第61話 滲み出た魔力
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
「あれ?静かだな?どうなってる?」
空を見上げる。
「まさか日時の設定を間違えたとか……」
「リックゥ〜!!」
「エレーナ!」
振り向いた瞬間、抱きつかれる。
「貴方、渦に飲まれて消えちゃったから……心配したのよ」
「前にいた世界に飛ばされたんだ」
「転生前の?」
「そうだよ。でもその話はまた後で……
俺が飛ばされて、
まだそんなに経ってないと思うんだけど、
邪神は?」
「貴方が飛ばされた直後、あいつも消えたのよ!」
「消えた?」
「多分……貯め込んでた聖女の魔力を、
取り込みに戻ったんじゃないかって。
みんなそう言ってる」
リックの顔が曇る。
「カイゼル。それ間違い無いのか?」
悪魔の王は腕を組む。
「多分な。お前との戦いでかなり魔力を消費したし、
俺たち悪魔も寝返って味方もいなくなって……
さらに力をつけようと思ったんじゃ無いかな?
あいつ、凄く用心深いやつなんだよ」
「そうか……それってさらに強くなるって事だよな?」
「聖女の聖魔力を取り込むとすれば、
少なくとも10倍以上……」
「まじかよ……」
額を押さえる。
「それだけじゃない。
奴は、S級の魔物を人サイズに改造して、
大量に保存してる。あれが目を覚ましたなら……」
「何それ?大量ってどれくらい?」
「少なくとも2〜3万……」
「遺伝子操作してクローン化しているのね」
突然話に入ってくるアステリア。
「あ、母さん……」
「貴方もしかして、向こうの世界に飛ばされてた?」
「うん、母さんのおかげで戻ってこれたよ」
「宝魔石使ったのね?つまり海斗さんに会えたのね」
「その話はまたいつか……」
「……女神様……今のお話はなんなんですか?」
「ああ、ごめんなさい。
遺伝子操作とかクローンのことね?
颯斗のいた世界の進んだ科学のことよ」
「よくわかりませんが……S級が2〜3万って、
絶望的なのでは……」
「やばすぎる……
俺もう一度ガードナーの迷宮に潜って、
力をつけてくるよ。
今なら数日で最下層まで行けるんじゃないかな?」
「何言ってんだよ?そんな余裕ないと思うぞ」
「バカね?颯斗。
今更迷宮で魔物を倒しても、
貴方には大して効果はないわよ?」
「効果がない……確かにそうかも……
じゃあ、母さん、何処か修行できるとこ知らない?」
アステリアは微笑む。
「創造神様……
もうそろそろよろしいのではないですか?」
「うん……そうじゃな?期は熟したかもしれんな……」
白髭の老人が、いつの間にかそこに立っていた。
「だ、誰?そのお爺さん?」
「私を生み出してくれた、この世界の創造神様よ」
「え?生んだの?お爺さんじゃなくてお婆さん?」
「ふぉっふぉふぉふぉ……生み出したと言っても、
人の様にお腹を痛めて産んだ訳じゃないからの。
魔力で生み出したものじゃから……
見た目も、お婆さんじゃなくお爺さんじゃな」
「えっ……と……母さんの生みの親?
だったら……俺のおじいちゃん?」
リックの目が輝く。
「うむ……そうとも言えるの」
「おじいちゃん!リックです。
会えて、めちゃくちゃ嬉しいです!」
勢いよく頭を下げる。
「あらリック、創造神様に、
そんなに会いたかったの?」
アステリアが笑う。
「創造神様だからじゃないよ。
向こうの世界でも、おじいちゃんおばあちゃんは、
俺が生まれる前に飛行機事故で亡くなっていて……
俺、友達とか皆んなには、
おじいちゃんおばあちゃんがいて、
羨ましかったんだよ」
「ふぉっふぉふぉふぉ……
そうじゃな、リック、おまえはわしの孫じゃ。
孫は子どもより可愛いと言うが、本当じゃな。
お前は変に畏まったりせんから、
余計に可愛く思えるわい」
「へへへ……ねえ、母さん。
そろそろ宜しいって何の事?
さっきそう言ってたでしょ?」
アステリアが頷く。
「ああそれね……
貴方は創造神様をも上回るほどの、
魔力を持って生まれたの。
聞いたかしら?貴方のお父さんーー
海斗さんも向こうの世界の神の末裔だって。
異世界の神のDNAが掛け合わされて、
とんでもない魔力量を持って生まれたのよ。
向こうの世界には、魔法というものがないでしょ?
貴方を導ける人が居ないから、
万が一暴走でもしたら、
地球が吹き飛んでしまうかもしれないというので、
創造神様が、魂の一部を使って、
貴方の魔力に封印を掛けたのよ」
「でも俺魔法使えるよ?
封印したって言うけど、
魔力量もこっちに来てすぐから、
規格外だって言われるほど多かったんだけど?」
「その魔力は、
封印していた結界みたいなものから、
滲み出た魔力ね」
「あの……女神様……
本当にあれが滲み出ただけの魔力なのですか?
だとしたら……リックの総魔力量って……」
エレーナが青ざめる。
「創造神様を遥かに超えてる様ね?」
創造神が苦笑する。
「うむ。正直、わしも少々驚いたよ」
「ああ、それと……エレーナちゃん、
私の事はお母さんって呼んでくれるかしら」
「えっ……お、お母様……ですか?」
「そうよ、貴方、颯斗のお嫁さんになるんでしょ?
だから……もう一度ちゃんと呼んでみて」
「お……お母様……」
「あ〜ん!良いですね創造神様、
お母様におじいちゃん……」
「じゃな……実に嬉しいもんじゃな家族と言うのは」
「え〜と……もしもし?」
リックがチョコっと手を挙げる。
「 2人とも……話を戻して……
って事は、封印を解いてくれるって事?」
「うむ……奴が現れる迄、少しだけ余裕があるはずじゃ。
ただし、神界で使い方に慣れる必要があるな」
「どれくらいで慣れるかな?」
「それ程の魔力じゃからな……
普通なら1000年程はかかるじゃろうな」
「えっ?1000年?生きてないな……」
「フォフォフォ……普通ならじゃよ。
リックなら数ヶ月で大丈夫じゃろ。
しかもわしが指導するんじゃよ?」
「創造神様……お言葉ですが……
奴は早ければ数時間……
遅くとも2〜3日で戻ってくるかと……
初めての事で正確には判らないけど、
それくらいの時間があれば、
完璧になれるだろうと言っておりました」
「おお、カイゼルじゃったかな?心配には及ばんよ?
神界には時間の観念が無い。
何年掛かろうと、今この瞬間にさえ戻れる。
何なら1年前にさえな。
リックのいた世界で、
アインシュタインがいうておったじゃろ?
物理学の相対性理論では、
過去・現在・未来の全瞬間が等しく実在する……
とな。同じじゃよ」
「ハハハ……ごめん……全然わかんないや。
でも、間に合うって事だよね?」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




