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日陰の妖精  第2話

 あたいが屋敷に奉公に来てから4年が経った。ピアノを教わった日あの後あたいは先輩からこっぴどく叱られた。だけどお嬢様は庇ってくれた。

「お里はわたくしの一番のお友達。だから意地悪はしないでね。」と。

 お嬢様は小学校の頃は引っ込み思案でお友達がいなかった。兄妹もおらず周りは大人ばかりのお嬢様にとって1つ年下のあたいは心を許せる存在だったんだろう。

 それからもお嬢様はあたいにピアノを教えてくれた。あたいの隣にいるお嬢様は嬉しそうだった。勿論あたいも。あたいはずっとお嬢様といれれば良かった。

 だけどお嬢様が女学校の2年生になった時事態は一変した。







「お里、今度わたくしの誕生日会を開くのよ。それでね、女学校の1つ年下の娘達を招待するの。」

 ある日お嬢様はあたいを部屋に呼びそう話した。お嬢様の1つ年下はあたいと同い年。だけどうして同級生ではないなのだろうか?

「わたくし今度の誕生日会で妹を探そうと思っているの?」

「妹?お嬢様は1人っこではありませんか?」

「うふふ。エスよエス。」

「エス?」

お嬢様は便箋を取り出すと見たこともない字を書き出す。「Sister」と。

「これはシスターって読むのよ。英語で姉妹って言う意味なの。女学校では上級生と下級生が特別親しくなる事をシスターの頭文字を取ってエスって言うのよ。下級生は上級生をお姉様って呼ぶの。」

特別親しくなる。その言葉を聞いてあたいはお嬢様の腕を掴む。

「どうなさったの?今日のお里は少し変よ。」

「あの、私じゃ駄目ですか?!お姉様。」

あたいはお嬢様に懇願する。

「何言ってるの?エスは同じ女学校の人同士でなるものよ。お里は違うでしょ。」 

お嬢様にとってあたいは一番じゃないのか。

「妹を決めるのは宝探しで決めようと思っているの。」

お嬢様は自話を続ける。宝探しでは白い封筒に入ったカードを隠す。カードには1枚だけめっせーじが書いてある。そのめっせーじが書かれたカードを見つけた人がお嬢様の妹になれるのだ。

「そうだわ、お里。わたくし今日女学校から帰ってきたら薔薇の花が飾られていたの。」

 お嬢様はテーブルに飾られた赤い花に目をやる。

「一体誰かしら?薔薇の妖精からの贈り物かしら?」

 お嬢様の部屋に薔薇の花を飾ってるのはあたいだ。だけど気付いてももらえない。あたいは日陰の存在なんだ。

「これ温室に落ちていたのよ。」

お嬢様が出したのは赤いリボンだ。

「きっと妖精さんが落としていったのね。もし会ったら返しといてね。」

 お嬢様は赤いリボンをあたいに渡す。

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