日陰の妖精 第4話
あたいは見つけたカードを持ってお嬢様の元へ行こうとした。お嬢様の前であたいが見つけたといえばお嬢様はあたいを妹にしてくれる。しかしその時
「お里!!どこにいるんだい?!」
先輩があたいを呼ぶ声がした。あたいは急いで振り袖を脱いで髪を普段の三つ編みに戻す。カードはメイド服のエプロンにしまう。温室の裏口から出ると先輩と鉢合わせになった。
「お里、こんなところで何やってるんだい?」
「お嬢様の振り袖を洗濯しようと。」
「そんなの後でいいから台所行っておくれ。お嬢様とお客様全員にお茶をお出しするんだよ。」
あたいは一礼して台所に向かう。
あたいがお茶を出しに広間に向かった頃にはカードを答え合わせが始まっていた。カードを手にした少女が挙手をする。
「では開いて下さい。」
お嬢様の指示で少女の1人が白い封筒を開ける。中から出てきたのはすみれの花のカードだ。中を開くが何も書かれていない。
「残念だわ。」
彼女は外れを引いた。お嬢様は言っていた。当たりのカードは1枚だけでメッセージが書かれていると。
「他にカードを見つけた方いますか?」
お嬢様の問いかけに別の少女が挙手をする。
彼女が封筒の中から取り出したのは桜のカードだ。こちらも中は白紙である。
あたいのカードが当たりだ!!あたいはお嬢様の妹になるのだ。
「では最後のカードを見つけた方はいますか?」
案の定誰も手を挙げない。当然だ。最後のカードはあたいが持ってるのだから。
最後のカードは見つからず誕生日会はお開きになった。
「あの」
帰り際にお嬢様に声をかける娘がいた。お嬢様の話に出てくる紫乃とかいう娘だ。
「春江様、最後の薔薇のカードはどちらに隠されましたか?」
「温室の薔薇の花の茎の間よ。」
先ほどあたいが見つけた場所だ。二人は再び温室に向かったが当然カードは見つからない。あたいは帰っていく紫乃さんをお嬢様と一緒に見送った。髪型と服を変えたあたいに紫乃さんは気付いてない。
「お里。」
お屋敷に入る前にお嬢様があたいに赤いリボンを渡す。さっき落としたのだった。
「また妖精さんに返しておいてね。」
打ち明けるなら今だ!!
「あの、その事ですが。」
あたいはメイド服のエプロンのポケットから白い封筒を出す。
「このカード」
あたいは封筒の中から薔薇のカードを取り出す。
「お里が見つけてくれたのね。ありがとう。だけどもう必要ないから捨てていいわ。」
「お嬢様!!メッセージが書かれていたら妹にしてくれるんですよね?」
あたいは薔薇のカードを開く。しかし
「どうして?」
これも白紙だ。
「お嬢様?!」
あたいはお嬢様にカードを見せる。
「メッセージ書き忘れてますよ。」
「書き忘れてなんかないわ。」
お嬢様から返ってきたのは意外な言葉だった。
「だって今日来てた娘達誰も妹にする気なかったもの。勿論貴女の事もね。」
お嬢様は屋敷へと入っていく。あたいはずっと日陰の存在なのだった。
次回から春江お嬢様主役回始まります。