アグネスの閃き
「敵に一矢報いましょう!!」
「そうです!!このまま黙ってなんていられないです!!」
「そうだそうだ!!」
フランス軍の砲撃に晒されて撤退したドイツ軍は、報復することに息巻いていた。
ラインハルトは彼らの無計画な発言には耳を貸さず、じっと固まって考え込んでいた。
「アグネスがいれば……」
アグネスは今、ラインハルトと行動を別にしている。彼女も砲兵隊の指揮を取っている。
ラインハルトは、アグネスが自身にとって良い相談役になっていたことを深く実感した。
「さぁて、どうしたものか……」
「フォーゲルさん!お荷物持ちます!!」
「フォーゲル隊長!暖かい飲み物をお持ちしました!」
「え、あ、うん。ありがとう」
アグネスは奇妙だと思った。ドゥオモン堡塁を陥落させて以降、明らかに兵士たちの態度が変わっている。兵士たちはアグネスにかなり優しく接している。
「フォーゲルさん、休憩も大事ですよ?」
「でも、私が休んだら他の人たちに申し訳ない」
「あ、そうですね!すみません!」
アグネスとドイツ兵が会話をしている最中に、別の兵士が走ってやってきた。何やら焦った表情でいる。
「フォーゲル殿、シュライザー中尉の砲兵隊がやられたそうです!!」
「!!!?」
「シュライザー中尉は無事です。ですが、敵の防御は想像以上に堅いものと思われます……」
「そう。報告ありがとうございます」
アグネスは一瞬動揺したが、ラインハルトの無事を聞いて胸を撫で下ろした。
しかし、肝心のフランスにどうやって攻撃を加えるかの問題は依然としてあった。
「フォーゲルさん、どうします?」
(……)
「フォーゲルさんってば」
「うるさい!!」
アグネスの反応を促した兵士はアグネスに怒鳴られて萎縮した。周囲の兵士たちは笑っていた。
アグネスは自分が怒鳴ったことで恥ずかしくなって赤面した。
「ごめんなさい……」 (だって、しつこいんだもん……)
アグネスはその瞬間、思いついた。
(あ、そういえば……)
「空からの監視、ないしは攻撃……。確かに厄介ですね」
「そうそう。ライト兄弟もとんでもないものを作ってくれたものだよ」
「それは皮肉ですか?」
「称賛さ」
トーマはフランス兵と話しながら紅茶を飲んでいた。
「この紅茶も美味いもんだなぁ。でも、俺には似つかわしくないね」
「確かに……」
「イギリスの、戦争とは無縁なお偉いさんにピッタリさ」
「今度は皮肉ですか?」
「皮肉さ!」
トーマが守る拠点は比較的に平穏な時間を過ごしていた。時折ドイツ軍の攻撃があるが、トーマはペタンとの約束通り、それらを退けた。
「なあ、そういえばだけど」
「はい?」
フランス兵は首を傾げた。
「君の名前は?」
「は?」
フランス兵は目が点になった。そして、大きなため息をついた。
「私、前に名乗りましたよねぇ……」
「そうだっけ?」
トーマは完全に忘れている。フランス兵はとくに怒る様子もなく、むしろえらく呆れた様子で答えた。
「『ピエール・ド・ゴール』です!そもそもあなたと同じ階級なんですから覚えてくださいよ!」
「わかったわかったって。『ピエルールル・ダ・ゴーン』ね」
「違います!!『ピエール・ド・ゴール』です!!」
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