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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第3話「正義のみかた」
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昔話・『アンバーコート』

 この世は、世界線を物語として保存し、『語り手』により結末を決定させることで安定させるシステムが運用されている。

 語られない世界線は、いくつもの平行分岐を生み出し、やがて膨大なifルートによって圧迫され、最終的に世界を維持できなくなり崩壊することが確認されている。


 これは、物語として保存する必要はなかった時代の昔話。


 その頃、世界線を構築するのは一部の能力を持った者共で、現在のように大勢が誰でも簡単に構築できるシステムがまだなかった。


 ある時、多くの世界線を跨いでいきなり現れた存在があった。

 爬虫類のような鱗をもち、三対の翼があり、巨大な体であらゆるものを押し潰し、炎や氷、高エネルギーの破壊力の塊などを口から放出し攻撃する、手のつけられないものとして恐れられたドラゴン属だった。

 ドラゴンは総じて世界線を跨いで行動できる能力があった。

 勿論それを見過ごせる筈もなく、やがて各世界線からドラゴンを打ち倒すべく強い能力を持った戦士が作られ、派遣された。

 勇者と呼ばれた彼らは、長い年月を経て、多大な犠牲を払いながらもドラゴンを倒した。


 残されたドラゴンの死体に、創作者たちは手を加えた。

 しかしそれは全てではなく、それでも残された部分には蛆や鳥、腐肉を食べる動物たちがわいた。

 死体とはいえ世界線を越える力を持つドラゴン。それを餌に育った蛆や動物。気付いた時には遅かった。

 結果、その死体を餌にした大量の蛆や動物にも世界線を越える力を与えることになってしまった。やがて蛆が蝿に成長する頃、それぞれが世界線を移動した。


 その存在が与えた影響、それは増えることと運ぶこと、そして補食されることだった。

 瞬く間にドラゴン以上に数を増やした蝿は、あらゆる世界線を渡り、その場所に棲息する病原菌を別の世界線を越して仲介した。

 また、その蝿を食べた別の生き物も能力を得てしまうこともあり、被害は拡大の一途を辿る。

 蝿からそれを食べる虫、虫を食べる鳥、鳥を食べる獣、やがて獣を食べる人がそれぞれ能力を手に入れた。


 創作者たちはこの現状に手を焼いた。ドラゴンよりも厄介な現状に、頭を抱えた彼らは、ひとつの結論に達した。


「世界線を放棄する」


 ドラゴンの力を持つ勢力に汚染されたとされる世界線を一纏めにし、一網打尽にする計画。

 それは世界線をすべて水に沈めることだった。

 洪水にあった世界線は、凍らされることにより無関係のものも含めて緩やかに、全て死滅した。

 次に行われた対策として、世界線を物語として保存することで簡単に世界線を移動させないようにした。


 そうして、ドラゴンから発生した災害は絶滅したかのように思えていた。


 新しく作られた世界線の中に、一定数その人間はいた。共通してドラゴンの核、心臓に近い働きを持つ器官を持っていた。世界線を越える力を持つドラゴンの核を持った新人類。『琥珀状の物に包まれた(アンバーコート)』と名付けられた。


 アンバーコートは生き残っていた。それをまた見過ごせる筈もなく、今度は死体も残さず回収された。

 そうして、アンバーコートは見つけ次第回収処分にされるように制度は整った。

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