宇宙船の事故
今回の事故は、浮遊物との接触による船体破損ということらしい。
報告書によると、予定外の浮遊物が航路に存在し接触、右舷前方を破損。その影響により、50人分のコールドスリープ機器に故障が発生、かろうじて45人は覚醒し助かったものの残り5人はコールドスリープのまま死亡、当直の乗組員も一人死亡した、というのが概要だ。
「サブローも知っていると思うけど、現代の宇宙飛行は光並の速度で飛んでいるわよね。ほとんど真空に近い宇宙空間だから実現可能なんだけど、実際宇宙空間には小惑星とか宇宙のチリとか結構浮いているのね。でも高速で飛ぶ宇宙船にとって、そんなチリのような小さな物体でも、ぶつかればすごい衝撃を受け、大事故につながるわけ」
確か大学の基礎講座『人類が宇宙進出する上での問題点』とかいうお題目で習ったような気がする。
マリーは続けた。
「そこで、どうしたかというと、長年かけて「ガイア」までの宇宙空間を徹底的に調査し、チリのサイズまで障害物の位置を把握したの。そして国連にあるスーパーコンピュータにあらゆる物体の軌道を入力し、航路上の障害物を全て取り除いて、やっと今のような亜光速まで出せるようになったのよ。でも障害物を全て取り除いたつもりでも、こういう衝突事故は時々起きるのよね。なぜだか判る?」
「さあ、コンピューターへの入力漏れとか・・あ、わかった。他の船の落し物とかかな」
「そうね。そのケースも結構あるようなんだけど、今まで起きた事故を調査すると、本来そこにあるはずがない物体が軌道計算外の動きをして存在したり、はるかかなたの調査対象外区域から超高速で移動してきていたり不思議なことも多いのよ。つまり、宇宙は常に動いている。生きているのね。私の仕事は、その衝突物はいったい何でできていてどこから来たのかを調べ、同じようなケースが二度と起きないようにすることなのよ。」
なるほど、宇宙は生きているか・・僕達人間は、宇宙という大きな生物の中に存在する微生物のようなものかもしれないな・・と思いながら、ふたたび窓のほうに目をやった。
相変わらず青みを帯びた星々が大量に見えるが、先程よりもなにかしら生っぽい感じがした。




