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Episode1 世界が再定義される

この物語は、なろう系などのスカッとする、カタルシスの強い作品ではないと思っています。

ただ、ヒーローものの「見えていない部分」や「見落としている部分」について書いていく所存です。

この物語はかなり読者様の知的な負担を伴う作品だと、私は思っています。サクッと読むものとは違い、ちょっとカロリーがある重ための作品となっています。

どうぞ、よろしくお願いします。ご感想お待ちしています。

――観測者Qが消えた。

その瞬間、世界がわずかに“揺らいだ”。

概念体たちは、Qが消えてしまったことを確認した。


バルトネス「Qは消えてしまった。存在自体が消えてしまった」

 バルトネス「……名残惜しいな」

攻撃的な概念体のバルトネスは、感傷的になっている。


 イシア「Qが"無明"を観測できたことは非常に素晴らしいと思います」

 本質を問う概念体イシアが棘のある口調で言葉を重ねる。


 イシア「しかし、Qが消えたことでさらなる空席を生んだ責任は重い。これで空席は二つですよ?」

 イシアの口調に少し怒気が入り混じっている。


冷静沈着な概念体ネロウはイシアに向けて、落ち着いて話す。


 ネロウ「確かにそれも大事なこと。それよりも疑問に思いませんか?」

 ネロウ 「Qは間違った観測をしてしまったのでは?」

ネロウ「つまり、名和永夜の正体は、並行世界の調整役です」


 バルトネス「そんなバカなことがあるか!この腑抜けが!」

 攻撃的な概念体バルトネスは薄々何かに気づいている様子だ。


ピラクティス「Qが見誤るなんて、ありえない!」

直感を信じる概念体ピラクティスも、ネロウの意見を否定する。


ネロウ「おや……?」

ネロウ「何か感じませんか?」


ネロウは観測者全員に問う。

バルトネスとピラクティスは何も感じていないようだ。

しかし、イシアは気づいていた。

イシア「どうやら、”ズレている”ようですね……。」


イシアの声はかすかに震えていた。


ネロウ「方向はわかりますか?」

ネロウの口調が徐々に少しずつ荒くなっている。


イシア「方向はわからないですが……」

イシア「どうやら、お客さんが来たようです」


「やっほー、いい話してんじゃん」


空間が“波打つ”。この世界に存在しないはずの声が、そこにあった。


バルトネス「誰だ、こいつ……!」

バルトネスは怒気の入った声を放つ。


「こんにちは? いや、おはよう? あれ、まだ寝てた? まあどーでもいいか。やっと話せる気がしてさぁ」


彼は軽快な言葉で文章を紡ぎ出す。


イシア「純粋な疑問ですが、観測の権限がないのにどうしてあなたがここに”入ってこれた”んですか?」


イシアは、探りを入れた。

謎の概念体は黙秘を貫く。


イシア「あなたは、6つの世界を観測する権限は持ってないはずですよ?」


ネロウ「とりあえず、あなたのことを仮にオルビスと呼びましょう。」

ネロウ「あなたがここに入れた理由は『Qが持っていた観測可能の権限を奪ったから』で間違いないですか?」


ネロウは確信に満ちた声で言う。


オルビス「ビンゴ!いいね、その調子!」


オルビスは観測者の感情を逆なでする。しかし、イシアとネロウは微動だにしない。


バルトネス「観測の権限を持ってるだと!?ふざけるのも大概にしておけ!」


バルトネスは怒りを露わにした。しかし、オルビスは何も答えない。


ピラクティス「どういうこと?彼も観測者なの?」

イシア「違います。彼はもともと観測者ではないはずです」


ピラクティスの疑問にイシアが答える。


ピラクティス「え?じゃあ、オルビスは理の選別を受けた?」


オルビスは首を横に振る。そして、不敵な笑みを浮かべる。


イシア「つまり、こういうことです」

イシア「オルビスは不正ルートでQの観測権限を奪った。そう考えるのが自然です。」


オルビスは薄気味悪い表情をして、ニヤリと笑った。


オルビス「いいね。ダブルビンゴ!!」


オルビスはまた観測者たちを煽ってみせるが、観測者たちは動じない。


バルトネス「名和永夜を知っているんだったら、話は早くなる。あいつは、並行世界の調整役で、無明の支配者はお前なんだろ?」


バルトネスはオルビスに矢継ぎ早に質問をする。


オルビス「トリプルビンゴ!!いいね~、ますます盛り上がってきてるね!」


バルトネス「……ネロウの話は本当だったのか」


ネロウ「要は緊急事態です。それ以外ありません」


ピラクティスはオルビスに少しの恐怖を覚える。


ネロウは心象世界で最悪の未来を推定する。


オルビス「もう、俺はチーターだよね?」


ネロウ「いいえ」


オルビス「はあ?」


イシア「あなたは気づいていましたか?」


オルビス「何がだよ」


イシア「どうやら、あなたの作用すらも上回るものをまだ知らないようですね。」


オルビス「……?」


オルビスはまだ、それを感知できていない。


イシア「あなたは劇の中に突如現れた演者にすぎないのですよ」


ピラクティス「あ、私も感じる!これが寒気……。」


イシア「まだわからないのですか?」


オルビス「嘘を言うんじゃねえよ」


ハッタリをオルビスはかますが、それは通用しない。


バルトネス「未知の生物が現れたとき、勝者と敗者が決定される。」


ネロウ「それこそ、すなわち真なり」


イシア「ここまで言ってもわからない?異端としてあなたは失格なのではないですか?」


イシア「あなたは劇の完成に必死。しかし、考えてみてください。劇の会場全てを見渡す目があったなら?」


ネロウとバルトネスとピラクティスとイシア「もし、私たちと理の間にもう一つの存在がいたとするなら?」


オルビス「……そんなのありえるわけねえ!嘘つきが!」


オルビスの焦りに恐怖が混じる。


ネロウ「その名を冠し、───。」


イシア「定義とはすなわち、個体の解釈を基点とする」


定義:不明


かつて、この世界には干渉者、観測者、鑑賞者。そして、理が存在した。理の一瞥、それは世界の構造に触れること……。


定義:不明。


定義:もう一度、やり直す。


定義:もう一度やり直したい。


定義:再定義中――。


世界は定義されていく。何者かの意思によって。


*** --再定義した先の世界で--


宇宙飛行船の中で清、翔太郎、桜咲、美奈、大助は宇宙の海をまじまじと見つめている。


清「いまさっき起きたばかりだろ。翔太郎。眠くないのか?」


翔太郎「ちょっとだけ。まあ、大丈夫。」


美奈「ずいぶん寝ていたけど、まだ眠たいの?」


大助「俺は24時間寝たい!今すぐにでも寝たい!」


桜咲「でも、さすがにそういうわけにはいかないでしょ。ほら、朝食を食べに行くよ!」


桜咲に手を引かれるがまま、清たちは宇宙船内の朝食会場へ足を運んでいった。


朝食会場に着き、決められた席で朝食を堪能する。


五人「いただきます!」


清はまず、サバの味噌煮を口にする。


あれ、なんで魚なのに肉の味がするんだ……?


謎の違和感を無視して、清は朝食を食べ進めるのであった。


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