Episode8 新しい日常。ときどき不穏
清は、布団から飛び起きた。
そして、自分の頬を思いきりたたく。
清「いてっ!」
もう一回叩こうとしたが、清は叩くのをやめた。理由はわかっていた。
窓からは、暖かな陽気が差し込んでいる。清は大きく背伸びをした。
「ん?」
清はメモ帳の切れ端を見つけた。
清「海斗のものか?」
気づいて!危険なものがすぐ近くにいる。気を付けて。
清は一瞬、海斗からの伝言かと思った。
裏にも何か書いてあることに清は気づいた。
xxxはxxxだ。xxxxxかもしれない。
所々黒く塗りつぶされていて、清は何を言いたのかわからず当惑する。
清「うーん……」
清「海斗に聞いてみるか」
清は男部屋を出て、海斗を探した。海斗はリビングにいて、朝食をとっていた。
清「おはよう」
海斗「おはよう、どうしたの?」
清「これ、海斗が書いたものか?」
海斗「僕はこんなの書いてないよ」
清「みんな違う?誰かのものじゃない?」
その場にいた翔太郎、大助、桜咲、美奈に聞いた。全員「なんだこれ?」という顔をしている。
美奈「誰のものじゃないなら、捨てれば?」
清「そうだね」
清はゴミ箱にメモ帳の切れ端を捨てた。
正「おはよう。清くんも食べるか?」
清「はい……。おなかペコペコです」
正「そりゃよかった。今日の朝食はハンバーグサンドイッチだ」
食パンにハンバーグとトマトとレタスとマスタードをサンドした料理を清は食べる。とてもおいしかったのか、清はどんどん食べるスピードを速めていく。
清「ごちそうさまでした!」
正「案外ペロッ食べたね。そんなにおいしかったか?」
清「めちゃくちゃおいしかったです。料理人ってすごい」
正「そりゃよかった」
清は男部屋に戻った。翔太郎と海斗と、大助は『皿洗いを手伝う』と言い出して、一人だけ部屋に戻った。
清は、また何かに気付いた。
清「またメモ帳?」
xxxのxxxに近くxxx気をつけてxxx影xxxるかも。
一気に気持ち悪い汗が背中からゾワッと出てきた。
清「なんなんだ?」
清はメモ帳を破ってゴミ箱に捨てた。
清「それよりも、これから先どうするかを考えなくちゃ」
大助「ただいま!」
翔太郎たちが部屋へ戻ってくる。
翔太郎「清、君に伝えたいことがあるって凛さんから」
凜は翔太郎たちの後ろに立っていた。
凛「おはよう、清くん。翔太郎たちにはもう伝えたことなのだが、君たちはここで暮らしていくことになる」
凛「それに伴って、主に二つ選択肢がある」
凛「選択肢は二つ。一つはこれまで通り学校に通う方向で」
凛「もう一つは、高卒認定試験を受けつつ、高卒区分のヒーローズ認定試験を受けること」
清「……???」
清は口をあんぐりと開けている。
清「高卒認定はわかるけど……」
凛「急に言われてもびっくりするだろう。それはすまない。すでに清くん以外の人たちは全員二番目の選択肢を選んでいる」
凛「一応伝えるだけ伝えた。どうするかは後日伝えるだけでいい。私でも、正でもここにいる人なら、誰にでも伝えてもいい」
凜は黙々と去っていった。
清「ちょっと、頭が混乱している……」
翔太郎「大丈夫、俺たちがついている」
清「ほかの選択肢はないのか?」
大助「一応あるよ。通信制の高校に入って、ホームスクーリングをするってのがあるらしいぜ」
清「……うーむ」
さっきのメモの切れ端の言葉が頭から離れない。
気を付けて?
何が近くにいるんだ?
影?
清「一度出した答えは修正できるのか?」
翔太郎「可能だと思うよ。こうしなきゃいけないってわけじゃないんだし」
海斗「どちらも地獄っていう、デメリットはあるかもしれない」
清「……どういうこと?」
海斗は、メモ帳に素早くメモをする。
海斗「もし仮に普通の高校を選んだとする。ただし、普通の高校を選ぶと間違いなく日々に忙殺される。並行してヒーローズ認定試験の勉強は不可能に近い」
海斗「逆に、高卒認定試験を受けつつ、ヒーローズの試験勉強をするとなれば、必ずどこかのタイミングで時間が足りなくなる。年齢制限もあるし」
海斗「年齢制限は高校卒業の資格を得て5年以内。そこまでに受からなければ……。って話」
大助「5年もあれば余裕じゃねーのか?」
海斗「いや、そうでもないよ。というか現実問題、高校卒業の資格を得た後にヒーローズのための練習や実施専修をしてくれるところはかなり少ないと思っていい」
翔太郎「つまり、金払って行かないと受けさせてくれないってこと?」
海斗「そう。金払って行くほど費用対効果はあるのかというと、正直微妙なところなんだよね。むしろマイナスの方に傾く可能性すらある」
清「じゃあ、答え修正できないじゃん……。」
海斗「まあ、基本的にそうだね……。残念ながら」
大助「どうするかは、数日後に決めようぜ」
清「そうだな……。」
翔太郎「じっくり考えることは悪くない」
まだ、得体のしれない不安はぬぐい切れないでいた。考えた後は、ただ先に進むしかない。
他サイトで連載していた「Observers第一部」を本サイトに著者自らが転載しています。無断転載ではありませんので、ご容赦ください。




