21 入口の性能 ゼン強化
俺は震える手を抑えながらダンジョンメニューの決定ボタンを押す。
日本でもそれなりに高額品に触れてきたが、これは桁が違うからね……。
そして俺の中に何かが入ってくる感覚がする。
ルナの時と違いダンジョンマスターは繭にならんのよね。
ダンジョンメニューがマスターに完全同期していて、配下には調整する必要があるとかそういう事なのかね?
理屈は分からんがそういう物だと知っていればそれでいい。
今回40万DPを使った〈入口〉スキルの他に取得したのは〈身体強化レベル3〉〈格闘レベル3〉〈剣術レベル4〉〈隠蔽レベル4〉〈気配感知レベル3〉の五つだ。
自分やルナを守る強さが必要だからと遊びはなしだ……回復系や支援系の魔法とか鑑定系も欲しいんだけどな……〈入口〉スキルが使えない物だったらと思うと胃が痛い。
自分の中で〈入口〉スキルが〈ルーム〉と合体したのが理解出来る。
やっぱり〈ルーム〉スキルの拡張だったようでまずは一安心。
スキルの感覚を頼りに部屋の入口方面に歩いて行くと、玄関口だった場所に扉はなく、その先に廊下が横に伸びていて扉が二つ出来ていた。
まずは目の前にある扉のドアスコープから外を見てみる。
すると暗いが月明りで寂しげないつもの冒険者街の端っこにある行き止まりへの道が見える。
次に少しづれた二個目の扉のドアスコープから外を見る……同じ景色だな……。
ピョンピョンと飛びながら私にも見せて見せてとせがむルナに、料理の時に使っていた踏み台を置いて、両方のドアスコープを見せてあげながら、俺は冒険用装備を身に着けていく。
剣もしっかり腰に佩き準備万端。
「ルナは奥に行ってな」
今度戦闘用装備でも買ってあげないとなぁと思いながらルナを避難させる。
「分かった、気をつけてねマスター」
ルナはシュッシュっとボクサーのように拳を振るうと、部屋の隅にあるコア付近へと移動した。
一応最後の防衛をしてくれているのだろう。
深呼吸してからそっと一つ目の扉を開けていく……いつもの道だ……すぐ扉を閉める。
二つ目の扉を開ける……同じ道だな……すぐさま扉を閉める。
うーむやっぱ同じ場所に出るか……夜中に出歩きたくねぇしな……続きは明日にしよう。
冒険者装備を外して奥の部屋に戻りながら。
「よし今日はもうお仕事終わり! 映画でも見るかルナ」
「見る、今日はファンタジー物が良い」
とファンタジー世界のホムンクルスであるルナさんが言い出した。
ルナの存在が、俺から見たらすごいファンタジーなんだけどな……。
ファンタジー世界から見たファンタジーとはリアル日本世界の映画の事なのだろうか? 冗談はさておき、魔法や魔物が出てくる映画だよね了解。
俺とルナはすぐ眠れるように寝間着に着替えてから、ダンジョンメニューで映画を一緒に見るのであった。
勿論ルナの寝間着は日本産の物で、色々な動物の絵柄がプリントされている可愛い奴だ、俺のは冒険者街で買った簡素な服を寝間着にしている。
っと忘れる所だった、ダンジョンのコアレベルも上がってオークションの出品だけ出来るようになっているんだった。
コアレベルで出品や入札出来る範囲や数に制限があるみたいで、俺が出来るのは千DP未満の開始出品枠が一つしかない。
うぐぐ……普通は土地やらからコアが継続的に魔素を吸収してDPに変換していく事で成長していくらしいからな……。
ふーむ、出品すると品物が謎運営預かりになるのか、そして出品されている物は簡易鑑定結果が表示されるんだなふむふむ……あれ?
俺は適当なペリドットの粒石を出品操作する。
出品の際に簡易鑑定結果を元に過去の出品物との比較とかが出て来た。
すげぇ便利だ……出品をキャンセルしてちょっと台所まで行って魔道レンジを出品操作しようとしてみた。
……簡易鑑定結果が出たが過去の比較は出て来ないな。
だけどこれって鑑定代わりに使えちゃう機能かね……リアの言っていた魔力の質とか効果の詳細は分からんみたいだが、今の俺には十分使える機能だ。
これはコア鑑定と呼ぼう。
出品枠が勿体ないし何か出しておくか……出品者名は匿名で期限は……他の出品を見ると粒天然石とかは最短で一日のがあるね。
なら俺も一日っと、開始値段は50~150DPくらいが多いのな、ならリアの言った通り100DPにして完了っと。
これが売れるようだと最低でも一日100DP、いや手数料が一割取られるから90DP、いやいや購入費もかかっているから89DPの稼ぎになるのかな?
小スライム89匹分かぁ……ないよりましだし、出品枠が増えたらもうちょい美味しくなるかねぇ。
さてとメニューを閉じて映画をちゃんと見ないとな、ルナも戦闘シーンをワクワクしながら見ているし後で話が合わないとまずい。
……後で気づいたんだが、出品操作に伴う鑑定をするとDPが少し消費されているみたいで、タダで鑑定しまくりだ! って思っていた俺はがっくりと、そんな美味い話はないんだなって思い知った。
――
――
次の日の朝はルナの作ってくれたご飯を食べてからリアの所へ向かう。
俺も飯の後片づけくらい手伝おうとしたら断られた。
これもナビゲーターの仕事なんだと言ってルナは譲らなかった。
そんな事はないと思うんだけどな……俺が洗っている途中の皿を落として欠けさせてしまったのが良くなかっただろうか、あいつのお気に入りの絵柄だったからな……。
樹海ダンジョンは今日も盛況で、人混みを避けて魔物も避けて転移魔法陣を目指していく。
リアに貰ったペンダントでもMAPが脳内に表示されて色々分かるけど、今は〈気配感知〉もあるので移動が楽々だ。
街中だと気配が有りまくりで酔いそうになったから、感度を落として対応したけど〈悪意感知〉と併用するのがいいかも?
次スキルを取る時は〈悪意感知〉も取っちゃおうかな。
ウッドゴーレム君に案内されていつもの庭園に入ると、リアが土の上に立ち目を瞑り日光浴していた。
「お邪魔するよリア」
リアは俺の声を受けてアホツル毛をピクッっと揺らしながらゆっくりと目を開けると。
「いらっしゃいゼン、こんなに連続で来て狩りはしないでいいの?」
心配されてしまったが、まぁ今日は実験優先だよな。
「あー実はな――」
俺は昨晩取ったスキルの説明やらオークションの件やらを軽く話し、最後に〈入口〉スキルの事を伝える。
「え? なにそれ、予想の通りだったら、ぶっ壊れユニークスキルじゃないの、ずるいわよゼン! ユニークスキルの拡張強化なんて滅多にないのよ!?」
リアはアホツル毛をピョンピョンさせて抗議してくる、知らんがな。
でも『まるで聞いた事が無い』ではないのなら前例はあるって事だろ?
「まぁまず使わせてくれ」
俺がそう言うとリアは芝生に移動して、いつものテーブルと椅子を出し座りながら様子を見守ってくれている。
さて俺も芝生のある触れ合い魔物園の方に移動してから。
「ルーム」
そう唱えると脳裏にどちらの扉を出すかを聞いてくる感じがした。
そして現状の扉のセーブ位置もなんとなく分かる、おれは二つ目の扉を意識して確定させる。
目の前に出た扉は形が一緒なので見た目じゃ分からん、まぁガチャっと外開きのドアを開けてみると。
「キャッ!」
踏み台に乗ったルナが倒れ込んでくる。
「っとナイスキャッチだ俺、何してんだルナ」
倒れ込んできたルナを胸で受け止めてから、芝生の上に立たせて聞いてみる。
「気になってずっとドアスコープから覗いてた、急に景色が変わったと思ったらドアが開いて、そしてマスターの胸の中だった、グッジョブマスター」
「そっか、まぁ気をつけ――」
どごしっ! ごろごろごろ。
俺はいつの間にか横に来ていたリアのアホツル毛に吹き飛ばされた。
「ゼン! ルナちゃんが倒れる所だったじゃないの何しているのよ! ……いらっしゃいルナちゃん、こっちで私とお話ししましょう、あら椅子を一つしか出してなかったわね、仕方ないから私の膝の上に乗りましょうね、あ、クッキー出してあげるわね~」
数メートル吹き飛ばされた俺だが、以前のフライングディスク事件の時よりは痛くない。
自動で受け身を取ったり防御力もアップしているのかな、色々とスキルを取っておいてよかった……と心底思った。
リアはルナを抱きかかえて椅子まで移動して自分の膝の上に乗せ、楽しそうに会話している。
ルナがその姿勢のまま自分のインベントリからお茶道具を出してお茶を淹れてあげているのがシュールだ。
起き上がった俺は検証を進める事にした。
一回扉を閉じて再度〈ルーム〉を発動、ふむ今度は二つ目の扉のセーブ位置がここになっているのが分かる、二つ目の扉を出して開ける。
そして扉を開けっぱなしで少し離れて一つ目の入口をすぐ側に設定しようとすると……失敗した……。
うーんなんとなく扉同士が近すぎると失敗する感覚はあったんだがやっぱだめか。
上下に設置して水でも流せば永久に水力発電とか出来ないかなーと思ったんだが駄目そうだ。
部屋の中に入り冒険者街の方の扉を開ける。
そして誰かに見られないようにすぐ閉める。
うん、両方の扉を開ける事ができたな。
一々開け閉めしないでも転移に近い事が出来そうだ、やっべぇなこれ。
さて次はコアの近くにいってメニューでダンジョン拡張が出来ないか調べてみる。
ああ……開けた扉の外に拡張出来そうだ……だが具体的な項目が出ていないからDP不足かこれ。
俺は一旦検証を止め触れ合い魔物園に設置されたテーブルへ向かう。
その途中にチビミミックが足元に近付いてきて、自慢をするように自分の箱の中身を見せつけてきた。
そこには銅貨が2枚にビー玉が一つ入っていた……よかったな。
俺はチビミミックの頭を……上蓋を撫でてあげてからリアとルナの元に向かう。
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