僕の事情
亜光速で航行中の「マゼラン」は、今のところ快調に事故現場へ向かっている。
事故を起こした移民船は、大型船である上事故により船体に傷がついているためさほどスピードは出ないが、航行は可能なため「ガイア」に向かって飛行を続けているらしい。
計算上「マゼラン」が事故船にたどり着くのは約2年後のことだ。
今回の仕事を他の業者が嫌がった理由がこれである。
つまり、往復4年間、地球を離れこの狭い宇宙船の中で過ごさなくてはならないのだ。たしかに、それ相応の報酬はもらうことになっているが、よほどの理由がない限り、あまり受ける業者はいない。
依頼主にとって借金まみれのこの船のキャプテンは、格好の依頼先だった。
キャプテンも最初は二の足を踏んだらしいが、契約金額を聞いて速攻で引き受けた。この話はキャプテン本人からではなく副キャプテンのケンジから聞いた話だ。
ちなみに、この船のクルーはキャプテン以下7名の小世帯である。
キャプテンは元宇宙軍で軍艦のパイロットをしていたスミス
副キャプテンは前歴不明の片腕ケンジ
ナビゲータのベン、機関士のビル、ロック、パーサーのチャン、
で、一番下っ端で一番若い僕サブロー。
それに、今回は、宇宙船の事故ということで、連邦政府の事故調査委員会から一人と宇宙船製造メーカーから二人が乗客として乗っている。
つまり、クルー7人と乗客3人計10人とだけ2年間顔をつき合わせて過ごし、帰りはこの人数に50人を足して地球に戻るということになる。
実は、僕はアルバイトである。
僕の仕事は、帰りに増える50人の乗客の世話係、パーサーの助手ということで雇われた。
いつもは僕以外の6人で仕事をこなしていたそうだが、50人を2年間運ぶとなると人手が足りないらしい。
僕は、昨年かろうじて大学を卒業したが、昨今の不況のせいでなかなか希望の職業に就くことができないのを口実に、ふらふらフリーターを続けていた。
その頃、この仕事の話が舞い込んできた。先に声をかけられた友人達は相次いで断ったらしい。アルバイト期間4年(しかも途中解約できず)というのがネックだったそうだ。
確かに若い身空で4年間の空白を作るのもちょっと抵抗があったが、僕の場合は単純に報酬に惹かれてあっさり引き受けてしまった(これじゃキャプテンと同じだ)。
金額もなかなか良かったが、一番魅力的だったのは、この航海中に宇宙船操縦・船体管理のC級ライセンスと宇宙空間遊泳B級ライセンスが取得できるということだ。
僕の希望する職種は、宇宙とはあまり関係ない仕事だが、「ガイア」が見つかってから宇宙関係は花形の職種になっており、宇宙系の資格をとっておくことは就職の際とても有利になるはずだ。
資格取得の勉強は、主に往路に行われることになっている。復路は僕の本来の仕事であるパーサー助手をしなくてはいけないためなかなか時間が取れなくなるためだ。




