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4 それには激しく同意いたしますわ

 さて、シエルに与えられた任務はラフィー・シラソル男爵令嬢のフォローとスキルの調査である。

 他人のスキルの調査などどうしたらよいのかと思ったが、悩んでいても仕方がない。

 とりあえずラフィーの友達を名乗り、任務がフォローであるなら教えねばならないことがある。


「シラソル様、先程は殿下が問題にしなかったので大事に至りませんでしたが、王族の言葉を否定するということは本来なら不敬と取られて処罰の対象になってもおかしくないことなのですよ」


 助かりはしたものの、おそらくこの場に居る方々が皆そう思ったであろうことを伝えてみる。

 ついでにこの国では初対面の人に声をかける時は爵位が上の者から、呼び方は家名に爵位をつけ、令息令嬢と続けること。

 慣れてきたり親しくなったりしても家名や名前に()付け。但し男性をそう呼ぶときは『そういう関係なのだ』と思われるため、不用意に呼ばないこと。

 平民に対してや私的な場ではその限りではないが「()()」呼びは貴族社会では()()()()()ことを伝えた。

 愛称や名前の呼び捨て等は家族や婚約者などの限られた関係だとも教えておく。


「え、そうなんですか?」


 驚いたようにラフィーがいう。そのまま考え込むような動作の後、シエルを見ていった。


「そんなこと説明してくれる人いなかったので──ありがとうございます」


 既にどなたかに名で呼ぶように言われたのだろうかと考えたが、そこまで口を出すのは控えた。

 どうやらラフィーは家庭教師から食事などのマナーなどは教わったが、基本──幼い頃から生活の中で親や乳母、侍女等に習うことや初等科で初期に教わる知識は教わっていないらしかった。

 男爵夫妻はそもそも彼女が入るクラスは男爵家の子女や優秀な平民の多い下位クラス程度だろうと想定していたし、家庭教師もまさか引き取られたばかりの庶子がAクラスで高位貴族と机を並べるとは思ってもみなかったのだ。

 ラフィーも説明を聞いて自身の対応の悪さを理解したらしい。頭は良いのだ。ちゃんと教われば出来るということだろうと、シエルはほっと息を吐いた。


「じゃあ、友達になったということでシエル様って呼ぶね。私のことはラフィーって呼んで」


 ──問題はベースの価値観が平民と言うことだけだろう。




 シラソル様改めラフィー様をフォローしつつスキルの調査を行う・・・。


(不安しかないわ)


 そう思っていたシエルだったがその機会は意外と早くにやってきた。

 共に過ごしはじめてしばらく経ったころ、テイクアウトのランチを買って中庭で食べていた時にラフィーが突然切り出したのだ。

 その頃には第一王子を含めた男子生徒からの声掛けもおさまってきており、周囲(クラス)がラフィーに侍ることのない高位貴族ばかりという環境もあってか女性陣からの圧も収まってきていた。


「──スキルってあるでしょう?秘密の話なんだけど、私にはスキルがあるらしいの・・・」


 突然のカミングアウトに流石のシエルもたじろいた。

 スキルの内容は勿論、有無すらも人に知られるのは危険なのだ。平民であろうともそのことは知っているはずである。

 教会でも授受の部屋に入る前に信頼できる人にしか話してはいけないと説明を受けるはずだ。


「っ!」

「大丈夫。私、シエル様を信頼しているもん」


 シエルが何を言いたいのか分かったようでラフィーがそう言った。


「私のスキル、『転生ヒロイン』っていうんだけど、教会の授受の部屋で大司教様に自分のスキルに心当たりはありますか?って聞かれて、私、無いって答えたの」


(はい、クソ司教からそのように聞き及んでおります)


 シエルは何も言わずに先を促した。


「──でもあるんだ。心当たり・・・」

「ラフィー様・・・何故・・・」


 シエルはその言葉に驚いて「何故私に話したのか」と尋ねたのだが、ラフィーは「何故大司教に話さなかったのか」と聞かれたと思ったらしい。


「だってあの大司教様、なんか胡散臭かったんですもん」


 眉間にしわを寄せ、ラフィーは答えた。


(それには激しく同意いたしますわ)


 シエルははじめてラフィーの考えに共感した。




 それからシエルは「転生」と「ヒロイン」という言葉の意味を聞いた。

 ラフィーが王太子から不敬に問われることはないというその根拠も。

 ちなみに先日まで平民であったラフィーがAクラス入りを果たしたのは「転生」の部分が原因らしかった。

 そしてシエルにはよくわからなかったが、このスキルの効果は現在の三年生が卒業する日のパーティー終了後までで、厳密に言えば『スキル』ではないと思う、というのがラフィーの見解だとも聞かされた。


 こうして困難と思われた「ラフィー・シラソル男爵令嬢のスキルの調査」という任務は、あっけなく終了してしまったのだった。






 ある日、いつものようにシエルとラフィーが下位貴族用のレストランで昼食を摂っていると、再び第一王子とその側近が現れた。


「やぁ、シラソル男爵令嬢、奇遇だね。少し話したいことがあるのだけど、いいかな?」


 そう言って第一王子がシエルをチラリと見た。シエルに席を外せという無言の圧。

 仕方なくシエルが立ち上がろうとしたところ、ラフィーがその腕を取り視線を向けた。

 その視線の意味は「行かないで」という懇願。

 残ってあげたいのは山々だが、ラフィーは良くてもシエルが王族の意に背くと不敬と取られるのだ。

 立ち上がりそう逡巡していると、場に不似合いな明るい色を含んだ声が響いた。


「殿下。何をしておられるのですか?」


 第一王子の婚約者、フィリー・ワイスハイツ公爵令嬢だった。

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