~第4幕~
力也は無我夢中で走った。あの現場からはそこまで離れてない路地裏に来た。翔との合流は思ったよりも早くできた。息をゼェゼェ切らして顔をあげると、もうそこに彼がいたのだ。
「速いな……!」
「俺からしたら、父さんが遅いぐらいだよ。すぐに追手がくるだろう。ここから一旦誰も見えないところへ行こう」
翔は近場にあったバイクのハンドルを手にとって、鍵をささずに光体が宿る力を以てしてバイクを起動させた。「さぁ、はやく乗って」とアイコンタクトをおくってきた翔に力也は苦笑いをしてみせた――
力也が逃げ込んだ路地裏へと2人の警官が力也を追ってきたが、その頃には彼の姿はなかった。
「柏木警部……代理、明神警部の姿はどこにもありません」
『そうか、見当たらないのか。車で逃走を図ったのかもしれないな。綾間刑事の一件で何かしら関与があるのは違いないと思うが、今は本営が離散しすぎないことが優先だ。現場に戻ってこい』
「はっ! かしこまりました」
『気をつけて戻ってこいよ!』
柏木は電話を切った。そして現場にいる警察官から速報を耳にした。
「そうか、無理もない。情報を各所から集めて統合しよう。これはもはやある種“テロとの闘い”だ。捜査チームの連携を急ぐ」
冷静に状況をみて動くしかない。しかし内心は落ち着いてなどいられない。
この翌朝、神奈川県横浜市は「緊急事態宣言」を発表することとなった。
翔の操縦するバイクはどこかへ向かっていた。どこに向かっているのか? 力也は気になっていたが、それよりも気になることを問いただした。
「おい、これ盗難じゃあないか……」
「もう俺は警察じゃないよ。死人さ」
「いや、そういう問題じゃあないぞ。少なくとも俺はまだ……」
「警官だと思っているのか? これほどの怪奇事件が多発して、両手指以上の数は人が変死している。そのうえ突然変異している隻腕の刑事、誰がほっとくと思う? 世間はこれをただ傍観したりしない。今は誰にも捕まらないことが大事だよ。作戦をたてなおそうよ、親子2人で。死神は残すとこ4体だからね」
「翔……!」
明神翔の瞳に迷いはなかった。そして力也と共にいるその体は本体とは言え、3分の2の明神翔だ。残す3分の1は戦いへ駆り立てていた。
いや……この場合は「交渉」といったほうが良いのか?
野神邸に姿を現した明神翔に修也も晶子もただ呆然とするしかなかった。
「さぁ、話をしようか。野神修也」
「明神翔……!」
野神邸に姿を現した彼は館の多くを壊して修也の元に辿りついた――
∀・)明神翔、動きます。次号!!




