それぞれのクリスマス
「理佐ちゃん、美穂ちゃん。この人が渡辺優斗先輩。私とは小学校からの先輩なの」
12月24日、この日俺は花ちゃんに誘われ、朝から渋谷に出かけていた。そして朝10時、待ち合わせ場所に現れた1年生2人が揃って、俺に挨拶をする。
「渡辺先輩、はじめまして。花とはクラスメイトの上田理佐です!」
花ちゃん曰く、モデル志望だという理佐ちゃん。背が高くて、ショートカットだからなんとなくしっくり来るかな。
「西野美穂です。花ちゃんが言ってた通り、やっぱ格好いいですね!」
こっちはアイドル志望の美穂ちゃん。背が高い理佐ちゃんとは違って、身長は160cmあるかないかでボブカットが特徴だ。
「つーか花、俺を誘ったのはいいけど、これから何をするつもりだ?」
「行けばわかります♡」
花は笑顔でそう答え、俺の右手を握り締める。そして・・・
「あっ花、先輩と手繋いでるし・・・私にも繋がせろー!」
「ちょっと、理佐ちゃんまで・・・花ちゃんズルいし!なんで先輩とこんなに仲良いの!」
結局、後輩の女子高生3人が一斉に俺に向かって飛び込む結果となった。
花ちゃんに言われた通りに、4人が向かった先はカラオケ店だった。そして・・・
「今日は1日歌い明かすわよー!」
花ちゃんの掛け声とともにカラオケは始まった。3人ともカラオケのレパートリーは豊富だった。最近流行りの歌から、少し前の歌、それどころかかなり昔の歌まで歌っていた。そしてアイドルソングやアニソンまでみんな歌い出す始末。そして俺もしっかり歌ったから、最後は全員喉がガラガラだった。
夕方、カラオケが終わるとそれぞれ帰路についた。俺と花ちゃんは寮住まいだが、理佐ちゃんと美穂ちゃんは自宅通学なので、帰り道はバラバラだ。あとで花ちゃんに聞いた話だが、理佐ちゃんと美穂ちゃんは小学校も中学校も一緒だとか。
帰りの電車内、花ちゃんはふと小言を漏らした。
「ところで先輩は真奈さんと遊ばないんですか?彼女なのに。せっかくのクリスマスイブですよ?」
「あいつ今日も仕事だし仕方ないよ。帰りも遅くなるって言ってたし」
「って言うか、いつもいつも真奈さんは仕事ばかりですよ。1年365日中、何日働いているのか。それに最近は学校にすら行ってなくて、進級すら危うい状況でしょ?そんなに忙しいんなら、別れちゃえばいいのに・・・」
「んな事俺もわかってんだよ!俺と付き合い始めたら始めたで、真奈はどんどん売れっ子アイドルになっていくし・・・」
それでも真奈がちゃんと学校に来ると、俺としっかりイチャイチャしてるからな。俺も真奈も別れたいと言う気持ちは一切ない。そして電車から降り、学校の寮へ戻る帰り道、花ちゃんは俺にこう言ってきた。
「私、優斗さんのことまだ諦めていませんから。優斗さんより素敵な男性は世界中、どこを探してもいないと思っています」
「お前・・・昔からたまに変なこと言うけど、本当に頭大丈夫か?」
「・・・もう先輩鈍すぎます!いいです。実力行使します。私と付き合ってください。略奪愛します。一生のお願いです」
花ちゃんは真顔で俺にこう言ってきた。花ちゃんには申し訳ないけど、返事は最初から決まっていた。
「ごめん。無理だよ」
俺は花ちゃんに断りの返事を出した。その瞬間、花ちゃんは涙を流し始めた。花ちゃんは瞬く間に号泣した。・・・女って本当めんどくさいな。そして・・・
「私、絶対優斗さんのこと諦めませんから・・・」
俺が出した返事にそう言った花ちゃんは完全に目を真っ赤にし、寮に戻って行ったのであった。一方の俺は、
『やっと仕事終わった!メリークリスマス!』
と書かれた真奈のLINEの返事をし、録画した歌番組を見始めた。そしてテレビ越しに見る真奈を見て、
『やっぱり相川真奈は世界一可愛いな』
と俺は思った。




