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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第3章 帝国編
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永遠の始まりと狂った日常3

 そこから先は何をしてもダメだった。これじゃ昨日と同じだ。

 ううん違う昨日じゃない、前回の今日だ。私以外誰も覚えてないのに、私だけが記憶を残して同じ一日を繰り返している。

 そんなアニメちょっと前に流行ったな。でもあのアニメは繰り返される時間が、一週間くらいあったよね。一日じゃ何もできないよ!

 絶望的な気分のまま思い出す。不自然な眠気、あれが切り替わるタイミングなんだ。あれはいつ訪れる?

 パソコンの時計をじっと見つめて恐怖のカウントダウンを始めた。

 いつ? ねえいつなの? 時計が0:00を表示した瞬間意識が飛んだ。つまりそれが二度目の今日の終わりなのだ。



 朝また目を覚ました。また両側にエドとアルの姿がある。

 これで三度目の今日。今度は安心なんてできない。これは仮初めの幸せにすぎない。今日の夕方アルはこの世界からいなくなってしまう。そう思うと涙があふれて仕方ない。

 目を覚ましたエドが驚きの表情をする。


「どうした? なぜ泣いている?」


 説明なんて簡単にはできない。したところで今日が終わったら忘れてしまうのだ。2度もアルを失った喪失感を共有してくれる人は誰もいない。私だけなんだ。


「なんでもない。ちょっと悪い夢を見ただけ」


 そうまるで悪夢のような現実の繰り返し。覚悟していても、アルが消える瞬間は胸が痛い。あと何回この苦しみを味わえばいいのだろう。

 こうして私の真実の孤独な戦いが始まった。今までみたいに誰かに庇ってもらって、背中で見ているだけなんてできない。私にしかできない戦い。私が諦めたら本当に終わってしまう戦い。


 焦る私は朝食の時間も惜しんで『始原の家』へ向かった。パソコンを立ち上げると、まだ完結されておらず、最終投稿もされていない。次話投稿も可能。修正も可能。

 まだ間に合う。私は『大災害』を食い止めるために、どんな方法が考えられるか必至に考えた。

 でも時間は刻々と過ぎていく。パソコンに表示された時計の時刻が、やけに早く進む気がした。

 世界のどこかで『大災害』を止める呪文の開発。すべて悪夢でしたの夢落ち展開。ジルの書いた小説みたいにこの世界を管理する図書館の存在とか?

 どれも超展開過ぎて無理がある。


 どうする?どうすればいいの?どうしよう?考えても考えても思い浮かばなくて、焦るばかりで、これでは前回と同じだ!

 そして時刻が18:35になった時、また私の首から首飾りが消えた。


「ア、アル……アル!」


 突然叫びだした私に驚いてエドが駆け寄る。


「どうした? 何があったのだ? 明しっかりしろ」


 私は泣きじゃくるばかりで、何も説明が出来なかった。説明したってまた次の朝が来れば忘れてしまう。私の孤独な戦いを真に分かってくれる理解者なんていない。


「……なんでもない」

「そうか……話せないことなら、言わなくてもいい。ただ、私はずっと明の側にいる」


 エドの励ましに癒されて、私は涙をぬぐってまたパソコンに向かう。しかし呆然と時は過ぎていく。前回と同じ。もう完結された世界に私は手出しできなかった。そしてまたやってくる強烈な睡魔。

 嫌だ。もうこんな繰り返しうんざりだ。本当に気が狂いそう。


 寝覚めはすっきりしているのに、気分は最悪のまま朝を迎えた。4度目の朝。焦っても意味がないことをやっと悟る。何も対策のないまま『始原の家』に行っても結局タイムオーバーになるだけ。どうすればいいのか? その問いの答えを見つけなくちゃ。


 私は朝ご飯も禄に喉が通らず、ぼんやりと眺めながら考えた。

 何度同じ今日を繰り返さなくちゃいけないんだろう? それをいちいち数えていたら、気が狂いそうだ。だから数えるのはもう辞めよう。

 あの夕方18:35頃の最終投稿。あれがタイムリミットだ。あれが投稿される前なら、次話投稿も編集もできる。でもあの後はいっさい私は物語に手出しできなくなる。


 原因があのストーカー信者のせいなら、小説家になろうの方から、ブロックできないだろうか?

 そう思って運営にIDとパスワードを乗っ取られたと相談してみたが、一日で返事が返ってくるはずもなく無駄だった。

 無駄に一日を過ごしてしまった。永遠にこの一日が繰り返されるなら、たかが一日なのかも知れないが。

 それでパスワード変更をしてみようとしたがそれも出来なかった。

 結局物語を書くことでヤツと戦うしかない。同じ時間を繰り返すために考える時間はいくらでもあった。でも書く時間は最終投稿されるまでの半日だ。すべて考えて半日で決着をつける。それしか方法はない。

 問題は半日で書ける文章量ですべてを解決できる方法があるかという事だ。 


 そうやって試行錯誤しているうちに何日も何日も経過していく。同じ事の繰り返しに自分の心が狂い麻痺していく。しかしアルの顔を見るたびに、締め付けられる苦しみは決して消えなかった。

 アルの存在をこの世界から消してはいけない。ただそれだけを支えに私の長く孤独な戦いは続いた。

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