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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第1章 聖マルグリット編
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微妙な三角関係4

「エドガー王子。よい返事を期待しております」


 王はそう言って部屋を出て行った。残されたエドと私は、召使さん達をすべて部屋から出して話し始めた。


「今の話本気で受ける気?」

「まだ検討するだけだ。国を左右する事だから、帝の御許しもいる。それにフランツ王はまだ何か隠している。王の真意がわからぬうちに安易に話しに乗るわけにはいかない」


「じゃあ帝国のためならクリスティーナ姫と婚約してもかまわないの?」

「婚約だけだ。いずれ破棄する。それが国のためになるならする」


「結婚する気もないのに婚約だなんて……。エド。あんたクリスティーナの気持ちわかっててそんな残酷な事するの?」

「わかっている。私も姫の事を考えて、今まで結婚は断り続けていたのだ。今回だって婚約しても絶対に結婚はしない」


「どこがクリスティーナの事考えてるって言うのよ。期待だけさせて裏切るなんて。いっそそのまま結婚しちゃえばいいじゃない」

「明。さっき言ったが、姫が私と結婚したら二度と本国に帰れないし家族にも会えない。手紙もすべて検閲され規制される。まったく見知らぬ国で、知る者もいない中で一生過ごす事になるのだぞ。よほどの覚悟がなければできない。しかし姫にはそこまでの覚悟があるようには見えない。だから姫とは結婚しないのが姫のためだ」


 確かにエドの言う通り帝国に嫁ぐのは、若いうちの恋心くらいで簡単に決めてしまうには重すぎる重荷なのかもしれない。だったらやっぱり国のためとはいえ、婚約なんかしなければいいのに。しかし王子という立場では、国の方が大切なのだろうか?


「もういい」

「どうしたのだ?明」


「見ず知らずの私には、あんなに細やかに優しくできたのに、クリスティーナには国のためなら気を持たせるような事できちゃうんだね」

「姫は王族だ。私の事がなくても、いずれ政略で親の決めた相手と結婚するのだ。そういう覚悟で育てられ、それが王族としての務めなのだ。明とは違う」


「クリスティーナだって王族の前に女の子だよ」


 私はエドに文句を言って席を立った。本当はアルの事聞きにきたはずなのに、今はそれ以上にクリスティーナの事が気にかかってしまう。きっと先ほどのエドのクリスティーナをわざと怒らせるような態度や、反対に国のために婚約しようとするそのやり方が気に入らないのだ。

 私はエドはもっとお人よしのいい人だと思っていたのに、その期待を裏切られてむきになっているのだ。



 私が部屋を出ると、部屋の外にまだフランツ王がいた。どうやら私達の会話を盗み聞きしていたようだ。趣味が悪い。私は自分がさっき同じ様な事をしていたのに、王を睨んだ。


「創造神様。お時間があるなら少しご一緒いただけませんか?」


 このタヌキ親父が油断ならないこ事はよくわかっている。でもアルの事を聞きたかったし、ついていくことにした。



 連れて行かれたのは、昨日の夜エドと話ししたあの庭。庭の一部にテーブルがセットされお茶の用意がされていた。でも召使いや警備の兵士は遠く離れた所に待機している。

 席に座って王も私も自分でお茶を入れた。普通なら召使さんがするのに、わざわざ遠くにいさせたのは聞かれたくない話しをするつもりなのか。

 しばらく沈黙が続いたが、急に王が真剣な表情で言った。


「我が娘のために、エドガー王子に意見していただきありがとうございます」


 聞かれてるとは知らずに話していた事なので、恥ずかしい。私の地の子供っぽい話し方だって聞かれてただろうに。それでもやっぱり親バカ王だから、娘の事になると嬉しいのだろうか。


「それに息子の事も気にかけていただいているようで、創造神様は慈悲深い方ですな」


 ああそれもばれてるのか。褒められてばっかりで背中が無ず痒い。でもお世辞とかじゃなく本気で言ってるっぽいな。


「妾がかってにしている事じゃ。気にするな」


 なんだこのツンデレ。自分で自分が恥ずかしい。


「創造神様。あなた様はずいぶんエドガー王子と親しいようだ。信頼もされている。そこでお願いがあるのですが」

「なんじゃ」


 このタヌキ親父、人を褒め倒した後にやはり何か仕掛ける気か。しかし聞かずに突っぱねるより、なんでもいいから情報を引きだした上で断る方がいい。


「創造神様からエドガー王子を説得してほしいのです。どんな手段を用いてもいいから、我が国と帝国の同盟を結んでいただくように」

「その手段には娘を政治の道具に使う事も入っているのか?」


 私の皮肉を効かせた言葉に、王は苦しげな表情を浮かべた。王だけどやっぱりバカ親だから、娘に後ろめたいとでも思っているのだろうか。


「国のため、民のためなら、娘に政治の道具になれと命じます。しかし今回は私情が混じっている。国の悲願など国民に向けての建前。カプア公国に攻め込む本当の理由は別にあるのです」


 フランツ王の目は暗く淀み、底なし沼のように人を不安に引きずり込んでいく。私はそれ以上聞くのが怖かったが、避けて通ることのできない重要な事だと感じた。



「アルフレッドの誤解をといて過去から解き放つ。そして私自身の復讐のため。私は前王妃オリビエを殺したカプア公国を根絶やしにする」


 慈悲深き賢王と呼ばれているとは思えないほど、残酷で恐ろしい宣告だった。

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