↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/4

第一話 出会い



 家に帰ると、獣人の男の子が部屋に迷い込んでいた。



「えっ、だれ……?」



 思わず驚いて声を上げると、此方を見た男の子は警戒するようにギロッと睨み付けてくる。

 彼の背後で、不可思議な光のゲートが空中でぐるぐると渦を巻いているのが見えた。


 獣の耳と尻尾を生やした男の子に、不可思議な光のゲート。

 目の前の光景は、あまりにも現実離れしている。


 ……もしかして。

 この子は、異世界から来たのかな。



「えっと、こんにちは」



 とりあえず声をかけてみよう。

 挨拶をしてみると、それに驚いたのか、男の子の肩がびくっと跳ねた。

 バッと此方を見て口を開く。

 しかし、そこから声が出ることはなかった。


 ……もしかして、喋れないのかな?

 悔しそうに口を閉じて、鋭い目付きで睨み付けてくる男の子。

 うーん、どうしようかな。

 どうにか意思の疎通ができないか、腕を組んで考える。


 ふと、小さく腹の虫が鳴る音が聞こえてきた。

 ん?とそちらを見ると、顔を赤く染めてムスッしている男の子の姿。

 どうやらお腹が空いているらしい。

 あ、そうだ。



「きみ、果物は好き?」



 キッチンからリンゴを持ってきて、男の子にそう声を掛ける。

 彼の背中が、ピクリ、と反応した。



「ふふ。切ってあげるから、待っててね」



 一緒に持ってきていた果物ナイフで、サク、サクとリンゴを切り分けていく。

 リンゴの皮でウサギの形を作っていく。


 ふと、視線を感じて、そちらを見ると、獣人の男の子が興味津々、といった様子で私の手元を見ていた。

 ウサギの形が気になるのかもしれない。

 なんだか可愛くて、ふふ、と笑みを零す。

 ぱち、と男の子と目があって、勢いよく逸らされてしまった。


 うーん、やっぱり人が怖いのかもしれないな。

 元の世界で何かあったのかも。男の子の身体は全身ボロボロだった。

 後でお風呂に入れてあげようかな。

 なんて考えている間に、リンゴを切り終わる。


 お皿に盛り付けて、刺激しないようゆっくりと男の子に近づいた。

 近付いてきた此方を警戒するように、男の子は歯を剥き出してフーッと威嚇してくる。



「大丈夫、なにもしないよ」



 それに対して敵意が無いことを示すために、私はお皿をそっと床に置いて、すっと一歩下がった。



「これ、リンゴっていう果物なんだ。甘くて美味しいよ。良かったら食べてね」



 優しく微笑んで、ゆっくりと立ち上がり、部屋から出ていく。

 食べてくれるといいな。


 キッチンでベタついた手を洗いながら、男の子のボロボロだった姿を思い出す。

 そうだ、怪我もしてたし、手当てもしてあげたいな。

 そう思って、救急箱を取った。


 少し時間が経った頃。

 そっと彼のいる部屋に入る。


 しかし、そこに男の子の姿は無かった。



「あれ、いない……」



 不可思議な光のゲートも、一緒に消えて無くなっている。

 まさか、もう元の世界へ帰ってしまったのかな。

 随分早く帰っちゃったなぁ、と、使う必要のなくなった救急箱を見つめる。


 あ、そうだ。

 リンゴ、食べてくれたかな。

 気になって皿を見ると、リンゴはすっかり綺麗になくなっていた。


 ああ、食べてくれたんだな、とほっとする。

 彼の細い身体を心配していたから。

 ちゃんと自分の家に帰れたかな。

 そう考えながら、空っぽになった皿を拾い上げる。



 その瞬間、ぐるり、と視界が暗転した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。