鮫族の昔話 弐
新しく辿り着いた土地を鮫尾平野と名付けた数千人の鮫族たちは、オマ、カツカン、カツァ、マツミ、アトゥ、カンガム、ヤンゴ、ヴァツァケの8集落を中心に居住を始めました。
この頃には故地を離れてからおおよそ30年が経っており、移住第二世代が増えてきていました。そのため、港と鮫神のための入り江を残しつつも干拓を行い、住める場所を増やし始めたのです。
また、この時代からは周辺の他の民族との交流も行い、北の高山地帯に住む山岳民族の渡来系狐族、東の平原地帯に住む農耕民族の土着系蛙族や狩猟民族の土着系蛇族とは交易とともに通婚も始まっていました。
一方、他所から来た鮫族を快く思わない民族もいました。特に西の山岳に本拠地を構える渡来系鷹族、蛙族の平原から山一つ越えたところに住む土着系蛾族とはすれ違うだけで口論が起きるほどの対立がありました。
武器を好まなかった鮫族は、なるべく争いを避けていましたが、それでも口論しなければならなかったとは、余程怒り狂っていたのでしょうね。
そんな中、伝令鮫から思いもよらぬ知らせが舞い込みました。
遠方の鮫族の村、ツァイコ・ンラが何者かによって滅亡させられたのです。
鮫族は各村の衛兵から選抜された遠征軍を派遣しましたが、全く原因がわからないといいます。その知らせに移住当時を知る長老たちは大きな衝撃を受け、将来を悲観する者が多数現れました。しかし、当時の人たちは知らなかったのです。これが、日本列島ほぼ全体を巻き込む戦乱の世の始まりだということを。




