表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第1章 聖マルグリット編
26/99

神々の謀1

 私はフランツ王と別れた後、情報の渦にパンクしそうな頭を抱えてベットに倒れ込んだ。


 クリスティーナとエドの偽装政略婚約はクリスティーナのために辞めさせたいな。しかしあの王の決意を目にした後では、そう簡単に諦めるとは思えない。

 戦争は避けられないのか?アルの帝国への誤解も解きたい。


 それにもう一つ私には気になっている事があった。それは帝国の鎖国と秘密主義な所だ。根拠もなく王妃殺害の疑惑をもたれ、その噂が根強く残るのも帝国の行きすぎた秘密主義政策のせいではないか?

 帝国の王子であるエドも、初め私と裏で繋がってるんじゃないかと疑われたり、外交事でトラブルが絶えない様子だ。エドも国の秘密を話せず苦しんでいるし、アルも例え王妃殺害の疑惑が晴れてもまた何かあれば帝国を疑うだろう。

 同盟国である碧海帝国と聖マルグリット王国の次期王達がこの関係って、絶対後からトラブルの元だよなぁ……。


 ぶっちゃけ次期王うんぬんとかあんまり重要じゃなくて、エドともアルとも友達でいたい私にとって、二人が仲悪いままって嫌だなぁ……という個人的感情の方が大きいんだけどね。



 ベットの中でうんうん唸ってみたり、机に向かって関係者の利害関係図作ってみたり、聖マルグリットと華無荷田国と碧海帝国の関係書類読みあさったり。色々あーでもない、こーでもないと考えて、一晩かけてなんとなく計画のアウトラインができてきた。

 おおざっぱな所だけ考えて、細かい所は出たとこ勝負のずさんなものだが、早くしないとエドの偽装婚約話進んじゃうかもだし。


 最初に計画の最難関と思われる所から手をつけよう。そこがクリアできれば他はなんとかなるでしょう。というわけで、さっそく行動開始。エド達帝国関係者にあてがわれた区画に特攻。



「創造神様!今日はどんなご用件ですか?」


 もう私の唐突な行動に恐れを通り越して慣れ始めたシュリは、にっこり笑顔で私を出迎えた。う~ん以外にこの子順応性高いわ。肝も座ってるのかも。


「エドガー王子に会いたい」

「あいにく、今は本国との通信中です。いましばらくお待ちください」


「それは好都合」


 私は黒い笑みを浮かべて、エドガーの部屋と思われる方に向かった。警備が厳重な所がそれっぽいよね。しかし今日のシュリは毅然と私の前に立ちふさがって、強情に押しとどめようとする。


「今日は絶対だめです!本国との機密を知れば我ら帝国臣下といえども罰せられます。まして他国人であれば極刑は免れません」


 可愛い顔を頑張って怖く見せようと努力してる感じだが、子供の癇癪の様に可愛くて全然怖くない。むしろ頭撫で撫でよしよししたくなるなぁ。


「な、なんですか。頭撫でて懐柔しようなどと……、その手には乗らな……。創造神様のすべすべの手が……絶妙な撫で具合が……。いけないいけない」


 思わず手を伸ばして撫で撫ですると、シュリは抵抗しつつも嬉しそうな顔を隠せていない。デレツン?可愛いなぁこの子は!


「シュリや。妾は帝国のため重要な策を持ってきたのじゃ。是非本国の帝とも話がしたい。通しておくれ」


 撫でられまくって、もはやごろごろにゃーんな感じに懐いてしまったシュリの懐柔など、楽勝だった。


「で、では、先に私が王子に確認とってきますので、ここでお待ちを」



 王子の部屋と思われる扉の向こうにシュリが行ってしばらく、扉が開いてシュリが可愛らしくどうぞとお辞儀した。シュリや召使達を外に締めだして、エドと部屋に二人っきりになってからやっと話し始めた。


「明。どうしたのだ?クリスティーナ姫との婚約の事なら……」

「今日はエドと帝国の今後について重要な話をしにきたの。『大災害』と帝国の未来と聖マルグリット王国との外交問題とすべてが丸く収まる名案がね」


 私の黒い笑顔を見て、無愛想顔をしかめて私を見つめた。


「また私をはめるために良からぬ企みをしているのではないだろうな?」


 初めて会った時にいじめたのまだ根に持ってるんだ。思いっきり警戒されてしまった。私は慎重に言葉を選んで話し始めた。


「そんな。エドをはめるだなんてしないよ。前に言った帝国に私が行くって話どうなった?」


 エドは困ったように目を泳がせた。


「それについてはだな……。実は帝が明と話して見たいとおっしゃっている。魔道具で帝国の帝と謁見し、直接帝の目で判断されたいそうだ」


 帝国の最高権力者と直に交渉できるなんて願ったりかなったり。


「私も話してみたいと思ってたところなのよ。さっそく連絡とれない?さっきまで話していたんでしょ?」

「今か?……わかった少し待っててくれ」


 エドは室内に置かれていた、こった装飾の家具に手を触れて何か作業していた。一見明かり取りのスタンドの様な家具の上部が、突然光その上の空中に映像が映し出された。


 着物姿の初老の男性が映った。上品で落ち着いた雰囲気のこの人が帝?


「殿下。いかがされましたか?」

「カイユ。たびたびすまぬが、今帝に目通りは可能だろうか?」


「少々お待ちください。確認してまいります」


 どうやらこの人は帝ではないらしい。帝の側近とか?それにしてもなんだか違和感を感じた。エドガーは思いっきり欧米風なのに、シュリとかカイユとかは音の響き的にアジアっぽい。漢字とか当てられそうな名前だ。どうしてだろう?


「エドガー。帝国の人の名前ってどう書くの?例えばシュリとかカイユとか」

「このように書く」


 そう言って机の上にあった紙にさらさらと書きだした。『朱里しゅり』と『櫂柚かいゆ』。やはり予想通り漢字だ。ではエドガーも何か当て字なのか?


「エドガーは?」


 エドガーがまた紙に書く『エドガー』。まんまじゃん。一人だけカタカナっておかしくない?


「何でエドガーだけ字が違うのよ。それとも人によって違うの?」

「私の名前は初代帝の名前で、歴代王子に良く名づけられる伝統ある名前だ。他にもこの様に歴史ある名前の場合は、私の様な他国風な名前もあるが、一般的には朱里や櫂柚のような帝国文字の名前の方が圧倒的だ」


 昔からある伝統的な名前がエドガーで、でも一般的には漢字が主流って、帝国文化ってよくわかんないわ。


「おまたせいたしました。殿下。少しの時間であれば陛下の謁見可能でございます」

「わかった。実は例の『創造神』が今ここにいるのだ。陛下との謁見を希望していると伝えてくれないか?」


「かしこまりました」


 そう言って一度画面から櫂柚は姿を消した。そして少ししてまた戻ってきた。


「陛下の御許しがでました。『創造神』を魔道具の前へ」

「明私の代わりに、この前に立ってもらえぬか?」


 私はよくわからぬ魔道具とやらの前に立った。櫂柚は私の顔を厳しい眼差しで吟味した後、軽く会釈した。


「碧海帝国の今上帝の謁見でございます。帝は現人神あらひとがみでいらっしゃいますので、例え『創造神』といえども失礼なきよう」


 櫂柚は厳しい表情のまま、しっかり私に釘をさして映像から消えた。代わりに映像に映ったのは、目の覚めるような美女だった。


 黒い絹糸の様な髪。長いまつげに縁取られた黒目がちの切れ長な瞳。陶磁器のように白く滑らかな肌。年は30代ぐらいに見えるんだけど、美人だから若く見えるだけで実際はもうちょっと上かもしれない。

 なんでこんな綺麗な女の人がでてきたんだろう?


「初めてお目通りいたします。『創造神様』。朕は碧海帝国帝・ハルナでございます。我が息子エドガーより話を聞いた時から、一度お話してみたいと願っておりました。うれしゅうございます」


 へっ?この人が帝?帝っててっきり男の人かと思ってた。しかもエドガーのお母さん?確かに似てるけど若すぎる!しかもなんかすごい笑顔で嬉しそう。さっきの櫂柚の警戒した表情とは大違いだ。


 色々衝撃的な帝との初謁見は、この後も私の予想をはるかに上回るような展開になっていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ