背中に張り付いて胸辺りで巻き付き、左肩から顔を出している。絶妙なひんやり加減が気持ちいい。
「………………そうなのね…。」
多分に何か言いたげな顔だが、無理やり納得して彼女は前を向いた。
それからしばらく微妙な空気感を感じながら黙って歩いていたが、足に重だるさを感じてきた。
……そろそろヒールをかけておくか。
「……ヒール」
野天風呂を作っていた時、少し疲労感を覚えると回復魔法をかけていたので、ごく当たり前に回復魔法を発動する。自分だけだと申し訳ないからヴェルナとリーネにもかける。
魔法が発動した途端前を行くヴェルナとリーネがバッと振り返る。
「……ッ!」
急にこっちを見るから驚いてると、ヴェルナが訝しげに話しかけてきた。
「今……なんで回復魔法をかけたの?」
「え、……だって…ちょっと疲れただろ?」
2人の勢いに気圧されながら両手を上げて弁明する。
「「…………はァ?」」
ヴェルナとリーネが意味が分からないといった感じで聞き返してきた。
「いや、だから……ちょっと歩いて疲れたから回復魔法かけたんだけど……え!?俺の魔法変だった?実は人にかけたの初めてだったんだけど……」
美人2人の強ばった顔ってちょっと怖いね。
「あのねぇ…こんなすぐに回復魔法使ってたら魔力がもたないでしょ?」
ものすごく呆れながら教えられた。
「あっ〜!そっか、そうだよな。最近魔力切れまで使える事が無くなってたから、久々に切れるまで使えるな〜って思ったんだけど……たしかにいざと言う時魔力が足らなかったら大問題だもんな。うん。」
俺の言葉にはっとする美少女ヴェルナ。
「……そうか。…そうよね。ユウヤの魔力容量はまだ増やせる段階なのよね……じゃあ……」
小声でブツブツと言いながら考え込んでいたヴェルナが顔を上げて笑顔で見上げてきた。
綺麗な顔で満面の笑顔なのに……背筋がゾクッとするのは気のせいか?
「……ユウヤは確か結界を張る魔法が得意なのよね?」
「……え、得意っていうか……」
「回復も、得意よね?」
「……あ、…ハイ。」
「じゃあ今から歩きながら結界を張り続けながら歩いてちょうだい。結界の付与効果は回復で。もちろん私達も効果範囲に入れてね。」
なんだって!?
歩きながら常時回復効果の結界を貼り続けろって!?
「え…っと。できるかわかんないけど?」
「大丈夫よ。何事も挑戦することが重要なの。」
いい笑顔で言い切られた。




