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ドイツ帝國に生きる  作者: 幽々夢 妖帝歌
二正面激戦
77/105

形成されていた罠

「敵襲!!敵襲!!!」     「落ち着け!!慌てるな!!」


「ガスマスク!マスクはどこだ!!?」     「どけよ!」


ドイツ軍の塹壕内はフランス軍の毒ガス攻撃により混乱状態に陥った。塹壕に向けて少しずつモヤが迫ってくる。

ラインハルトは運良く自分用のガスマスクを携帯していた。彼はすぐに自分のマスクを装着すると作戦室に走った。


ハアーー、ハアーー


途中何度もドイツ兵たちと肩をぶつけてよろけながらも、とにかく走った。

そして、無事に作戦室に辿り着くことが出来ると、中にいた下士官たちが心配してラインハルトに声をかけた。


「中尉殿!ご無事ですか?!」   「毒ガス攻撃が来ていると聞きましたが……!」


「うん、僕は大丈夫。すぐに敵の攻撃に備えよう」


ラインハルトはガスマスクを取り外し、作戦地図を下士官たちと囲んだ。


ーー結局、この日の夜のフランス軍の攻撃は毒ガスによるものだけであり、砲撃や銃剣突撃はなかった。ドイツ軍側の損害は微々たるもので、フランス軍の攻撃の失敗のように思われた。

しかし、ラインハルトは違和感を抱いた。


「昨夜の攻撃はこけおどしでしょうか?」


下士官の一人がラインハルトに尋ねた。妙な違和感を抱いたのはラインハルトだけではなかった。


「だとしても、そんなことをする意味がわからない。あのまま僕らを攻撃していれば、それこそもっと戦果を上げられたはずだ」


「……そうですね」


ラインハルトはフランス軍の意図が読めず、部屋の中をぐるぐると回った。


「一体なんだ?フランス軍の目的は。最近は塹壕からの攻撃も鳴りを潜めているし……」


ラインハルトは癖でぶつぶつと独り言を呟いた。

ラインハルトが考えを張り巡らせている最中、兵士が中に入ってきた。


「中隊長殿、後方部隊と連絡が取れません……」


「無線の調子が悪いの?だったら伝令兵に任せよう。昨日のヒトラー殿なんかどうだろうか?彼に頼めばいい」


「はっ!」


ラインハルトはますます悪寒がした。

そして、その結果は少し後にわかるーー。













「追い返せ!!」


フランス軍の一部隊を率いるトーマは敵の塹壕めがけて攻撃を仕掛けていた。十分な砲撃と歩兵による速攻でドイツ軍は足並みを崩して撤退し始めていた。


「ロベ君、上手くいきそうですね!」


「ピエール、油断はよくない。『砲撃王』は手(・)練(・)れ(・)だぞ」


ピエールはトーマに注意され、気を引き締めた。

今、彼らが攻めているのはラインハルトのいる部隊と少(・)し(・)離(・)れ(・)た(・)と(・)こ(・)ろ(・)に(・)い(・)る(・)部(・)隊(・)であるーー。














「中隊長殿!」


ラインハルトが敵の動きについて思考を繰り返している最中、再び兵士が入ってきた。ヒトラーである。


「あれ?ヒトラー殿?どうかしたの?」


「誠に申し訳ありません!敵に阻まれて、味方の部隊に情報を回すことができませんでした……」


「え……?」


ラインハルトは耳を疑った。彼がヒトラーを送りこんだ先は味方陣地にいるはずの部隊であった。仮に敵の砲撃が激しかったと言えども、敵に阻まれて戻ってくるようなことはありえなかった。

ラインハルトはヒトラーに聞いた。


「敵の砲撃があったのかい?!」


ヒトラーは首を横に振ると、衝撃的なことを言った。


「いえ、敵そのものと遭遇しました!」


作戦室は一瞬、音が消えた。唖然としている下士官の手からメモ用の鉛筆が落ちる。


「貴様、冗談はよせ。敵がそんなところに回り込めるはずがないだろう……?」


将校は明らかに動揺していた。だが、ヒトラーは事実をありのまま述べた。


「しかしながら、敵兵と思しきものたちは確かに我が帝国軍の服ではなくフランス軍の服を着ておりました。途中、数人と目が合い発砲を受け、命からがら戻ってきた次第であります!」


「馬鹿な……」


将校は腰が抜けたように椅子に座り込んだ。

ラインハルトはそれまで霧のようにはっきりしなかった思考に一閃の光が差し込んだ。


「まさか!!」


ラインハルトは大きな声を上げるのと同時にソンム周辺の地図を見渡した。

将校や下士官たちも覗き込む。


「中尉、何かわかったのか?」


「もし、僕の仮説が正しければ……」


ラインハルトは自身の下唇を噛み締めた。口内にじんわりと血の味が広がる。

ラインハルトは首をがくっと下に落として、告げた。


「我々は、フランス軍に包囲されたかもしれません……」

読んでくださりありがとうございます。次の作品が投稿され次第、ぜひ読んでいってください。

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