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22 ダンジョン考察

 俺は〈ルーム〉から出て来るとリアとルナのいるテーブルへ向かう、その側にはいつの間にかラハさんも来ていた。


「こんにちはラハさん体さん」

「こんにちはゼン殿……なんで私と体の両方に挨拶するんですかねぇ? 私達は一心同体ですよ?」


 はは、ラハさんがジョークを言っておられる、ウケルー。

 とりあえずラハさんはスルーしてリアに語りかけ……椅子出して貰っていい?


 俺が椅子を要求するとラハさんは俺のスルーにグチグチと何かを言っていたが、体さんがスッっと椅子を出してくれた。

 ありがとう体さん、ついでにルナの分もお願い。


 自分の膝の上にクッキーを食べているルナを乗せていたリアだが、新たな椅子を出されてルナを留める理由がなくなると、頭の上のアホツル毛がシナシナになっていた。

 お前は足の早い野菜か何かか?


 ルナが新たな椅子に移ると、リアは気持を入れ替えたのか、だらしない表情をキリッっと変化させて。


「それでどうだったのゼン、予想通りだった? あルナちゃん私もクッキー食べたいなぁ」


 表情はキリッとしていたが隣の席に移ったルナにそんな事を頼んでいた。


 ルナに『リア姉様アーン』とクッキーを食べさせて貰っているリア、なにそれうらやましい! 俺と場所変わってくれよ。


「ああ、限定的な転移と同じ事が出来そうだ、だけどまぁ向こう側の扉を開けたのは一瞬だったしもうちょい検証はしたい所だな」


「もぐもぐ美味しいわぁルナちゃん、やっぱりルナちゃんが食べさせてくれるクッキーは世界一美味しいわね」


 リアは前も同じ事言ってたじゃねーか、天丼芸人か?

 そして俺の報告はスルーかよ……。

 ルナはお皿にあったクッキーを全て食べ終えると。


「マスター、ちびっこ達におやつをあげたい」


 俺にそう要求してきた。

 そういえば幼い時のルナも、チビ魔物達と仲良く遊んでいたしな……インベントリから毎度のササミジャーキーと煮干しと肥料と銅貨を出してあげた。


「マスター、ありがとう、行ってきます!」


 ルナが芝生の奥へと行くとチビ魔物達が一斉に集まってきている。

 楽しそうでよきよき。


 リアを見るとテーブルから離れて行ったルナに向けて手を……いやアホツル毛を手の形にして伸ばしていた、寂しさを表現しているのか?


 リアは溜息をつきながら。


「転移が出来そうって事は分かったわ、あともう一つの方はどうだったの?」


「出来そうだな、でもさすがにリアのダンジョン浸食はDP的に無理そうで具体的な項目が出なかったよ」


 俺の返事にリアは呆れた表情で応える。


「しかし扉を開けっ放しにする事で〈ルーム〉を疑似的にコアに見立ててダンジョンを作るかぁ……それが出来ちゃったのね……ちょっとこれ使いなさい、それとラハ!」


 リアは俺の前に前回よりも小さめの魔石を置き、ラハさんに何か命令している。


 そしてラハさんが走って庭園の外へ向かっていった。

 この魔石をDPに変換してメニューを見て来いって事だよな? でも……。


「他人のダンジョンを侵食するのはDPが余計にかかるって言ってなかったか? さすがにこの大きさの魔石で手に入るDPでいけるかね?」


「今ラハにコアまで行ってそこの扉の前の狭いスペースだけダンジョンから解放する作業をして貰っているわ、少し待ちなさい」


 そこまでしてくれるとは思わなかった。

 安全に検証できるのは嬉しいね、ありがたやありがたやー。


「なんで私に向かって拝んでいるのよ気持ち悪い、この貸しは今度ルナちゃんに返して貰うからね、ちゃんとルナちゃんに新しい水浴び用水着買った?」


 俺はすぐさま感謝の祈りを止めた。


 こいつはまた水浴びを一緒にしようとしているのか……俺と一緒に水浴びする権利で貸しを返せないだろうか?

 ルナは別に嫌がってなかったから良いっちゃ良いんだが……なんかこうモヤっとするんだよな。


「まだ買っていないな、ほとんど全部俺の強化に注ぎ込んだからな」


「むーん、ルナちゃんの安全を考えればそれは間違いじゃないのだけれど……もし今からやる実験が成功するようなら何処にでも自由に置けるコアが出来上がるような物よね……」


 リアは何やらブツブツと自分の思考に没入してしまった。


 俺はダンジョンマスター特有の感覚のせいか開けっ放しの扉の前の土地が変化したのに気付いた。


 リアはまだブツブツ言って何か考え事をしているので放置し〈ルーム〉に向かう。

 コアに近寄りダンジョンメニューを開き、先ほど貰った魔石でDPを増やしてからダンジョンの拡張項目を調べる。


 すると開けっ放しの扉の外に少しだけ俺のダンジョンを作る事が出来ていた。

 作るといってもその場所を掌握するだけの事だが、とりあえずやってみると……いけたね……。


 次は扉を閉めてみて、そしてメニューで自身のダンジョン情報を見てみると、連結が切れたダンジョンがあると表示された。

 コアに繋がっていない部分は休眠状態になってグレーアウトしメニューからは何も弄れない事が分かった。


 そしてそのまま一定時間たつと掌握した権利も消えてしまうようだ。

 すぐさま扉を開けてメニューを調べると掌握状態に戻っていた。


 次は外に出て扉を閉めて消してみた、すると俺が立っていた自身のダンジョン部分から力が消えたのが分かる。

 自身のダンジョン内だとコアから離れていても限定的なメニューの能力が使えるはずだが、扉を閉めた状態だと駄目になるのか……また扉を開けると戻っていた。


 次はダンジョン化した場所以外に扉を移してみよう……駄目か連結が切れたままだな、もう一度ダンジョンの上だが位置を少しずらして扉を出してみる……いけるな、ダンジョン部分なら何処に扉を開けても良いのか……それなら……。


「楽しそうねゼン」


 少し離れたテーブルからリアの声が届く。

 っとリアの考え事はとっくに終わっていたようだ。


「すまんリア、色々検証するのが楽しくなってしまっていた、概ね分かった所だが――」

 俺はテーブルの側の椅子に戻り、リアに今やった検証結果を説明する。


 ちなみにおやつをあげ終わったっぽいルナは、チビ魔物達と追いかけっこをして遊び始めていて、それを見て俺は、昔と変わらんじゃないかと安堵と共に少し笑みが出てしまった。


 追いかけっこをするルナを視線で追いながら俺の説明を聞いたリアは。


「普通はコアを動かすのにDPが必要なのよ? ……〈ルーム〉なら何処か空いている魔素の湧きスポットを見つけて扉を開けてダンジョンを設置するのもありね」


 コアの魔素を吸い込む効率はそのダンジョンの大きさで決まるからな、雨水をコップで受けるかプールで受けるかといったような物だ。


「でも魔素の湧きポイントなのに空いているって事は、何か問題がある場所って事だろう? 危険じゃねーかなぁ」


 俺は懸念を指摘する。


「……実は魔素の湧きポイントって常に一定じゃないのよね、小さい物はしばらくして消えちゃったりまた湧いたり、んー井戸が地下水の動きによって枯れたり戻ったりする事に似てるかしら? 枯れない井戸を持っている者が強いのは分かるわよね? 長い目で見るとダンジョンマスターとしての格に差が出てくるのよねぇ……」


 さっき雨水で例えたが、つまり魔素の湧きポイントは雨の降り易い地域って事だよな。

 毎日雨が振る場所もあれば、雨季にしか振らない場所もあるのと似てるのかもな。


 人が水で争うように、ダンジョンマスターも魔素の源泉スポットを求めて争うのだろうか?


「それはなんというか世知辛いな」


「そうね……あ、それとゼンなら都市部にダンジョンを作ってもいいんじゃないかしら? だってばれそうになったら逃げればいいだけでしょう?」


 リアの提案を考えてみる。


「人が多いと魔素も多いんだっけか? 例えば都市に家を借りてそこをダンジョンにか、俺はちょいちょい拠点を変える事が可能みたいだし……ありだな?」


「ありありね、私はドリアードだから無理だけど、ゼンとルナちゃんなら人の街に行ってもおかしくないしね、でもまぁそんな事になっても片方の扉だけは必ず此処に置いていってくれると信じてるわよゼン」


 リアがニッコリと笑顔で俺にそう言ってくる。


 そりゃこれだけ世話になったしな、気安い仲にもなれたと思うしそんないきなりいなくなるなんて事は――


「もしくはルナちゃんだけ置いていきなさい」


 前言撤回、ルナ連れて旅行にでも行こうかな……。

お読みいただき、ありがとうございます。


チビ魔物のおやつに煮干しが出て来るのは作中でまだ具体的に名前等出していませんが鳥の資質を持つチビ魔物も色々居るからです。


少しでも面白い、続きが読みたい、と思っていただけたなら


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