京都
今回、先月発生した京都アニメーションの放火事件に関する記述があります(作中では少し誤魔化していますが)。
この小説を読んで、非常に不快になる方も多いと思われるので、あらかじめ注意しておきます。
また、なぜ作中でこの事件についての記述をしたか、そして私自身の現在の気持ちを後書きで話します。
8月16日。この日俺は京都にいた。俺は朝のバスで名古屋を発ち、お昼前には京都に着いた。そして京都駅構内で昼食を取る。そして昼食中、真奈から『もうすぐ京都着く〜』というLINEが届いたので、昼食を食べ終えると、京都駅の新幹線改札口に向かった。
「おはよう・・・じゃなくてもうこんにちはだね、優斗。でも、遅いよ。10分待った。ほんと優斗って、私のことを恋人だと思っているの?」
俺が改札口に向かうと、そこにはもう真奈が立っていた。さすがに帽子とサングラスで顔は覆われていたが、それでも芸能人というオーラを思う存分出していた。・・・で、叱られた。どうやら午前中、大阪のラジオ番組に出演してきたようだ。
「そういえば真奈って、昼食べたか?」
「うん。新幹線の中で、パパパッと食べてきた」
真奈も食事を済ませてきたので、早速京都観光に向かう。
「そう言えば、旅館のチェックインっていつだっけ?」
「4時」
「早いな」
「うん。だって5時には夕食だから」
「そうか」
俺と真奈はこう言いつつ、京都観光へと向かった。
◇ ◇ ◇
夕方、俺と真奈は京都観光を済ませると、早速宿泊先の旅館に入った。一応部屋は別だが、夕食と明日の朝食はバイキング形式で同じテーブルに座れるらしい。とはいえ、真奈からは「一応他人のフリをして欲しい」と言われたので、お互い向かいの席に座りながら、会話のやりとりはLINEでするいう変わった光景が行われた。しかし、浴衣姿の真奈も可愛いな・・・
「そろそろ部屋戻ろうか。おやすみなさい」
「うん、また明日ね。おやすみ」
夕食を終えると、お互いの部屋に戻った。窓の方を見ると京都の山々が綺麗に映っている。で、時刻は夜の7時前。そろそろ風呂に入ろうか・・・と考えていた時、部屋のドアからトントンという音がした。俺はそのドアを開ける。そして・・・
「はい。何の用ですか・・・何でお前がここにいるんだ!?」
「あ。渡辺くん。やっぱこの部屋だったんだ」
「いやいや、何で人の部屋に平気で入り込んでんだよ!」
「何って・・・ここ、私の実家なんだけど」
俺がドアを開けた先には、浴衣を着た寺内裕奈の姿があった。
◇ ◇ ◇
俺と真奈は、寺内が用意した浴衣に着替え、旅館近くを散策していた。しかし、かなり人が多いな。それに出店もいっぱい立ってるし、浴衣を着た人ばかりだ。
「そうだ裕奈。そういえば、今日何かあったっけ?」
「何って・・・五山の送り火よ。8時になったら東山から『大』の字が出て、そっから、京都の山々に船とか鳥居とか、色々映し出されるの。テレビでも見たことあるでしょ?」
「あー、あれか。俺、一度見たかったんだよな」
「送り火でご先祖様をあの世へ送ると、お盆が終わって、夏が終わるの」
「ゆーなーっ、八ツ橋あるよ!優斗も食べよ!」
「真奈、ちょっとは人の話を聞きなさい!」
「あはは・・・真奈も子供だな・・・」
子供っぽさが垣間見える真奈に対して、寺内はしっかりしてる。テレビではぶりっ子キャラで、学校でも子供っぽいを見せる時があるけど、意外だな・・・
そんなこんなで午後8時、ついに東から『大』の字が映し出された。周りは大歓声だ。そして5分後には、北から『妙』と『法』の字が映し出され、それから5分おきに、船と再び『大』の字。そして最後に鳥居が西に向かって映し出される。
「うわー、めっちゃ綺麗!」
「そうだな・・・俺も京都行って良かった」
「でしょ?これを見るために、毎年わざわざ京都に行く人も大勢いるんだから」
そして最初の『大』の字が映し出されてから1時間が経った頃には、京都の山々を映し出していた送り火は完全に消え、人の波は帰り道の方向へ向かっていた。
「送り火が終わって、ご先祖様があの世へ帰っちゃうと、いよいよ夏が終わるんだな・・・って感じるの」
「そうだな・・・」
「それに今年はあんな事件が起こったから・・・」
「あ、うん。酷い事件だったね・・・」
「あー、あれか・・・」
「私もアニメは大好きだから、将来ある有望なクリエイターさんが無残にも、多数犠牲になって・・・今年はその人たちの分もちゃんと送ってやりたいな・・・って思ったの」
「裕奈・・・」
「寺内・・・」
寺内は少し前に京都で起こった放火事件の話をする。その事件の話をしていると、寺内の目は赤く潤んでいた。そうだな・・・明日は現場に行って献花しよう。
そして、初めて見る五山の送り火に感動した俺と真奈は宿泊先の旅館へ足を戻した。
2019年7月18日、京都市伏見区にある京都アニメーション第1スタジオが放火によって全焼し、35人が死亡、34人が重軽傷を負うという痛ましい事件が起きました。事件の詳細に関しては報道で散々流されたので記述しませんが、本来、こういう痛ましい事件については書きたくないというのが私の本音でした。
話が少し逸れますが、京都アニメーションさんが手掛けた作品は、非常に作画が美しく、その美しい作画から映し出されるクオリティーの高さは常に感動を呼び、私自身も京アニさんが手掛けた作品にその都度、感動を覚えた一人でもありました。京アニさんが手掛けるアニメは、原作があるものが多数ありますが、最近のアニメでよくある「原作が台無し。アニメ化する意味があったのか」という声とは無縁で、常に原作以上の作品を見せてくれて、「京アニが手掛けてくれて良かった」とその作品を見るたびに感じました。そして、京アニさんが手掛けた作品は一種の『ブランド』でもありました。
話を本題に戻します。この事件については絶対に風化させてはいけないし、何より私自身も事件が発生した当時はショックで忘れたくても忘れられないという状況(それは今でも)だったので、少しでも何かしら書いておこうかなと思いました。
そして、事件から1ヶ月以上が経過し、私自身がようやく、精神的にある程度落ち着きを取り戻したこと、また、現場近くに設置された献花台が撤去されたことや、昨日、犠牲者全員の氏名が公表されたことを区切りに必要最低限のことでも書いておこうと判断しました。
最後に。お亡くなりになった皆さまとそのご遺族様へ、心から哀悼の意を表したいと思います。また、お怪我をされた方々には、お体のことはもちろんのこと、お心のほうも、一日も早いご快癒をお祈りします。
そして京都アニメーション様。これからも、みんなで一緒に応援していきますので、一日も早い復興と再生をお祈りします。
追伸・裕奈の実家である京都の旅館は、八坂神社の近くにある設定です。旅館が祇園にあるとイメージして読んでいただけるとありがたいです。




