第二部 11
楽しんで頂けると嬉しいです。
私の記憶が戻り2日が経ちノアと一緒に街までやってきた。活気のある露店街を歩く。
そして、隣にはルード様とリリアの姿もある。
ルード様とリリアには記憶を取り戻してから改めて会いに行った。普通なら3日かかる険しい山の道のりを2日で来たのだ。どんなに大変だったか想像もつかない。感謝を込めて話した。
「ノアから聞いたわ。あまり寝ずに私の記憶を取り戻そうとしてくれたなんて。どんなにお礼を言ったら良いか。リリアありがとう」
「お礼なんかいらないわ。私は貴女に恩義なんか感じてない。でも、仕方ないから助けてあげたの。……貴女の大切な人を危険な目に遭わせてごめんなさい」
謝ったかと思えば、リリアはニヤリと笑いながら
「私は貴女の事嫌いだったわ。努力しなくてもなんでも手に入るんだもの。私は許せなかった。でも、今はそこまで嫌いじゃないの。誰にでも悩みがあるのよね。私自分の事しか考えて来なかったからごめんなさい」
確かに私は努力なんかしなかった。お父様に頼めばなんでも出来ると思っていたのかもしれない。
リリアは今度は、子供っぽい無邪気な笑顔になる。
「まぁ、私は貴女にどう思われていても良いんだけど」
リリアが手を出す。リリアは私をじっと見ている。私は恐る恐るその手に自分の手を重ねる。
出した手を跳ね除けた方が良いのか考えたが私には出来なかった。リリアはなんか不思議な人だった。
(憎めないんだけど)
「これから宜しくナディア」
「うん。よろしくリリア」
これからどうなるか分からないけど、初めて女の人と仲良くなった。少し、少しだけ嬉しかった。
「ルード様もありがとうございました」
「名前呼べるのか」
まだ急に触れられるのは怖いが記憶のなかった私に優しく接して下さって恐怖の感覚が少し薄くなったよう気がする。
「記憶のない私に優しくして下さってありがとうございます。呼べるようになりました」
ルード様は顎に手を当て考えている。困った表情をして思い切って口を開いた。
「なぜ、私が怖いのか話してはくれないか」
そう疑問が出るであろうと、ルード様に会う前にノアと話したのだ。2人に私が人生を繰り返している事を言うかどうか。ノアが私の手を握り話し出す。
「2人にナディアについて知ってもらいたい事がある」
2人は不思議そうに私たちを見る。そんな大事な話なのかと佇まいを直している。
「……ナディアは4度目なんだ」
ノアは私の代わりに全てを話してくれた。
私は3回ルード様の手で死に、隣には必ずリリアがいる。
「そんな事が現実に起きるのか」
「……そう言う話は遠い場所で起こった事があると昔聞いた事があるわ。噂だから作り話としか気にも留めなかったんだけど……。貴女、お人好しなのね」
リリアが私の側に来た。
「私が怖くないの?」
「リリアだから大丈夫。雰囲気が違うから」
リリアに抱きしめられてた。
「本当お人好し。怖かったでしょ。辛かったでしょ。私がした事なのよ。怒りなさいよ」
「私だって申し訳なかった。ゆっくりでいいから怖がらないでくれ」
確かに怖かったし辛かったし痛かった。でも、今のリリアがした事じゃない。ルード様がした事じゃない。あの時の目は怖かったけど今は平気。
「それに、ノアに逢えたから私感謝してるの」
ノアを好きになってよかった。ルード様には悪いけど今が幸せだから。笑顔でそう言った。
「ナディアにはノア様が似合っているわ」
リリアは私とノアを交互に見て優しく笑っている。ルード様も悲しそうに微笑んでいた。私はルード様とリリアと親しくなり嬉しかった。
そして、ノアの力になる為に私たちは街へと来ているのだ。もし、誰かに見つかったとしても私たちは来賓の立場で捕まったりしない。その立場を利用してある人を探している。
街の奥へと入っていくと不気味な教会のような建物があった。
「嫌な感じがするわ。ナディアこれ付けて」
リリアからブレスレットを手首に付けてくれる。
魔除のブレスレットらしく私を守ってくれるらしい。
「表はこんな賑やかなのにここは見るにも耐えないな」
建物の中には病気に罹った人が大勢いる。胸が苦しくなる。この国はこんな部分が無いと思っていたのに。病院では治らない人をここの教会が受け入れているのだ。表には見せないように奥に隠している。
『賢明なお父様ですね』
マザラさんの言葉を思い出す。トーマ殿下もマザラさんも変えたいのに変えられないのかもしれない。
「こんなところに居るのか?」
「あぁ、僕たちも最近見つけたから。本人は気付いてないけどね」
人々は動かずただの布を敷いただけの床に寝ている。私たちの顔をマジマジと見ている。小さな子もいてじっとして動かない。小さな女の子もじっと私たちの顔を見ている。怖がらせないように笑顔を見せる。ここの人たちは悪く無いのに。
建物の奥へと入って行く。1人で他の人を看病している人がいる。その容姿は、金色の髪に赤い瞳。ノアが近づいていく。
「ランベルト様ですか」
「はい。そうですが君たちは?」
邪険な瞳で私たちを見る。綺麗な服に身を包んだ私たちはこの場所に不釣り合いだ。
ノアは爽やかな笑顔で話し出す。
「僕は隣国クランラベータ帝国第三皇子ノアと申します。ランベルト様の赤い瞳、胸のペンダントから、存在を消されたウォール国第一王子ダディム殿下でおられます」
ランベルト様の顔が目を丸くして驚きを隠せない表情になる。
「な、何を言っているんだ。私は」
「ルベス牧師様に拾われたと言うのですね」
ノアは1枚の古い手紙を出し、ランベルト様に渡す。読み進めていくうちにランベルト様の顔色が悪くなる。おもむろにペンダントを首から外し、ステンドグラスから入る日の光にペンダントをかざす。
「そ、そんな。私が」
「私はウォール国の現第二王子トーマ様に言われ来ました」
もう1枚の手紙を出しランベルト様に渡す。
読み進め、顔を上げこの教会に集まる人々を見る。
「わかりました。今すぐにとはいきません。検討しますと伝えて頂けますか」
「はい。わかりました。この国を変えたいと思う気持ちはトーマ殿下もあります。良い返事を期待しております」
ノアが頭を下げてるのを真似して私も下げる。
帰ろうと扉に向かう。
扉の横に赤い花を持った女の子が私に近づく。
「きれい。あげる」
私は女の子に近づく。リリアが止めようとするが私は女の子から花を受け取った。
「とても、綺麗なお花ね。ありがとう」
無表情だった顔が少し笑った気がする。
「少し時間とっても良い?」
「構わないよ。ナディアの好きなようにして。僕はランベルト様に話してくる」
私は女の子の手を取り教会の外に出て花が咲いてる小さな庭に行く。1本の花を摘み輪っかにして女の子の腕につける。リリアもルード様も暖かく見守ってくれる。
「お花のお礼」
女の子は手首の花をいろんな角度から見てニコニコと笑う。他の小さな子も来てみんなにお花のブレスレットを作る。その様子を見ていたのかランベルト様がノアに話しかけてから私の近くに来た。
「ナディアさん。子供たちにありがとうございます。あんな嬉しい顔を見たのは初めてです」
「喜んでいただけて嬉しいです」
「また会いに来て頂けますか?」
「もちろんです」
「……貴女は本当に優しい人です」
どことなくトーマ殿下に似た顔で優しく笑っていた。
教会を後にし、露店街を歩く。
「さっきの光景が嘘みたいだな」
「あれも現実。……昔を思い出すわ」
ルード様とリリア様がそう呟きノアは苦しそうにそびえ立つ城を睨んでいた。
どうか、手を伸ばさなければいけない人たちが笑い合える日が来ます様にと祈る事しか私には出来なかった。
読んで頂きありがとうございました!




