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10/12

赤ん坊

「村長さん!村長さん!」


 ━━━ドンドンドン、朝方激しいドアを叩く音がした。


 エマとブレンは2階にいたが、エマはすぐ起き階段を降りようとするも先におきたブレンに制止される。


「ま、また悪魔?」


「大丈夫だ。人だ。」


 ブレンが階段を降り、ドアを開けると、焦った表情をした大人の男性一人が玄関に立ち尽くしていた。男は呼吸が荒く急いでここまで来たようだ。

 


「カルディ。どうしたこんな朝早くにっ。」


 後ろにいた村長が驚いて前に出る。


「妻がっ、レイラが朝産気づいたんだっ!」


 どうやら男はカルディという男らしい。村長はカルディの言葉を聞いた途端とても驚いた。


 「な、何じゃと!?確かっまだひと月かかると医者は…」


 「昨夜遅くまで畑作業をしていて夜に転んでしまったんだ。それから体調が悪くなって…。」


 どうやら話を聞くと、出産を控えていた妻が予定より早く子供が出てきてしまいそうらしい。

 だが村に医者はおらず、街までいかなければいけない。

 

 後ろで聞いていたエマは不安そうな様子で見守る中、気づくとブレンが服に着替え外へ出ようとしていた。

 それをみたエマも急いで着替えて外に出た。

 


「どうすればっ。この雪じゃ医者を呼ぶのに往復で半日はかかるっ。今近所の女たちが見てくれてますがが…」


「落ち着けカルディっ。」



 カルディはそういわれるとハッとした表情になる。


「犬を貸すからそれで行けばなんとかなる…!」


 そうして村長は自分の犬達をカルディにかし、犬ぞりでいかせることにする。


「あ、ありがとう、村長っ…」


「さぁ、はよいくのじゃっ!」



 カルディが手綱をとろうとした時、ブレンはそれを静止した。

 


「な、なんだ君はっ」



「失礼。妻は何処に。」



 男はつっこんどんな様子でブレンをはねのけた。

  

「すぐ向かいの家だ!なんなんだ急に!!」


「わかりました。」

 

 

 そういいブレンはその場所を急ぐ。


「何なんだっ…」


 カルディはスキーを持って直ぐに山を降りた。

 

 ブレンはすぐ向かいの家に行く。婦人が多く集まって水オケやタオルをもっていた。

 中にいるレイラの処置をしているのだろう。


「まいったな。「顔」が見れない」


「さ、さんけづくってなに先生?」


「…子供が産まれるって事だ」



 ええ!とエマは驚いた。そしてタジタジになる。


「ど、どうすればいいの?空を飛んでっ」


「…みろ。」


 サラサラと雪が降ってきた。


「この雪じゃたぶん道がわからなくなる。吹雪になるなこれは。空なら尚更。」


「転換魔法は?」


「あれは場所と人がわからなければ無理だ。あっちに魔女がいなければ交換もできない。」


「そんな…」


「レイラという人間の「顔」が見たい。そうすれば「幻奏界」に言って赤ん坊を助けられるかのしれないんだが…」


 うーん、と考えているなか、やがて「そうだ」と言う。


「エマ、お前見てこれるか?」


「私?」


「お前さえ見れればお前とつながって見ることが出来る」


 そういうと、エマはそそくさと部屋に入り「手伝いに来ました」と中に入る。

 部屋の中には苦しそうに喘ぐレイラがベッドの上でもがくようにしている。相当苦しいようだった。


 「っあ、あぁぁあーー!」


 周囲の女達は汗をタオルで吹いたり深呼吸をさせようとしているが、中々レイラは呼吸をうまく整えられないでいる。

 エマはまたそそくさと逃げて家から出ると、直ぐにブレンに掴まれまた村長の家までいった。



 村長宅へ戻るとブレンはベッドに行く。


「手を繋いだまま寝ろ」


 え。その言葉に意味がわからないまま固まるが、ブレンはエマをお姫様だっこしボブン!とベッドをきしませそこで強制的に2人でベッドに寝ることになる。


「せせんせー!?わ、わたし…」


「大丈夫だ!精神世界へいくだけだ!」


 そういいブレンは杖を取り出す。


「精神世界?」


「精神世界は寝てなくちゃいけない。あとは「あっち」で話す。」


 そういい、杖の先が金色に輝く。

 キラキラと金色に輝く光はエマとブレンを包み込む。

 やがてエマは瞼が急に重くなり、睡魔が襲う。



「ん?」


 気がつくとそこは真っ暗な世界だ。

 その中にポツポツと小さな光がアチラコチラに小さく光っている。

 そして、きづくと誰かに右手を握られていた。

 右をみやると、そこにはブレンが自分の右手を繋いでいてくれた。


 「あぁぁ久しぶりだ」


 ブレンはそういい首を回す。


 「せんせい、ここは…」


 「精神世界の幻奏回と呼ばれる。」


 そういい、ブレンは精神世界について教えてくれた。

 ここは死者と生者の魂が行き交う場所で、境界であり混沌としてる世界だという。

 姿形は違うとも確かにここはフィンノむらで、光っているのはフィンノ村の人達の魂だという。

 だが時折チカチカと青く光る魂も横切る。


 「この青いのは?」

 「死者の魂だ。人間だけじゃない。動物や虫、色んな者がいる。あんまり見るなよ。」 


 そういい一歩一歩あるいた。


 「手は離すな。精神世界の何処かへ行ったら探せなくなる。」


 そういわれ、エマはブレンの手を強く握った。

 

 「エマ。レイラという女の顔を思い出してみろ。」


 エマはブレンにそういわれ、レイラの顔を思い出す。

 するとエマの足から金色の筋道がでてきた。

 

 「わっ!」


 「よし。この道を辿るぞ。」


 そう言われエマはブレンに握られながら金色の道を歩く。エマはその道をじっと眺めると、ふと何かを思い出す。



 「なんだ変な顔して」


 「なんかこの金の道?どこかでみたことある気がして…」


 「これを?」


 「うん。」



 そう言いうと、ブレンは暫く黙り込むが「気のせいだ」といいそこで話は終わった。


 ひときわ大きく輝く光の玉についた。

 それをみたブレンは静かに手を起く。

 



 ━━?


 (なんだろ)


 「せんせい、これ…」 


「レイラの魂だ。」


 そういうと、ブレンは周囲を見回した。


 「これか?」


 ブレンはぷよぷよと小さく浮かぶ、チカチカと点滅している小粒の光をみつけ、静かに手のひらに乗せる。

 

「間違いないな。レイラと魂の波動がにてる。」


「これ…」


「今産まれる子供の魂だ。」


そういい、ブレンはそっとレイラの魂に近づけた。


「いってこい。」


ふよふよと浮かぶ魂は促されるようにレイラの魂へ誘われた。


 そしてまわりが金の光で覆われた。やがて光は太い蔦のような形になり、大きな木の枝のようなものにかわる。


「ちゃんと生きろ」


 そういうと、樹木は蕾をつけ、やがてちり、花びらが舞う。そうしてレイラの魂は一層輝きだした。

 世界中が花に包まれているような。不思議な世界だった。


「凄い…」



━━おぎゃぁ、おぎゃぁ…。



 遠くから聞こえてきた。これは。


「どうやら産まれたようだ。」


 そういうと、何故かエマは涙が溢れてきた。


「おい!どうした!?」


 ブレンは慌ててエマの肩を掴む。


「な、何でなんだろっ…。わかん、わかんないっ」


「エマ…」


 ブレンはまた困った、泣きそうな顔になった。



 目を覚ますと目の前に村長がいた。

 医者がきて助かったという。

 だがとても危険だったようだが、レイラが途中から力が抜け体が軽くなったという。


 「やっぱり先生のおかげなの?」


 「少し力を分けただけだ。」


 ブレンとエマは村長にスピリットと村のこと全てを離して村をあとにした。


 「ワシを忘れるなよ」


 全く起きなかったナハトも旅の同行人として村をデたのだった。

 師匠いわく全くナハトは昔から起きないらしい。






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