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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第3章 帝国編
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戸惑いの日々と不思議な家1

 扉を開くとその向こうはまっくらだった。おそらく上部まで箱のように覆われ、太陽光が遮断されているためだろう。帝は手許の明かりで出てすぐの壁辺りを照らして触れた。その瞬間扉の向こうは明るくなり、中の様子がわかるようになった。


 私は2重の意味において驚いた。

 一つは今帝がしたのは、電気のスイッチを付けて照明を付けたという事である。京の街にある街灯はガス灯で、いまだこの世界で電気製品を見ていない。にもかかわらずここには電気設備と電気があるその事に先ず驚いた。

 そしてもう一つは中にあった家である。それはどう見ても現代日本にありふれた一戸建て住宅だった。これが『始原の家』ならば200年は経過しているはずなのに、どう見ても建てられて数年ほどの真新しさだ。


 エドは家については珍しそうに眺める程度で、照明の方に強く注目していた。


「これはどういう仕組みだ?」

「電気が流れているという事はどこかに発電施設があるって事じゃないの?」


 帝は微笑を浮かべて首を横に振った。


「残念ながらまだ我が帝国において発電施設は開発されておらぬ。未だ研究途中じゃ。ここは特別な空間だと思って欲しい」


 発電施設がないなら、この明かりはどうやってつけているのか? 不思議でしかたなかったが、帝はそれ以上説明せず中へ入るように進めた。

 箱の中に入り玄関の前に立つ。玄関の鍵を開けて中に入ると、中もまたごく普通の日本家庭を彷彿とさせる内装だった。少々調度品が少なく生活感に乏しい程度で、それ以外に不自然な点はない。

 あまりにリアルな現在日本家庭の姿に驚いた。私はおそるおそる靴を脱いであがり廊下を歩く。リビングとおぼしきところの扉を開けて、中を見るとやはりごく普通の家だった。

 電気のスイッチを付けると照明がついた。そこで私はもしやと思いキッチンに向かう。

 蛇口はノブを上げ下げ式の物でノブを上げると蛇口から水が出た。左に動かしてしばらくするとお湯が出る。

 蛇口を閉めてコンロを見る。ガス式のコンロだ。ガスの元栓を開けてスイッチを押すと、ガス特有の匂いが一瞬漂って火がついた。


「……なんだそれは。なぜ水や火が出る? 魔法か?」


 エドが背後から不思議そうに問いかける。だが私はその問いに答える余裕がなかった。水道・ガス・電気、ライフラインの3つがこの家には揃っている。しかもエドの反応からしてこのような技術は現在の帝国には無いものなのだろう。

 だとしたら……。私はリビングを見回して電話を探した。しかしそれらしき物は見あたらなかった。現代日本だと携帯が普及しすぎて、固定電話を引いてない可能性があるか……。

 心臓の鼓動はどくどくと早くなる一方なのに、頭の中は妙に冷静に現状分析をしていた。まるで体の中で二人の私がいるみたいだ。


「この家に電話はない。だが別の通信設備ならあるぞ」


 帝はまるで私の心を読んだかのように、先回りをして答えた。電話ではない通信設備……そこまで考えて、以前魔導具で帝と話した時の事を思い出した。


「創造神様が本当の作者でいっらしゃるならば、当然ユーザIDとパスワードをご存じで、ネット環境があればログイン可能ですよね」


 あの時の問い……。まさかと帝を見るとゆっくりと歩き出した。リビングを出て廊下の突き当たり。扉を開けると小さな洋室があった。

 そしてそこには予想通り、デスクとパソコンが置かれていた。エドはすでに置いてけぼり状態だったが、質問する無駄を悟ったのだろう。私の行動を見守っていた。私は震える手でパソコンのスイッチを押す。起動音とともにカタカタと動き出す音がして、ディスプレイが明るくなる。

 エドの息を飲む声が聞こえる。帝の視線を背後に感じる。妙に感覚が鋭くなっていくが、私の意識は完全にパソコンに向かっていた。


 立ち上がったパソコン画面を見てデスクトップ上のアイコンを探す。見慣れたブラウザソフトのアイコンを見つけマウスでクリックした。

 しばらくしてGoogleのトップページが表示される。試しに検索窓に文字を入力してみる。


『小説家になろう』


 クリックしてしばらくすると『小説家になろう』のサイトが現れた。それを見た瞬間私は驚きのあまりその場に座り込んでしまった。

 なんで? どうして? 200年前の建物なのにインターネット回線が繋がっている。しかも現代日本と繋がっているのだ。

 顔を上げてエドと帝を見る。現代日本に戻ったわけじゃない。彼らはそこにいる。ならばこの場所が異常なのだ。まるで現代日本を切り取ってこの世界に持ってきたようだ。

 私は衝撃のあまりしばらく固まってしまった。

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