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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第3話「正義のみかた」
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「破邪の太刀」狗は吼えず

お久しぶりです。

更新を暫くしてなかった2ヵ月の間に合計2000PV達成しました。

皆さんありがとうございます。

 好実は窓から飛び降りて太刀を回収するべく裏に回る。街路樹に引っかけて隠した太刀はまだ見つかってないことに安堵した。

 狗吼丸は破邪の太刀だ。迂闊に触れば妖魔祓いの太刀であるかぎり半妖魔の老人忍者も、勿論好実自身もその効果の範囲内だ。

 だからこそ好実はぎりぎりで投げ捨てることしかできなかった。だが相手もそれは同じ。あの場でどうやって手に入れるつもりだったのか。


「あのジジイ、一体何をしようとしている?まともに持つことすらできないのにこんな刀……」


 引っ掻けた太刀に手を伸ばしたとき、頭上からもう一本の腕が現れた。その腕はあっさりと太刀に触れ、そして掻っ攫っていった。


「在処を教えてくれてありがとう!私が貰っていくね!」


 好実よりも高い身長、高い声。そして柿色の忍び装束。

 くノ一が太刀を抱えてその場から逃げ出した。抱えている太刀には札が貼られている。おそらく自分達でも触れるようにするためのものだろう。


「あっ、返せ!皐月(さつき)!」

「だーめ、こっちも仕事だから。」


 好実も後を追いかける。手下の猫や鳩がくノ一の行く手を阻んでいたが、それも軽々と避けられる。


「避けるな!」

「いーやだ!」


 路地裏を潜り抜け、パイプや壁を蹴って縦横無尽に移動する。

 屋上に飛び、ビルの横壁を駆け、民家の屋根から屋根を走り抜けた。幾分か追いかけっこを続け、そして電信柱の上でくノ一は立ち止まった。好実はその下に追い付く。


「好実くん、昔のよしみで見逃してくれない?」

「嫌だね。それ、一応人のものなんで。」

「私もお仕事だからなぁ……好実くんが今回の額以上をくれたら返してあげるんだけど。」


 ぴょんと跳びはね、彼女は電信柱から降りる。

 好実の目の前に着地した彼女の雰囲気は、今までの軽い物とは違い重苦しい威圧感があった。

 かつて、好実は彼らと共に暮らしていたが、その時には見られなかったもの。

 好実の眼には、彼女がなんらかの決意を持って目の前に降りてきたように見えた。


「本当に諦めるつもりはない?」

「全く。知り合いとはいえ大事な商売道具をおいそれと渡すことはできませんから。」


 沈黙が僅かに流れる。彼女の片手には彼女が扱うには不相応な太刀が握られている。手を伸ばせば届く距離だ。


「返してもらいます。」

「……そう。じゃあ、少し試させてもらおうかな。」


 好実が手を伸ばした矢先。太刀は引き抜かれた。

 腰から肩にかけて斜めに一閃。浅い攻撃ではあったが確かに好実を切り裂いた。お互い半分は妖魔になっているために使われた『触るための術』が効いているのが幸いしたのか、出血はそこまで酷くはない。血はすぐに止まり、その自身に流れる悪魔の能力により傷そのものは元から無かったように塞がって消えた。

 続いて第二波。首を狙って横に一閃。先程の袈裟斬りと違い好実も回避行動が取れた。

 第三波。今度は突きの構え。当然好実も避ける。


「なあ、人間にとって一番警戒が薄いのはどこか知っとるか。」


 好実が上を見上げたときにはすでに遅く、電信柱の上に立っていた老忍者の手裏剣が好実に突き刺さる。腹に刺さった手裏剣を引っこ抜こうとして、好実はその場に崩れ落ちた。

 足に力が入らない。ようやく引き抜いた手裏剣には自分の血の他に何か汁が塗られていた。

 その事に気付いた時には指先が震え、呼吸が浅くなる。

 静かに刀が納刀された。


「簡単な神経麻痺じゃ。ちと苦しいが死にゃあせん(死にはしない)。なあに、一晩もすれば毒は抜ける。」

「恨まないでね、好実くん。敵対したのが運の尽きだったのよ。」


 好実は徐々に薄れ行く意識の中、口を動かせないながら心のなかで反論した。


「畜生が、この恨みは絶対に忘れないからな」

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