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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第1章 聖マルグリット編
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神々の謀4

「女神からのお呼びとは嬉しい。何のご用ですか?」


 久しぶりに見たアルは、またかっこつけたキラキラ笑顔で微笑んできた。


「アル、以前妾の命令なら従うと言うたな」

「ええ。あなたのお望みなら」


「ならば、妾の行く所についてまいれ。そなたに供に来てほしい」


 神っぽい尊大な態度に、少し甘えるような素振りを混ぜて片手を差し出してねだってみる。

 アルは嬉しそうに微笑み、肉食獣のような獰猛な目で見つめながら、私の手を取った。

 ダメだ、この熱視線に鳥肌たちそう。手のひらを指先で撫でるな。


「もちろん、女神と一緒ならどこへでも、眠れぬ夜は添い寝でも」


 他の女の子だったら、こういう美形に甘く囁かれたら、騙されそうだけど。

 私笑っちゃうんだよね。何バカ言ってんの?ウケるー!とか思っちゃう。笑わないようにこらえてたら手が震えた。アルは私がアルに好意を持ったと勘違いしてそうだな。


 いい気になってるアルを突き落とすように、上目使いで微笑んだ。エドには悪魔の微笑みと言われたが、アルはまだ気づいていないようだ。これが私の企み顔だとは。


「では碧海帝国へ行くのでついてまいれ」

「……は?ご冗談を。あの鎖国国家に行かれるわけが……」


「碧海帝国の帝にはアルも含めて入国許可は取ってある」

「……もし、本当に帝国が許可したとしても、あのような怪しい国に行くなど、父上が許しはしない」


「フランツ王にはアルを連れて行ってよいと許可は取ってあるぞ」


 アルは怖い笑顔を浮かべながら、私の手を強く握りしめた。


「そんな話聞いてはいません。確認してまいります」

「その時間はない。急ぎ出立せねばならぬ」


「は?旅支度もせずに、いきなりいくおつもりですか?」

「そなたの荷物も準備はできておる」


「……女神よ。王族の旅というのは、そんな簡単に準備できるものではありませんよ。供を選ぶだけで時間がかかるもの」

「それは大丈夫だ。今回アルは供をつけずに参れ。アルは私の供だからな。ああ、身の回りの世話は帝国の者がするので気にせずともよいぞ」


「そんなバカな話通用するはずが……」

「それが、帝国側の出した入国条件じゃ。フランツ王も了承しておる」


「……そんな」


 アルは私の手を放して、呆然としていた。いきなり未知の帝国行くから、はいそうですかと納得するとは思ってない。むしろこの混乱につけ込む。


「案ずるな、妾が一緒じゃ」

「私の預かり知らぬ所で勝手な事を」


「アルも妾に『大災害』の事を隠そうとしたり、フランツ王が妾を嫌ってると嘘をついたりしたな。おあいこじゃ」


 アルが思い切り不機嫌な顔をした。自分はワガママしたいのに、相手がワガママ言ってくると不満になるって、どれだけ子供なんだか。

 そんなお子様にはアメとムチだ。


「一緒に来てくれるなら、妾の大切な秘密を話す」


 アルは怖い顔のまま、体だけピクリと動かした。


「そんな事で私が納得するとでも?」

「妾はよいぞ。そなたがどうしても行きたくないと言うなら……エドと二人で行くとしよう」


「……」

「その秘密はエドも知っておる。妾はエドを信用しているからな」


「私は信用できないと言うのですか?」

「妾についてくると言ったのにその約束を違えるような者を信用できるか」


 アルの顔に迷いがあった。エドへの対抗心と帝国という未知の国への不安で揺らいでいるように見えた。


「アル。そなたなぜフランツ王が帝国行きを許可したと思っておる。他国人の入れぬ帝国を視察する好機ぞ。聖マルグリット王国の親善大使として堂々と行くべきなのだ。それを臆病で逃げ出すなど、とても次期国王の器ではないな」

「それ以上は女神の言葉でも許しませんよ。いいでしょう。帝国だろうとどこだろうとお供いたします。その代り覚悟なさってください。旅が終わるまでに、あなたの心を掴んで見せる」


 アルの闘争心に火をつけてしまったようだ。神じゃないんですって言いだしづらいな。怖いな。とりあえず先延ばしの方向で。


「ではさっそく着いてまいれ。もう旅支度はできている」

「女神よ。あなたの秘密についてお話しください」


「旅は長い。退屈しのぎに話してやろう」


 私は逃げるように部屋を飛び出した。部屋の外には朱里が帝国の兵士を連れて待っていた。エドが万一の時のために、入口で控えていてくれたのだ。


「女神よ!お待ちください!……。ほう帝国の兵士を連れてお出迎えとはずいぶん物々しい。同盟国の親善大使を兵士連れで連行する気か?」

「ご無礼失礼いたします。アルフレッド殿下。この兵士達は今後殿下と創造神様の護衛を務めさせていただくものでございます。ご挨拶に伺いました」


 朱里はアルの気迫に負けじと、意外とはっきりと立ち向かった。まだあどけなさの残る容姿に、凛々しい表情がなかなかいい。よく出来ましたと頭なでなでしてあげたいな


「では、我々を案内してもらおうか」

「かしこまりました」


 アルに対抗しつつも恭しい態度でお辞儀をする朱里。しかも後ろの兵士達に指示を出している。朱里ってただのエドの従者じゃないの?なんか命令する立場って意外に偉いのか?

 疑問に思いつつも私達はエドの元へ向かった。

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