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08~収拾つかない~

申し訳ありません。

遅くなりました。

なんでもはしないですから、許してください。


 神通力は一人一つまでという制約はないらしい。

 インターネットで見かけたのだが、最大で六つの神通力を持っている者がいるらしい。

 私の場合は三つ。


 そして神通力は人生の山場を越える、もしくは人生の山場の直前に得やすいと言われている。

 精神及び肉体が出来上がっていない子供の時ほど山場に直面し易く、神通力に目覚める割合も子供が一番高い。


 私の場合、山場が三回あった。

 最初はインフルエンザで死に掛けたときだ。

 朦朧とした意識の中、"それ"は私の中で目覚め、私を守ってくれた。

 翌日にはもうインフルエンザは治っていたという。

 次は幼稚園で演劇をするということになった際に、友達の中で自分だけが喋る役でなかった際に発現した。

 その日から仲間の中の雰囲気が険悪になり、目が合うだけで喧嘩になった。

 もちろん演劇は大失敗し、私は清々した。

 最後は中学生の頃、友人を作れず辟易していた時、ネットサーフィンをしている際に見つけたリストカットを気持ちよさそうに語る女子高校生のコメントを見、実践したときだ。

 自身の体の中から何かが失われていく快感。

 体から溢れ出た血を見た瞬間、これまでの鬱憤や後悔が削がれていった気がしたのだ。

 罪が清算されていくような感覚だった。


 苦しくはない。

 むしろ気持ち良い。

 どこにも掴めそうな所がない黒い沼。

 もがく、もがく。

 何もしないこと以外それぐらいしか出来そうにない。

 諦めた、何もしないほうがいい。

 何もせずにこの快楽が得られるなら、私はもうこのままのほうがいい。

 沈む、沈む。

 自分が自分で無くなるような感覚。

 愛を知り隠していた自らを成す負の一面が一気に膨れ上がり、自分を覆い、やりたかったことを自分勝手にやっていく、そんな感じがする。

 あぁ、でもなんでだろう、むしゃくしゃする。


 龍也が鼓 之乃に部活とはどういうことをするのか訊こうとしたその瞬間。

 ガラスが割れて床に散らばるような――実際そのとおりだが―音がした。

 その音に一番に反応し動いたのは戌亥 ショコラだった。

 悪を嗅ぎ付けたかのように、殲滅すべき対象の居所を特定したロボットのように。

 その後に続いて龍也、一昏川、富士の順で廊下側の扉から廊下に出る。

 養護教師である黒尾は校庭側から外にでている。


「どうしたんですか!」


 右側にある窓が割れて、風が吹き付ける。

 黒い将軍に覆われたみたいな何かが久遠 主音と相対している。

 戌亥 ショコラが久遠と得体の知れない者の間に躍り出る。

 赤髪で長躯の彼女が間に立つと足の長さが際立つ。

 彼女の問いに主音が答えようとすると黒い何かの持つ鞭が戌亥の身に迫る、その前に。

 

一発屋クリオ、"乙女の祈り"」


 天使に、神に、先祖に祈る麗しい乙女の姿が脳裏に浮かぶ。

 その乙女はとても健気で献身的で、そして叶う事のないであろう儚げな恋の病を煩っているようだ。

 この曲を紡いだ少女は何を思い、何を願ったのだろうか。

 祈りは届いた。

 鞭は戌亥の体を裂くことなく逸れ、鎧の闇武者のような者の手元に戻る。


「前々から思ってたんですけど、その! クリオの! 下の一発屋って! なんなんですかもう!」


 だって史実的には一曲だけ有名になっただけだし、他に有名な渾名があったらそれにしたのに。

 

 ただの芸術の九女神ムーサイという神通力では芸術の才、学問の才を得るだけだ。

 だが、久遠 主音の芸術の九女神ムーサイは特殊だ。

 九柱それぞれに音楽家達の力と人の姿が与えられている。

 テクラ・バダチェフスカ、それがクリオに与えられた音楽家。

 音楽家、才能ある唯の人。

 なぜ人なのに神通力として成立するのか。

 

 それには理由がある。

 古来より世界、主に東アジアに多いが、祖先崇拝というものがある。

 日本において、お墓参りやお盆といった行事はその名残だ。

 崇拝するという行為は神に対してするものだ。

 つまり曲解だが祖先は神、ということになる。

 日本人の祖先が神通力として発現する、であれば他の国の人の祖先でだって発現する。

 ただ個別の人を神通力にする、となれば相応の知名度が必要だ。

 

冥界の主神ハデス悲冷の剣アケロン」 


 冥界より出づ剣を掴む。

 左足を前に中段に構える。


「待て、龍也君。むやみに攻撃するな。あれは女の子、服装からして一年生の子だ。暴走、多分荒御魂になっている。まずは神通力の正体を知るべきだ」


 その場にいる全員が動きを止める。


「じ……神通力の正体を知るゆうてもどうやるんや?」


 俺の後方、左側に立つ鼓さんが言う。

 当てずっぽうで人の神通力を見極めるのは難しい。

 見た目からの情報で見極めることも可能ではあるが、姿形がない神通力もあるのでこれもあまり当てにはならない。

 ただ、この黒い将軍のような格好からわかるのは日本の神であるということだが、鞭をもつ日本の神なんているのか?


「大丈夫。今からそれを出来る人をかたどる。ピアノの詩人エウテルペ幻想即興曲オンリーワンダー。――――――ああ、発動し終わるのに一分ほど掛かるからそれまで守ってネ」


 久遠 主音の神通力の芸術の九女神ムーサイの一柱であるピアノの詩人エウテルペ、喪服のような黒い服装を身に纏っている。

 女性の姿ということはわかるが、顔がベールによって見えないので表情はわからない。


 音がピアノの詩人エウテルペを取り巻く。

 音が鳴り響くたび、体が光に包まれる。

 

 黒い鎧武者は今度は俺を狙っている。

 鞭の速度は音速を超えるらしい。

 ただ動作が遅く、来る位置がわかっているのなら充分対応できる。

 ひゅっと空気を切る音とともに強い衝撃がくる。

 鞭を悲冷の剣アケロンに絡ませることに成功する。

 引っ張ろうとするがその前に黒い武者が鞭から手を放す。

 すると、鞭が霧散して消え、武者の手元に鞭が現れる。


 攻撃はできない。

 中にいる人を傷つけてしまうかもしれない。

 だから防戦一方になる。

 鞭に対処できるのは俺と一発屋クリオの補助があって戌亥さんも対応可能だ。


 ピアノの詩人エウテルペの光が収まる。

 手持ち無沙汰で見ていることしかできなかった鼓が驚く。


「神通力の正体見ること出来る人って理事長のことやったん!?」

 

「うん、まぁコピーしただけだから、それほど似ていないんだけどね」


 主音がおどけてそう答えた。


「模倣完了、能力を発動。全てを見通す知恵:偽(ウジャトの眼:コピー)、閲覧開始」


 ――――――――――――――――――――――

 

「儂の出番ない、いや喋ってないんじゃが、それと作者が最近めんどくさくなって全然書いてないんじゃが! 糞みたいな絵ばっか書いてるんじゃが、というか、あれぇ!? 儂の喋り方こんなじゃったっけ!?」


 書かれてなさすぎて口調が分からなくなったんだな……

 じゃがじゃが言ってるから、りこを後ろに付けて喋らせたいな。


「ダメやからな? あ、どうも鼓 之乃やで!」


 ハイ、どうもー。

 あ、良い匂いする。

 シャンプーとか何使ってんの?


「ふぁぁああ!? そ、そういうのは本編で言いや! あとい○髪やから! そんじゃ、またなー!」


「電光のような女じゃな……」


 次話は何年後になるんだろうな、なぁ!作者!

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