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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第3話「正義のみかた」
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「破邪の太刀」幽霊の噂

また京極視点です。

 あのあとは、何にも出くわすことはなかった。

 小さなものも、力ない儚いものも、一切居なくなっていた。

 どうやらこの辺りも連珠は手当たり次第に怪異を祓っているらしい。彼等の歩いたあとには人間以外の生き物は何一つ残らない。

 依頼人から話を聞いたあとの事、銀と人気も妖魔の気配も感じない道を話通りに歩いて検証していた。


「今回は幽霊の祟りとはちょっと違うのではないのでしょうか。どちらかというと呪い、精神汚染が近いですね。」

「呪いと祟りは違うのか?」

「効果は殆ど同じですが、人の手が介在した不幸は呪い、神や妖魔、その他超自然的な不幸は祟り、という認識ですね。でも、現場を見てみないことにははっきりとわかりません。」


 一昨日の夜、依頼人……(いずみ)さんはくだんの廃線路の側を通っていた。踏切の近くには苔むした岩で作られた小さな祠と地蔵があった。周囲に灯りはなく、ぼんやりと祠の中の地蔵と目があって、彼はなんとなく気味の悪さを感じ取った。


 その前を通りすぎるべく足早に立ち去ろうとしたとき、足に何か引っかけて転んだ。起き上がろうとして、顔をあげたときに髪の長い女が線路内に立っていたという。当然目の前にあるのは廃線路と道路のみで、身を隠せるような死角もなければ近寄る足音もなく、得体の知れない危険を感じた。


 体を起こすと、動くはずのない踏切の遮断機が降りて、通ることのない機関車が猛スピードで走り抜けていった。髪の長い女は消えていた。気味の悪い線路内を横断するなんて死んでも御免だったから迂回して回ろうとすると、先ほどの女が視界の端に立っていた。ここから先は無我夢中で線路から離れたので何があったかは覚えていない。ただ、血塗れの女がずっと視界の端に立っていた事は確かだった。


「幽霊の祟り」の話題を聞いたのはその次の日だ。

『廃線路に出る女を見ると発狂して溺死する。』昔、この廃線路の真上には池があった。池には神が住んでいて、この辺り一体の村の守り神でもあった。

 ある時飢饉が起こり、池に子供を生贄として差し出すようになった時期がある。その結果神は変質し、祟り神となる。

 神を鎮めるため祠が作られ、神が二度と目覚めぬよう封印されることになる。封印をより強固な物とするため、その封印を施した巫女は自らを封印として池に沈んだ。

 やがて時は流れ、誰もその封印の重大さを知るものが居なくなったとき、線路工事として池は埋め立てられ、祠は移動された。

 移動したときに封印が解けかけ、今でもその巫女が封印としてその場に留まっているために、封印を守るための生贄を欲しているために祟りとして線路内に入ったものを溺死させようとしている。巫女が見えたのは巫女に封印として選ばれたから。


 更にそれを泉さんに教えた人は、対策として探偵社の連絡先を教えたらしい。


 教えた人、というものも素性ははっきりわからない。知り合いですらないというのも不思議な話だ。出会い頭に引き留められ、そして話すだけ話していってしまったというのだから、奇妙なものだ。ただ最初の方で「繧、繝ェ繝、(閲覧不可)」と名乗っていたことぐらいしか全くわからない。


 道なりに歩いていると、目の前に廃線路の踏切と、小さな祠が見えた。まだ日が出ているからかそこまで不気味さはない。

 銀はじっと祠を見て、そのままゆっくりと踏切の方を見た。


「何もいませんね。文字通り、なんの気配もないです。神も、幽霊も。」

一部の表記は仕様です。


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別のシリーズですが短編で廃病院に凸する話もあります。

よろしければそちらも宜しくお願いします。


本編とはなんの関係もないですが2章13話の佐伯姉がちらっとでてきます。

https://ncode.syosetu.com/n5418fq/



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