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初恋を拗らせた伯爵令嬢  作者: 六合呼
12/12

そして、初恋 ―エピローグ―

 芽吹いた新緑と同じ瞳を持つ娘が、両手に綺麗な深い緑色のレースリボンを、一番の宝物のように持って嬉しそうに笑っています。


「お母様! みて、この可愛いリボン! ティノ叔父様からもらったの!」


 7歳の娘は洗礼の時に与えられた銀の指輪以外、装身具などはありませんし与える必要もありません。大きくなれば、娘とその父親と同じ色のペリドッドの首飾りと鉄扇を譲るのも吝かではありませんが。

 今はおしゃれと言えば、せいぜい髪を結ぶリボンというところでしょう。


「まあ、あなたの蜂蜜色の髪によく似合うわ、フラヴィア。とても素敵。でもティノにはちゃんとお礼を言ったのね?」

「もちろんよ! だって私はティノ叔父様の奥さんになるんだもの! ちゃんとレディとしてふるまえるもん」


 今年七歳になる娘のフラヴィアは、わたし末弟でいまだに独身のティノにご執心です。初恋の相手が従弟でも幼馴染でもなく、年が離れた叔父だとは、なんだか血筋を感じてしまいますね。

 ちなみに従弟とは、あの事件がきっかけで知り合うようになったジュリオとフォビアナの息子であり、幼馴染の方はわたしの無二の親友・フランチェスカの息子です。


 そうです! フォビアナはわたし義妹いもうとになったのです!


 ジュリオ、やれば出来る子だったのねと快哉を叫ぶ私に、「……お前、本当に姉が大好きだったのだな。カリーナと同じ気が強いタイプじゃないか――まあ、カリーナはもう私の妻だけどね!」とドヤ顔するエディと私を、ジュリオが乾いた眼差しで見ていたのは目の錯覚でしょうか?

 そして恋多き女、フランチェスカが選んだ伴侶に社交界は度肝を抜かれました。どのような美男を選ぶかと思われていたフランチェスカが選んだ相手は小柄小太りな地味なお顔の紳士です。華やかではない外見でも、誠実な心根が素晴らしい包容力のあるお方でした。

 フランチェスカ、やりますね!


 それぞれ似た年頃の子供たちを授かり、わたしたちは、とても幸福に過ごしています。

 

 最近、初恋を宣言した娘に焦るエディ以外は、ですけれど――。

 

 娘の初恋からグレードアップした奥さん宣言に、横で紅茶を飲んでいたエディが激しく噎せています……まったく男親はだらしないですね。

 子供の戯言に一々本気になってどうしますか。フラヴィアの初恋は大人に対する憧れのようなもの。稚い純情を優しく見てあげればよいのです。


 もっともティノもティノだと呆れてしまいますが。いつまでも浮名を流していないで、早く身を固めてくれないと、娘に弱い夫のエディが暗黒面に堕ちてしまいそうで不安です。


「エディ。子供の初恋なんて可愛らしいものよ? 微笑ましいと見守るのが父親の務めではなくて?」


 私がそういえば、若草色の瞳に諦観と苦心を込めてエディが呟きました。


「ねえ、カリーナ? 君はそう気安くいうけれどね? 考えてごらん? 君の娘で私の愛娘だよ? ――絶対に初恋を拗らせるに決まっているじゃないか!」



 初恋とは、拗れるもの。

 それが我が家の家訓となりました。


あっさりさくさくのつもりが意外と時間がかかりましたが、これで完結です。

最後までお付き合いありがとうございました!


初恋拗れ系統の一族が生まれたような気もしますが……。

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