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小鳥

「クラウス様?」


 ユイは散歩をしていた魔導師の姿を見つけて、うれしくなって声をかけた。声をかけると、淡い金色の髪の魔導師は、我に返ったかのように動くとユイを肩越しに振り返る。


「何を見てるの?」


 淡い春の訪れでも見つけたのかと、雪の根深く残る木々を見渡してみるが、なにも見つからなかった。


 黙っている長身の魔導師は、目線だけでユイに見ていたものを示した。

「あ……」

 雪の中に小鳥がいた。まだ雛で、目も開いていない。巣から落ちたのだろうか?


「死んじゃったの?」


 ユイが訊ねると、魔導師はとても珍しいことに考え込んでから、息をついた。


「時間の問題だろう」


 低い声にまざる不思議な響きは、悲しみにも慈しみにも似た声音だった。

「ユイが小鳥さん助けてもダメかなぁ?」


 雪の中からすくい上げた雛は、とても冷たくて生きているようには思えなかったが、ユイはなんとかして生きてもらおうとそっと息をあてて温めた。


 魔導師はそんなユイを見てはいたが、手助けはしてくれなかった。きっと、もっと違う何かを見ているんだ。


「魔導師様、小鳥さん空飛びたいよね?」


 黙っている魔導師は、いくぶん驚いたかのように眉を上げるとふいに優しい目を向けてくれた。ユイの手のひらにいる雛を自分の手に移すと、そっと持ち上げる。何か雛に向けて言うと、魔導師様の頭の上にある巣へと帰してやった。


「大丈夫かな?」


 ユイは心配になって聞くけれど、魔導師様はちっとも応えてくれなかった。

 またゆっくりと雪の残る庭を歩きだす。


「魔導師様、ユイ心配かも」


 魔導師の長衣に手をかけて、ユイは泣き出しそうになるのをこらえた。


「春を楽しみにしたらいい」


 魔導師様は、低く優しい声で言ってくれた。



 春になって庭が緑にあふれると、小鳥たちは木々を渡り、さえずりながら楽しげに生を謳歌する。


 ユイは湧き水で洗濯をしながら、ときどき思い出す。

「あの小鳥さんも元気かな」


 思いつけば巣の近くに行くが、どの小鳥なのかはまるでわからない。


 ただ魔導師様の表情は、小鳥たちを見ると優しくなっている。きっとあの小鳥を見つけて、無事を喜んでいるんだろうなと思う。


「がんばったんだね」

 ユイは小鳥さんが一生懸命に生きているんだと思うと、負けないようにがんばろうと思うのだった。


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