第二部 1
楽しで頂けたら嬉しいです。
二部を始めました。
よろしくお願いします。
フィリアが処刑され、リリアという娘が騎士団の
世話役に入ったという事をノアから聞いた。
リリアに対して一言伝えてもらった。
『私はあなたを許さない』
彼女がどう捉えるかわからないけど、私は少し気が晴れた様な感じがした。
あれから一ヶ月、いつものようにノアの宮殿にロージーと一緒に行くとノアが嬉しそうに笑ってる。
「皇帝陛下との約束を果たす時が来たよ」
皇帝陛下を説得する時に交わした約束で、ある国に赴く事になった。
隣国『ウォール国』、山に囲まれ独自に戦闘を発展させ自国を守っている軍事国家。この国と条約を結び貿易も盛んである。
私の視界は蒼い景色を映している。
「ノア!見て、海よ。……綺麗だわ」
私の目の前には初めて見る一面の海が広がっている。爽やかな風の香りとどこまでも続くキラキラと太陽の光を浴びた海が綺麗で眩しかった。
隣にいるノアも銀の髪がキラキラ光って神々しいなんて思ってしまうのは私が少し浮かれているかもしれない。
「ナディアが喜んでくれて嬉しい」
「ノアの隣ならどんな所でも嬉しいのよ」
ノアのおかげで暗くなっていた気持ちに光が差し笑顔でいられる。
ウォール国に行くには山を越えるより海を渡るのが早いので港町に来ている。明日は船に乗りウォール国に入る。
私たちはウォール国の王様に招待され訪れる事になった。表向きはそうなっている。
本当は戦争を企てた貴族を一網打尽にする為に協力をお願いされた。
ノアが留学していたのがウォール国で、ノアと婚約者の私が疑われずに入国出来るらしく皇帝陛下からの等価交換という形で赴く事になった。
『ウォール国』なんて、正直本当は行きたくなかった。
過去には囚われたくはないけど、二度目に殺された時はウォール国の間者に疑われて処罰されたのだ。あの時、同じ時に囚われた人はまだ『ウォール国』にいるのだろうか。
『いつか報われる日が来る。今は我慢の時なんだ』
絶望に感情を支配されずに、希望という強い赤い瞳を持った彼は今何をしているのだろうか。
あの時の私は彼の後日を知ることは叶わなかった。
「ナディア、海の近くまで行ってみよう。……どうしたの?」
「ううん。何でもないの。海が綺麗だから見惚れてたの」
大丈夫って言ったのに心配したノアは優しく手を引いてゆっくり海辺と進んでいく。足を取られる砂は歩きづらかった。
寄せて返す海の波が不思議で仕方なかった。
「冷たくて気持ちいい」
「うん。ナディア」
私はスカートをたくし上げ、ノアはズボンをめくり一緒に海の中に足を入れる。笑い合いながら浅い海の中を歩く。
私たちに同行している騎士団の方々と私の侍女のエマも海を見てそれぞれ楽しんでいるみたいだった。
あっという間に夕方になり、オレンジ色の空にある夕陽が海に飲み込まれていく。海に夕陽が反射して海が黄金になる。
浜辺に座り夕陽を見ている。
「この景色を大切な人と一緒に見たいと思ってたんだ。今、ナディアが隣で一緒に見られて本当に嬉しい」
「私も一緒に、ノアと一緒に綺麗な海を見られて嬉しい」
ノアに抱きつきたい衝動に駆られたが周りにいる人の目を気にして我慢する。ノアと目線が合い、お互いに赤くなる。
(ノアも同じこと思ってくれているといいな)
そう考えて夕陽よりも私は赤くなる。そっとノアの手が私の手を掴んで顔を見合わせた。ノアは声を出さず口が動く。
『好きだよ』
(……それはズルイ)
嬉しそうな笑顔はノアは私をからかっているんじゃないかと思う。私はドキドキしながら時が過ぎるのを待つ。
暗くなり月の光が辺りを照らす。これ以上は身体が冷えるからと、足早に宿に戻る事になった。
夢を見る。
「助けてくれてありがとう」
黒髪に力強い赤い瞳を持つ彼。
街で血だらけで倒れていたのを介抱したんだった。病院には行きたくないと言った彼の昔話を聞いて共感して泣いてたっけ。
彼の話が本当ならばウォール国のエルムと名乗っていた。エルムが動けて姿を消すまで廃家に通っていた。
あの時の私は誰にでも優しくしていい子を演じていたんだ。誰にでも手を差し伸べていた。それが隣国の間者じゃないのか疑われた原因なんだけど。ただ、私は貴方に振り向いて欲しかった。
疑われた私は地下牢に入れられていた。
いつの間にか彼は地下牢に居た。
「君は理不尽だと思わないのか」
(そうね。思うわ)
私は力なく頷く。心の声は口には出せない。
「君はウォール国の間者なんかじゃない」
(私は何もしてない)
私は力なく頷くだけ。
そうか、彼は囚われていなかった。私を心配して助け出そうとしてくれていたんだ。だけど私は動かなかった。
「ここから逃げるんだ」
でも私は諦めたのだ。貴方に今回も信じてもらえなかった私は悲観した。お前が正直に罪を負えばクラーク家は罪には問わないと言われた。
「いつか報われる日が来る。今は我慢の時なんだ」
だから……。続く言葉は聞こえなかった。
足音が聞こえたから。
「ありがとう」
彼に向けた最後の言葉は声になっていただろうか。
苛立つ彼の気配は消え、数人の足音は私の牢の前で止まった。
そして、私は処刑されるのだ。
「……」
目が覚める。まだ、外はまだ朝日が生まれたばかりだ。
あそこまでで良かった。あのまま夢の続きを見ると私は泣き叫んでいただろう。彼以外は思い出したくない。
「エルム……か」
もし、彼に会う事があれば一言気を付けてと言わないと。今の私は彼を助けられないのだから。
「段差に気を付けて」
「ありがとう。ノア」
ウォール国へ向けてノアに連れられ船に乗り込む。天候は晴れで何もなければ2日で着くと言っていた。想像よりも大きい船でこれなら少しの嵐なら大丈夫だと思う。
あれから何事もなく快適な船旅だった。船酔いした騎士の方もいたが、私は大丈夫だった。
ノアとは夜に星を見ながら過ごしたりした。
一日中ノアと一緒に過ごせる事が凄く幸せだと思った。
ウォール国に無事に入国し、私はその街並みに圧倒された。
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