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20 鼻歌と出来の良い焼きそば

 〈ルーム〉に戻ってきた俺をルナが迎えてくれる。


「マスターおかえり」

「おうただいまルナ、街で野菜とか肉買ってきたぞ」


 俺は手に持っていた野菜とお肉をルナに渡す、なぜならば。


 俺がルナに最低限覚えて欲しいと頼んだのは〈身体強化レベル2〉〈格闘レベル2〉〈基礎知識レベル2〉〈ナビゲーターレベル1〉〈隠蔽レベル3〉の五つで、後はルナに好きに選ばせたんだよ。

 出来れば身を守る格闘なんかを一本伸ばししてくれないかなぁと内心で思いながらね。


 でもルナが選んだ物は〈身体強化レベル2〉〈格闘レベル2〉〈調理レベル4〉〈製菓レベル3〉〈掃除レベル2〉〈家事レベル1〉〈基礎知識レベル2〉〈ナビゲーターレベル2〉〈インベントリ極小〉〈隠蔽レベル3〉〈鼻歌〉だった。


 〈家事〉は〈掃除〉や〈調理〉なんかを内包しているが独立したスキルと比べて同じレベルだと能力が低くなる、〈掃除レベル2〉と〈家事レベル3〉で掃除に関しては互角か少し家事が負けているかなって所。


 まぁ能力は重複するのでいいのだが、それなら家事だけ取って後は強さに振って欲しかった……。


 ルナは俺を家政的に補佐する能力が欲しかったって事なのだろうか、決して焼きそばが不味過ぎたからではないと思いたい。


 あとさ〈鼻歌〉とかいらねーだろ? レベルも存在しないゴミスキルで必要DPも少ないのだが、これぜったい使えるDPがあと少しあったからってぎりぎりまで使うためだけに取っただろ?


 俺が台所で料理の準備をしているルナにそう突っ込みを入れてみると。

 ルナは頬を少し赤くしながら。


「ち、ちがう! ……えーと、そうだ! アニメで主人公のお母さんが鼻歌をしながら料理を作ってたから!」

「ナルホドソウダッタノカー」


 『えーと、そうだ!』とか言っている時点で認めているような物だがあまり突っ込むのも可哀想なので、幼いルナの残した思い出としておこう……。


 だいたい読めば分かるような能力ばかりだが〈隠蔽〉は一応鑑定対策だ。

 まぁダンジョンマスター関係の情報は鑑定では簡単には見られないって神様が言ってたんだけどな、俺やルナが鑑定されても人間って出るはずだし。


 後は〈インベントリ極小〉は極小とついているわりに一畳のクローゼットくらいは入る。

 俺のインベントリはいまだに限界になった事がないから正直分からん。

 琵琶湖くらいは入るんじゃね? 知らんけど。


 まだ背の高さが百四十センチくらいなルナはメニューで買った台所用の滑り止めとかもしっかりとした踏み台を使い、鼻歌を歌いながら料理している。

 なるほど、確かに鼻歌交じりで料理する姿は様になっている。


 邪魔するのは悪いし、俺は自身の強化をする事にした。


 メニューで買った柔らかクッションにどかっと座ると、ダンジョンメニューを開いた。

 現状60万DP以上ある訳だが、購入できるスキルや拡張に必要なDPを調べていかないとな……。


 ――


 ……うーん、俺は今すごく悩んでいる、すごくすごく悩んでいる。

 大体の部分は確認が出来たが、ダンジョンメニューは所持DPで操作出来る部分しか見えないのが面倒なんだが……一度出た物はメニューに残るから最初にどかんとDPが欲しい所だ。


 最初にホムンクルスの設定をした時はなぁ……色々見られたのになぁ……あれはやっぱりナビゲーターを作る最初だからって事でサービスか何かだったんだろか?


 メモっておけばよかったな……そんな事になると思わなかったから、俺が正確に覚えている数字は、設定だけした高性能ヴァンパイア娘の胸をワンカップ大きくすると必要DPが1万DP以上増える事くらいだけだ……役に立つ情報を覚えておけよ俺!


 ルナの強化の時は予算が10万DPだったが、今は60万DP以上あるのでやれる事が増えている……増えているのはいいのだが少し妙な物を見つけてしまったのよな。


 ダンジョンメニューの中に〈入口〉ってのがあるんだ。


 拡張で裏庭を作ったり部屋を拡張する項目の方にも入口とか通路とか扉とかってのはあるんだが……それは例えばダンジョン拡張で部屋の外に裏庭なんかを数千DPで作った時と同じくらいのDPで購入出来る物であって。


 ……俺が気になっているのは購入DPが40万もするスキルの〈入口〉な訳で……。


 なんぞこれ? いやいや勿論予想はいくつかあるんだが……例えばユニークスキルである〈ルーム〉の入口設定を冒険者街とリアの庭園とか二カ所同時に設定出来るとかさ。

 でもそれだと限定的な転移魔法になっちゃうぜ? そんな事が本当にあるのか?


「マスター出来たよ」


 ルナがお皿を二つ持って台所から奥の部屋に入って来る。


「ああ、ありがとうルナ」


 俺はダンジョンメニューを閉じてテーブルに置かれた皿を見る。


 焼きそばだった。


 ……ねぇルナさん? やっぱ君にこないだ食べさせた焼きそばが余りに不味かったからそのスキル構成にしたの?

 そうだとしたら俺の下手な調理技能が、ルナの人生の選択を決めてしまった事になるんだが……。

 焼きそばを前に考え事をしてしまっていた俺に向かってルナが。


「食べよマスター、頂きます」

「ああ頂きますだルナ」


 そうだな考え事なんて後でいくらでも出来る、まずはルナが初めて作ったご飯を堪能せねば。


 ズルズルッと麺をすすりあげる、むぉ! なんだこれは! 俺が作ったのとは別物だ!

 家庭用の生袋麺だろこれ? 企業の努力がすごいのかルナの腕がすごいのか……両方だな!


「美味い! 美味いよルナ! 麺がべっちゃりしていないし、野菜もコゲてない、最高だ!」

「マスターの褒め方が少し嫌……」


 ルナは俺の褒め言葉に納得がいかないようだ。

 少し焦りながら言い直す事にする俺。


「あ、いや、最高に美味しいって事だよルナ、これどうやって作ったんだ? 俺が前に使ったのとほぼ同じ材料だろ?」


 ルナは言い直した俺の褒め言葉に少し機嫌を良くしたのか饒舌に語り出す。


「麺をレンジでチンッしちゃえば水はほとんどいらない、フライパンに入れる前に麺をほぐして味付けの粉を半分先にまぶしちゃう、後はフライパンでゴー」


 あーリアの所からお暇する時にメニューでお買い物したいって言ってたから、いくらか予算を言って好きに買えと伝えておいんたんだが、電子レンジというか魔導レンジを買ったのか。


 ルナが覚えた〈調理レベル4〉だと、熟練の主婦か家庭的なお店なら開けるくらいの腕があるからなぁ……冒険者で〈剣術レベル3〉あったら一人前扱いだものな。


「その情報は調理スキルに入ってないだろ? 漫画からの知識か?」

「さっき料理番組で焼きそば回を調べた!」


 幼いルナの頃は娯楽番組しか見てなかったのになぁ……。


「そうかルナはすごいなまじで、美味い! お代わりとかは?」

「あ……それは考えてなかった……マスター私の残り食べる?」


 ルナはしまったという表情をしてそう聞いてきた。


 腕はあるけど経験はゼロだからな、そういった配慮はこれからだよな。

 これからのご飯が楽しみになったね。


「いや、ならデザートでも買っちゃうか、ルナは何が良い?」

「最強の幸せでいこうマスター」


 ……プリンが入ったシュークリームって事か?

 ……ルナはやっぱりルナのままなんだなぁと実感した。


「よし、今買うからな待ってろ」


 俺がメニューからプリン入りシュークリームを探していると、焼きそばを食べ終えたルナが話しかけてくる。


「マスターさっきは何を悩んでいたの?」


 ああ、あの〈入口〉の事でウンウン悩んでいた時の事か、俺は購入したシュークリームをテーブルに出しながらルナに説明してあげた。


 ……。


「悩むくらいなら取っちゃおう、駄目スキルだったなら私がマスターを慰めてあげる」


 ルナが手をグーの形にしてこちらに突き出しそう言ってきた。

 そうだよな、これをとってもまだ20万DP以上残る訳だしな……。


「それもそうだな、たぶん扉の位置が二カ所になるやつだと思うし、これがあればリアの所に行きやすくなるかもだな、よし取っちゃおう!」


「もぐもぐ、最強幸せ……うん頑張れマスター、もぐもぐ」


 ルナの興味はすでに俺の悩み事からシュークリームに移っているようだ……幸せそうに食べている顔が可愛いね。


 そうして幸せそうに俺の分のシュークリームまでもナチュラルに食べ始めているルナを横目に、欲しいスキルの設定をしていく。


 って、まてまてルナさん……それ俺の分なんだけど……。

お読みいただき、ありがとうございます。


焼きそばのレンジでチンッとか料理の話とかは結構適当なので真似をしない様お気を付け下さい


生袋麺の種類によっても変わってくるし、事前に袋を少し開けておかないと破裂したりしますし……


あ、でもゼンがやらかした野菜から出る水分のせいなのか麺がベチャっとしていたり肉が固まりになったりしているのは作者の実体験から来ています、料理って実際にやると難しいですよね。


少しでも面白い、続きが読みたい、と思っていただけたなら


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