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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第2話「探偵社式悪魔祓い」
37/62

幕間 物語警察署にて

次回への布石になるはず

__その本がある劇場から運ばれてきたのはある意味必然だったのだろうか?



その本は物語世界のなかでは危険度は高くない、むしろ不特定多数に読ませるべく選ばれた大多数のうちの一つの世界。急速な不安定状態に陥るなんてあってはならないことだった。

劇場から運ばれ、物語警察署の一室を使い厳重な監視下の元観測されることになったその本は、数名の監視官により常に監視される。語り手なく自ら語りだすその本の異常の原因を探るため、かつての語り手であった劇場主がその場に招かれた。


原因不明、事前症状もなく前例もないこの事件に急遽立ち上げられた捜査本部は署内の会議室の一つを改装して用意した即席の部屋だ。件の本を部屋の中央に設置した監視用の透明なケースに入れる。ケースには特殊な機材も入っており、遠隔操作であらゆる調査が同時に行われる。万が一の事があれば物語の永久封鎖処理も行える仕組みだ。それを囲むように長机とパイプ椅子が置かれ、調査員が手元の端末を見ながら忙しなく立ったり座ったり機材を触ったりしている。劇場主は空いている席に座りこの様子を眺めていた。

「おはようございます」

「おはようございます、警部補殿」

警部補は後から入室し、劇場主と向かい合う。手には書類が挟まれたクリップボードがあった。調査資料だろうとあたりをつける。

「この物語は今、二つの勢力に別れています。『与える悪魔』を名乗る超越者と、物語を終わらせない語り手。特に語り手はその世界の人間であることが判っているのですが、この物語にそんな語り手として力を持つ事が出来そうな人物はいるんですか?」

「ワタクシが見たなかでは心当たりはございません。主人公を除いてそのような特殊な存在に至れるとしたら、それはワタクシたちの様に一度は最後まで閲覧した、観測した人物に限ります。」

「これを先に閲覧した人は?」

「最近見つかった、出来たばかりの本ですからいないでしょう。」

会話が止まる。劇場主から見ても、元の話は神の視点に至れそうな人物というものが居ないわけではない。例えば本来の主人公……四宮トシのようなチート主人公。彼女なら生きてさえいれば彼女を中心に物語は進むのだから、当然すべての事件を知りその顛末やその先も知っているだろう。生きてさえいれば。

劇場主が語り手として語り始めた時点で、既に彼女は死んでいた。生まれる前に死んでいた主人公に主人公の価値はない。それどころかそこまで接点のない登場人物ネームドに勝手に主人公の座を明け渡されている始末。思い出しただけでも気が遠くなっていた。


「大丈夫ですか?」

「あっエエ、大丈夫です」

「そもそも改変箇所の多さ故にどこから同一化現象が起きて崩壊しているのかが分かりにくいんですが、もう一度語り手として物語を観測することってできたりしませんか?」

「語り手を降ろされ物語の改変が進んでいる以上、神の視点で、ということは出来ません。なのである程度物語に出てくるキャラクターにアプローチして貰いましょう。」

「具体的には?」

「例えばそうですね、現在よりあとの章で出てくる登場人物ネームドならば、こちらでコントロールしても超越者に気付かれにくいでしょう。その人物の視点を借りればある程度推測はつきます。」

「今の段階で生存している登場人物ネームド、さらにあまり重要性の低い人物。条件に当てはまるのはやはり《彼》でしょう。」

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