永遠の始まりと狂った日常2
私のせいだ。そうやって自分を責めて自己憐憫に浸っている中、ジルは容赦なく私を現実に引き戻す。
「そうやっていても何も解決しませんよ。またアルフレッド様のような被害者が出るだけです。それでいいんですか?」
冷たいような厳しい言葉に、私は顔を上げて思いきりいった。
「よくないよ。こんなのダメに決まってる」
ジルは私の両肩をつかんで真剣に言った。
「だったら自分にできる最大限の事をするしかない。ここで泣いている事が明殿のすべきことですか?」
かなり強引な方法だったと思う。でもアルを失った悲しみでぽっかり空いた喪失感を、ジルは使命という形で埋めてくれた。私は自分の涙を手の甲でぬぐってジルを見返した。
「私負けない。絶対にこんなひどい事するヤツなんかに負けない」
アルがどれだけキザで馬鹿で、でも優しくてちょっとヘタレで、強がってばっかりで、でも本気で私の事思ってくれた事。こんな思い物語の外側で見ているだけのやつなんかにわかるもんか!!
私は怒りにまかせてそのままエドを連れて『始原の家』に向かった。日が暮れた森は危ないと言われたが、私の勢いに負けたようでエドは案内してくれる。
たどり着いたその家でパソコンを立ち上げてサイトを確認した。すると『異世界創造神は女子高生』が完結済み設定になっていて、最終投稿が今日の夕方18時半頃にされている事がわかった。
おそるおそる確認すると今日の出来事、特にアルが消える瞬間が克明に描かれていた。
『愛する王子を失って、嘆き悲しむ明。だが不幸はこれが終わりではなく始まりだった。世界は歪み時間が狂って、王子がいなくなるその1日を永遠に繰り返す。その辛さに耐えきれず明は少しづつ狂っていくのだった。 終』
エンドマークで締めくくられた物語があまりにもひどすぎて、私は吐きそうなほどむかむかしてきた。何が少しづつ狂ってくだ。冗談じゃない。人を弄ぶのも大概にしろ。こんなどこかのアニメをパクってきたような三流以下の物語、私が絶対認めない。
まずは完結済み設定を解除して……。そう思ったのに、ちゃんと手順を挟んだはずなのに、完結済みが解除されない。
そんな……このままじゃ、次話投稿もできない……。
せめてアルが消える物語を書き換えられないかと思ったが、なぜか編集モードに切り替わらない。
完結解除もダメ、編集もダメだなんて、どうすればいいのよ! イライラしながら色々しようと苦労しているうちに、なぜか急に猛烈な眠気に襲われて一気に意識を失った。なにこれ……。
寝覚めはやけにすっきりしていた。目を覚ますと私はエドの家の一室にいて、昨日の朝と同じく、隣にエドとそしてアルの姿があった。驚きと供に嬉しくて涙がこぼれる。
アルが寝相が悪く布団からはみ出す姿さえ愛おしい。しばらくするとアルが突然むくりと起き上がり言った。
「腹が減ったな」
あ、あれ? なんか前にも見た光景? 違和感を感じつつも何ともないアルにほっとして私はその事実を見なかったふりをした。アルが消える……。あれは夢だったんだろうか?
誰もその事を口にしないのが不思議だ。
その後ジルも交えて朝食になった。その日の朝食も納豆が出た。
「なんだ! これは。変な匂いがするぞ」
「腐ってますね……これ」
初めて見るかのような様子に不審に思っていった。
「昨日もでたじゃない」
「初めて見るぞこんな変な物」
アルに言われてもしかしてと気づく。さっきからみんな昨日と同じ行動、同じ言葉しか言ってない。もしかして……。
「ねえ。エドの部屋で三人で寝たのって一晩だけ?」
「あたりまえだ」
何をいっているんだ? という不思議そうな顔をするアル。その言葉にわなわなと箸を取り落として震える。
『王子がいなくなるその1日を永遠に繰り返す』
昨日見たあの文章が頭の中に沸きあがって、気分が悪くなった。私は食事中だというのにエドをせき立てて、『始原の家』に向かった。パソコンをチェックするとまだ『異世界創造神は女子高生』は完結済みになっていなかった。昨日のおかしな文章もなかった。
ほっと安堵するのも束の間、いつ書かれるかわからないと慌てて私も書こうとする。でも慌てれば慌てるほど頭が混乱して何も思いつかない。
どうしていいかわからず頭を抱え、混乱したまま時だけが過ぎていった。
そしてその時がきた。今まで当たり前にあったものが突然無くなる違和感。首の辺りがスースーするのだ。首を撫でるとあるべき首飾りが無くなっている。慌てて辺りを見渡すがどこにも落ちていない。落ちるはずがないのだ。魔法でつなぎ止められていたのだから。
パソコンを見ると、書いてないのに更新されていた。パソコンの時刻は18:35。それがアルのいなくなる時刻だった。




