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墓場と白。  作者: 劣
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39/40

?.本能


死にたい、殺して。

そんな感情でいっぱいになって、

視界の全部が真っ黒に染まっていく。

もうだめだって、今度こそ死ねると。

…そう、思ったのに。


ううん、本当は。

生きれるのなら、許されるのなら。

生きたいと、まだ歩いていたいと思ってしまった。

黒埜コクヤが、居たから。

お姫様のキスでなんて、かっこ悪い王子だなぁ。


「はあっっ!!げほっ…げほげほっ」


「あぁ〜…大丈夫か?」


「大、丈夫、な訳……げほっ」


咳も止まらないし、本当にかっこつかない。

それなのに黒埜コクヤの顔を見ただけで、

どきどきする自分が居て情けないなと思った。

…可愛いから仕方ない。そうだ、僕は悪くない。


何だかキスに対してそこまで気にしない様子の黒埜コクヤ

…え、これって僕普通の反応だよね?

黒埜コクヤが意識しなさ過ぎるだけだよね??

ちょっと1人で不安になった。


キスされる直前を思い出す。

真剣な表情で近付いてきた黒埜コクヤの顔。

黒埜コクヤは自身を嫌って低評価ばかりするが、

僕が出会った人の中で誰より“綺麗な人”だと思う。

汚い大人ばかり見てきたから、かもしれない。

最初はそんな黒埜コクヤを、“偽善”だと思った事があった。

でも“この人なら信用出来るかもしれない”と思った事も確かだった。


最初から確信があった訳じゃない。

ただ一緒に過ごしていく中で、直感は現実味を帯びて。

壁を作っていた黒埜コクヤをもっと、知りたいと思うようになった。

僕に対する冷たい態度も、

傷付けたくないという気持ちがあってこそだと知った。

誰より優しい黒埜コクヤが、誰より大切になった。


黒埜コクヤは僕を綺麗だって言うけど。

僕からしたら、黒埜コクヤの方がずっと綺麗だ。

知れば知る程、 黒埜コクヤという人間に惹かれた。

それはまるで、そうなる事が決まってたみたいに、

僕の心に馴染んだ感情だった。

今考えれば先生もヨウも。

黒埜コクヤの、目には見えない、人を惹きつける力を。

無意識のうちに、感じていたんじゃないかな。


黒埜コクヤが僕に名前にくれたあの日から、

気付けばずっと惹かれていた。

久しぶりに見た景色たちは、どれも眩しかった。

一気に思い出した記憶、時間が経って少しずつ思い出した記憶。

僕は確かに、 黒埜コクヤに救われた。

…本当は、怖かった。忘れていた事を探すのも思い出すのも。


でも、隣に黒埜コクヤが居てくれたから。

思い出さなきゃって、やらなくちゃって思えた。

僕とって黒埜コクヤが心の支えだった様に、

僕にもなる事が出来るのかな。


誰かの、いや。

他の誰でもない、 黒埜コクヤの支えに。


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