最終章「真実」
ここ・・・は?
辺りは真っ黒だった。
何も見えないわけではない。
ただ世界が黒いだけ。
「ベルゼブ、どこだよここは・・・」
「・・・」
ベルゼブも答えられないのか・・・?
ここはホントにどこなんだ・・・?
全てが終わったんだ。
だから俺は現実世界に戻れるハズなのに・・・。
まだここは夢幻世界のようだ・・・。
「来たか・・・」
「!?」
不意に聞こえる声。
気がつけば目の前に一人の男がいた。
「お、お前は・・・」
見覚えのある顔だった。
いつも見ている顔。
「ベルゼブ!?」
巨大なベルゼブがそこにいた。
いや、巨大というのは不適切かもしれない。
普通の人間と同じサイズのベルゼブが目の前にいたのだ。
「どういうことだよベルゼブ・・・」
「私は本体ではない」
は?
「私はそこの本体からコピーされた偽のパートナーだ」
「んじゃそこにいるデカいのが俺の本当のパートナーってことか?」
「それは違う」
「じゃあどういうことだよ!?」
イライラしてきた。
訳わかんねえよ。
「そいつは、俺のパートナーだ」
もう一人男の声。
何なんだよ次から次へと・・・!
デカいベルゼブの横に現れた男にも見覚えがあった。
というか見覚えがあるとかないとかそういうレベルの問題じゃない。
「・・・俺?」
河合晃。
今の俺、美奈の姿ではなく正真正銘俺の真の姿。
「どういうことなんだよおいッ!」
「こういうことだよ」
目の前の俺は冷静に答える。
「お前は偽物ってことだ」
「んな・・・・!?」
「ざけんな!俺が本物だ!お前が偽物だろ!どう考えても!!!」
「お前は俺じゃない。だから偽物ですらないな」
「何なんだよお前!どういうことなんだよ!?」
「お前は俺が夢幻世界に連れ込まれた際に偶然できた俺のコピーだ」
うるさいうるさいうるさいうるさい
「正確には俺の記憶の一部がコピーされてできたものだ」
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい
「何で姿が姉さんなのかはわからないが・・・」
・・・。
姉さん?
「待て、俺に姉さんなんていたのか?」
「それがお前がコピーである証拠だ」
「・・・」
「お前は俺の全てがコピーされているわけじゃない。ほんの一部だけだ。性格とか、そんぐらいだな」
妙に説得力がある。
アイツが嘘を言っている可能性だってあるのに、否定できない。
まさかホントに俺は・・・
「だからお前は姉さんのことも覚えてない。他にも俺自身、河合晃について知らないことが多いハズだ」
考えたこともなかった・・・。
俺の生年月日は?
年齢は?
家族構成は?
わからない・・・。
「たまたまコピーされた俺の記憶の一部が俺の描いた姉さんが今も生きていた場合の姿に入り、お前が誕生したってことだよ」
「じゃあ、お前の姉さんの名前は・・・」
「河合美奈。幼少の頃に事故で死んだ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・!?
あ、そうか。
そういうことか。
全部わかった。
前に行った俺の過去のような世界。
あのセカイデ、ヒトリダレダカワカラナカッタショウジョガイタナ
アレガカワイミナ
カワイコウノアネ
オレニワカルハズガナイジャナイカ
ダッテオレハ
「コピーナンダカラ」
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「お前の見てきたものは全て俺にも伝わっている。由愛やリベリアと戦っている時に何度かベルゼブの力で中に入ろうと思ったんだが・・・。強い力で防がれてた。だからベルゼブのコピーを通じて俺と本体のベルゼブの力を送るくらいしか出来なかったんだ・・・」
カワイコウハタンタントカタッテイル
「じゃあな、コピーされた俺。もっと早く消しておけば、お前をこんなに苦しませなくてすんだのにな・・・。すまない」
キエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイ
目が覚めたら、そこはベッドの中だった。
全てのことが嘘だったように感じる。
ただの夢だったんじゃないか?って今も思う。
だけどただの夢なんかじゃない。
俺は確かに夢幻世界に行った。
それは事実。
何故なら実際に俺のクラスの親友が一人、ベッドの中で眠るように死んでいた。
当然泣いたし、葬式にも行った。
助けられなかったことが本当に悔しい。
そいつが要だった。
それが証拠だ。
それに、あの後調べてみたところ、俺の住んでる町の近くの養護施設で大城由愛って女の子が眠るように死んでいたことについて書かれた新聞が見つかった。
流石はマスコミ、苗字をちゃんと調べてるな・・・。
その女の子が夢幻世界であれだけのことをし、俺が今暮らしている世界が大変なことになりかけていたというのに、世界は何事もなかったかのように回っている。
だから俺も何事もなかったかのように暮らす。
何事もなかったかのように・・・・・・
終
ここまで読んで下さった読者の皆様、ありがとうございました。
連載を始めて半年間、続けることができたのは皆様のおかげです。
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本当にありがとうございました。