3-53、高次元のドリームマッチバトル!
ワアアアアアアアアアアア! ワアアアアアアアアアアア!
「(未だに、受けた掌と背中がビリビリする・・・・・・。突きの質が違う。沖縄の鍛錬か何かによるものなのかなぁ? すっごいな、この子。形でインターハイを制しただけあるわー)」
「(川田サンも、この人にやられたことがあるのねーッ。納得。なかなかの強ささぁー)」
床を蹴り、後ろに間合いを切って、試合を仕切り直す両者。
すぐさま、美鈴が両掌をふわりと緩め、摺り足で一気に間合いを詰めた。
ススッ ススゥゥーーッ・・・・・・ サササササァーー・・・・・・
「(わ! 摺り足だけど、速い! ノーモーションで詰めてきた!)」
・・・・・・サッ! トトォォーーーンッ・・・・・・
警戒して構えを上げ、後ろに数歩跳び退いた狭山。それは踊るように軽やかなステップワークだ。
・・・・・・ギュムウゥッ ドッシュウゥンッッ!
それを逃さず、美鈴は床を強く蹴って狭山の懐へ飛び込む。ものすごいダッシュ力だ。毎日沖縄の白い砂浜を走り込んで鍛えた、自慢の足腰なのだろう。
「「 ツアァーーーーーーーーーーッ / せああぁーーーーーーーっ 」」
ドギュルゥッッ! ドオンッ! ドオンッ!
シュピィィーーッ! ヒュバアアァーッ!
追ってきた美鈴に対し、狭山も迎撃態勢。そして、両者の一気に距離が縮まった。
接近戦にもつれ込んだ二人。ピストルの弾丸のような回転で、美鈴の右拳は空気を切り裂き狭山の首元へ一直線。
対して、狭山は斜め上から鉈を振り下ろすかのように、美鈴のこめかみへ風切り音を立てて、右手刀打ちを振り下ろす。
ドオオォーンッ! ベッシイィィィーッ!
「(・・・・・・っ! この感触は! あたしの突きが!)」
「(くうー・・・・・・っ! 痺れるーっ! 痛いじゃんかーっ!)」
ワアアアアアアアアアアアアアアア ザワザワザワザワザワザワザワザワ
「・・・・・・あ! な、なんだって! 美鈴ちゃんの突きが・・・・・・」
「森畑センパイ。あの狭山サンて、思った以上にやるねーッ・・・・・・。美鈴と互角なんて!」
狭山の手刀は、美鈴のメンホーの左側頭部へ。美鈴の拳は、狭山の首元へ届いたかに見えたが、寸前の所を左掌で防がれていた。
・・・・・・シュパアァーッ・・・・・・
手刀を素速く引き戻し、残心を取った狭山は大きく一歩後ろへ跳ぶ。
「止め! 白、上段打ち、技有り!」
ザワザワザワザワザワザワ ざわざわざわざわざわざわ
先制したのは、狭山だった。コンマ数秒のタイミングだったが、手刀打ちで技有りを一つ奪う。これで、美鈴は後が無くなった。
「(すごいなこの人。こんな駆け引きで、しかも味のある技をあたしに入れた! ・・・・・・ふぅー。すぅーっ・・・・・・)」
美鈴は、目を瞑って開始線で大きく息を吸った。
・・・・・・コオオォォォオオオォーーー
・・・・・・ハアアァァァーーーーーーーッ・・・・・・
「(え! い、息吹きっ? ・・・・・・雰囲気が、変わった!)」
ゆっくり大きく息を吸い、まるで大風が吹くかのような音を響かせ、腹の底からゆっくり息を吐き出した美鈴。
まるで両手に三戦甕を持っているかのように、美鈴は力を抜いてだらりと両腕を下げた。そして独特な筋肉の使い方で、腹筋を引き上げるかのように、ぎゅっと身体全体を締め上げた。
「(この子、沖縄剛道流だっけ・・・・・・。サンチンの、締め? それを、組手で?)」
きらんと光る眼。美鈴はまるで、変身完了と言った感じで、狭山に目を合わせた。
「(気迫が、増した! ・・・・・・圧力がさっきまでと違う!)」
・・・・・・ピリッ・・・・・・ ・・・・・・ピリィッ・・・・・・
・・・・・・パチイッ・・・・・・
乾燥した空気が、静かに爆ぜる。美鈴の闘気が、鋭く弾ける。どうやら、狭山の手刀打ちで、美鈴は更に本気モードとなったようだ。
「(くすくすっ! あっははははッ! 面白いなぁ! 狭山サン、あたしとここまで楽しい組手をやってくれて、にふぇーでーびるぅっ! 本気で行くさぁーッ! 栃木空手、覚悟!)」
「(目の輝きが違う。この子、本気だ! ・・・・・・面白いじゃん! 来いっ、沖縄空手!)」
狭山も、細い眉をきりっと上げ、美鈴の気迫を真っ向から押し返す。
「続けて、始め!」
「ツゥゥアァァーーーーーーーーーァィッ!」
・・・・・・ドッシュウゥンッッ! キュウゥンッ! バババババババーーーッ!
小笹そっくりの声で、大きな気合いと共にかなり低い姿勢で踏み込む美鈴。まるで、レスリングのタックルかと思うくらいの低さだ。
「(はっ、速っ! ・・・・・・このぉ! その低さなら、これで!)」
「せぇあぁぁーーーーーーーーーっ!」
ダァンッ! バアァンッ! ドヒュンッ!
狭山も、思いっきり腰を落として、飛び込みながらの中段逆突きで迎え撃った。
・・・・・・ドグウッ グウウィィッ! バチインッ!
「(えぇ! ・・・・・・そのまま、は、弾き返してきたぁ! 中段突き、効いてないの?)」
中段逆突きをものともせず、お腹でそのまま突きを受け止め、残心を取らせることなく弾き返した美鈴。そのまま一気に踏み込み、完全に二人は密着したゼロ距離に。
「(栃木の、狭山陽納実サンねーッ! 覚えておくさぁ! ちゅらしーじゃーっ!)」
・・・・・・グイッ グルウンッ! ベシイッ! ドッタアァァンッ! ドンッ!
「(す、すっごい力! だめだ、抜け出せないーっ! なんて技法なのよーっ)」
密着した狭山の肘と首元を掴み、踵で足を刈り払いながら、美鈴は狭山を床に叩き伏せた。三戦甕と鎚石で鍛え上げた万力のような握力から生み出される掴み技は、とても狭山の力では抜け出せるものではなかった。
「ツアァーーーーーーーーーーッ!」
ドギュルンッ! ドゴアアァァッ!
「止め! 赤、中段突き、一本! 勝負あり! 赤の、勝ち!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ!
瓦を軽く十枚以上は粉砕しそうな剛拳を美鈴が叩き込み、狭山を力で薙ぎ倒した勝利となった。
これで勝負の行方は、大将戦にもつれ込むことに。
森畑と崎岡、二人の闘志が一気に燃え上がった。
ピィィーーーーーーーヨ ピィィーーーーーーーヨピヨ
・・・・・・パタタタタッ・・・・・・ パパパパパッ・・・・・・
豪邸山公園を、数羽のヒヨドリが赤い実を咥えて飛び交う。
桜の枝に乗った雪が、深紅の実をつけたナンテンの上に、ぽさりと落ちた。
がやがやがやがやがやがやがやがや がやがやがやがやがやがやがやがや
ざわざわざわざわざわざわ ざわざわざわざわざわざわ
「「「「「 (東恩納選手、形の全国高校チャンピオンだけど、組手も強いよね!) 」」」」」
「「「「「 (狭山選手も、強かったよ! 東恩納選手と互角の組手だったよ?) 」」」」」
「「「「「 (かっこいいね! どのチームも、強い人たくさんいるねー) 」」」」」
観客席は美鈴と狭山の試合が終わると、まるで激しいアトラクションを体験したかのような声で、どよめいていた。特に、小学生や中学生が、すごく興奮しているようだ。
「小笹が敗れて、美鈴ちゃんが勝って・・・・・・。こりゃ、菜美のチーム、けっこうきついかも! アタシらと当たる前に、狭山チームに敗れることも大いにあるなー」
「次は有華だしな。森畑の組手、あれからどれほど伸びてるんだ?」
「え? 知らないよ? 菜美はインターハイ、形で出場だったしさぁ?」
「なんでだよ! 川田も森畑も、そういうとこ、気にしないのかー?」
「別にーっ。アタシは菜美はもう、しっかりした軸を持つ強さっての知ってるもん。わざわざ毎日のように、レベルを探ったりなんかしないよー」
「里央・・・・・・。森畑さんは、わざわざ川田さんと別チームを組んでるのよ? ・・・・・・きっと、何か、自信があるんじゃない? ・・・・・・有華との試合、注目だね!」
「んー・・・・・・。まぁ、そうだろうけど・・・・・・。有華もしばらく稽古量減ってるが、そう簡単に力が落ちるとは私も思ってない。森畑との試合は、確かに、興味はあるが・・・・・・」
川田のチームや阿部のチーム、そして前原たち男子のチームが見つめる中、森畑と崎岡は同時にメンホーを装着。
崎岡は首を左右にこきんと動かし、相対する森畑は手首と腰をぐいっと伸ばし、お互いこれから始まるであろう激しい試合に備えている。
「あ、阿部せんぱい。・・・・・・森畑せんぱいと、崎岡さん・・・・・・。どっちが強いんですかね?」
「・・・・・・わかんない。わたしも、この対戦は見たことないもの。組手のタイプもお互いまったく違うし。・・・・・・重戦車のような攻め型と、純然たる待ち拳型。どうなるんだろう?」
「読めませんよね・・・・・・。カウンター入れても、力でねじ伏せられたら、さっきの狭山さんみたいになることもありますし・・・・・・」
阿部たちも三人で首を傾げながら、じっと試合場を見つめている。
森畑と崎岡の試合は、本当にどのような展開になるのだろうか。
「よぉ。二斗ぉ! おめぇ、どう読むよ? 柏沼の森畑と、等星の崎岡の試合よぉ?」
「・・・・・・わからん。・・・・・・強い方が、勝つ。巧い方が、勝つ。・・・・・・それだけだろう・・・・・・」
「大澤みっちゃんが勝ったから、崎岡も元気びんびんだろ。崎岡が勝てんじゃねーかなー?」
注目の大将戦。どんな技が飛び交う戦いとなるのか、まったく目が離せない。
「赤! 大将! 森畑選手!」
「はぁいっ!」
「白! 大将! 崎岡選手!」
「しゃあっ! はあぁいっ!」
~~~選手!~~~
「「「 ファイトーーーーーーーっ! 」」」
ワアアアアアアアアアアアアアアア ワアアアアアアアアアアアアアアア
「(崎岡か・・・・・・。よりによって、とんでもないのと当てられたなー)」
「(森畑菜美・・・・・・。中学の頃と今の私では、次元が違うってのを見せてやるさ)」
夏の頃よりも、少しだけふっくらしたようにも見える崎岡。主将として気を張り詰めていた頃と比べ、醸し出す雰囲気には、どこか柔らかい印象のようなものも感じるが・・・・・・。
「勝負一本! 始め!」
タタンッ ・・・・・・ダシュゥゥンッ! キュウゥンッ!
「(え! 速攻!)」
「せええぇぇぇあああぁーーーーぁいっ!」
ドバババババババババババババババァッ! ズバババババババババババッ!
「(なっ・・・・・・なんて突進力っ! ・・・・・・うわー)」
ズドドドドドドドドドォォッ! ドガアンッ! ごろんごろん どしゃ
・・・・・・ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ!
「止め! 赤、場外!」
・・・・・・ズウンッ・・・・・・
・・・・・・ズオオオォォォッ・・・・・・
開始二秒。マシンガンのような連突きで、体当たりのように突っ込んだ崎岡。完全に虚を突かれた森畑は、後の先のカウンターで迎え撃つ姿勢を取るも、あえなく失敗。防御するのが手一杯で、崎岡の突進力に負け、一気に場外まで吹っ飛ばされた。
かつての全日本ナショナルチーム、そして等星女子高の主将であったそのオーラと貫禄は、いまだ衰えず健在だった。
「森畑センパイーッ! 油断したらダメだってぇ! 相手はあの、崎岡有華だよぉーッ?」
「インターハイの団体戦で試合見たけど、なんかぁ、今日の方が貫禄あるように見えるさぁ! 崎岡有華って選手は、さすが、ナショナルチーム所属だっただけあるさぁ!」
「美鈴! 森畑センパイ負けたら、ワタシらも終わっちゃう! がんばらないとぉーッ!」
「「 森畑センパイーッ! ファイトーーーーーーーっ! 」」
小笹と美鈴が、ステレオサウンドのように声を揃えて森畑へ声援を送る。
「(び、びっくりした! 久々の組手試合だから勘が鈍ってるな、私。・・・・・・まずいな!)」
「(・・・・・・あれほど畳みかけたのに、一発も直撃しないとは。さすがにいい眼をして見切るじゃないか!)」
「(ふぅ! ・・・・・・様子見無しってことかい、崎岡有華! 私も、気を引き締め直しだ!)」
「(さぁ、どうするんだい? お互い、気を研ぎ澄ませて戦おうじゃないか!)」
開始線でにやっと笑い合う両者。
吹っ飛ばされた森畑に、ダメージなどは全くないようだ。
「続けて、始め!」
ヒュルンッ! シュタタタタァァッ! シュパァンシュパァンシュパァン!
崎岡はやや構えを高く上げ、前後と左右に高速移動のステップを踏む。そして森畑が構えた拳が届くことのできない死角へと、素速く回り込んでゆく。
「せええあああぁぁっ!」
ダンッ! ドォンッ! ズバアンッ! ズババババババババァンッ!
「(く・・・・・・っ! 真波とタイプは似てるけど、攻撃の間合いやリズム感が違う! 受けるので精一杯だ・・・・・・。入ってくる角度も、絶妙なとこから踏み込んで来る!)」
・・・・・・ヒュルウゥンッ! シュバババババアッ!
「(あ! ま、まずいーっ!)」
・・・・・・ドシイイィィッ! バアアアァンッ! どしゃ
「せええぇやああぁぁーーーーーっ!」
ダダダダッ! キュウゥンッ! シュバアッシュバアッ!
・・・・・・ごろごろごろごろ・・・・・・ ドッゴォォンッ!
「(あ、あっぶなかった! 手抜きなしだなぁ、崎岡め!)」
森畑は連突きをブロックし、重く叩きつけるような上段回し蹴りをなんとか両腕で受け止めた。しかし、崎岡の蹴りの威力たるや、凄まじいものがある。森畑は受けた腕ごとそのまま吹っ飛ばされ、床に転がされた。
しかし、それで終わらないのが崎岡だ。転がって倒れた森畑へ、追いかけてすかさず強烈な二連突き。間一髪で、身を捻ってそれを躱した森畑。崎岡の突きは赤杉板の床に突き刺さり、試合場を大きく揺らす。
このやりとりが、わずか五秒間の中で繰り広げられた。仕掛ける方も、受ける方も、高次元の動きを見せた、ハイレベルな組手だ。
「(やはり、叩き上げた基礎力からくるパワーはとんでもないな! ・・・・・・でもね、私だって怠けてたわけじゃなんだからなーっ!)」
崎岡から目をそらすこと無く、間合いを切って立ち上がった森畑。
「とぉああああぁぁーーーーいっ!」
「(む! 来るか! 森畑!)」
フワン フワン フワァッ・・・・・・
・・・・・・キュウンッ! タァーーンッ!
ヒュバアアァーーーーッ! シュバアアァーーーーーッ! ヒュウンッ!
力を抜いた、柔らかい構え。そこからの低い踏み込みで、一気に森畑は前傾姿勢になって猛スピードで突っ込んだ。すさまじく伸びのある逆突きからのワンツーは、崎岡の首元と顎先へ、矢のように放たれる。
「(なんて伸びのある突き! まずいっ!)」
トトォーーンッ・・・・・・ パアンッ! スパパァンッ!
バックステップし、左右の掌でワンツーを弾き飛ばす崎岡。そして、森畑の攻撃が終わったところを、見逃すことなく追撃に入る。
「(ワンツーの後に動きが居付くなんて、隙だらけだよ森畑!)」
「せえぁ・・・・・・」
・・・・・・シュパアァーーーーーーーンッ!
「(なっ!)」
ざわざわざわざわざわざわ ワアアアアアアアアアアアアアアアーッ!
「止め! 赤、中段突き、技有り!」
森畑の中段カウンター、一閃。
崎岡がまさに今、仕掛けようとした刹那の瞬間を察知。その動きよりも早く、森畑は数秒先の未来を読んだかのような動きで、動き出そうとした崎岡の懐へ突きを入れていた。崎岡が気づいたときには、低く潜り込んでおり、すでに中段逆突きで飛び込んでいたのだ。
「・・・・・・いまの森畑のカウンターは、素人が見たら返し技には見えないねぇー。ワンツーの後に、さらに一発飛び込んだように見えるけど、あれは、森畑得意の先々の先だねぇー」
「僕も見極め困難な、あの崎岡さんのスピードですら、森畑さんは察知しちゃうなんて!」
「菜美は、陽二以上のカウンター使いだしな。カウンターの質は違うけどよ。それにしても、一本になってもおかしくない突きだったけどなぁ! 尚久、いまの、一本じゃないんけ?」
「際どいレベルで、技有りってとこかねぇー? 『何か』がギリギリ足りなくて、一本には至らなかったってことだろーねぇ。武道の技有りって、一本の半分って意味じゃないしねぇ」
「確か、『九割以上ほぼ一本と同等だけど、ものすごく惜しい技』が、技有りなんだよね?」
「そーいうことだねぇー。ポイントって考えとは違うんだよ、武道の一本や技有りはね」
技有りを先制され、さらにきりっと表情を引き締めた崎岡。
森畑も、開始線で直立して普通に待っているように見えるが、目は残心を取ったときの気迫が消えていない。
「続けて、始め!」
「せええあああぁぁっ!」
・・・・・・シュバアンッ ドッガアァァァッ!
「(うくっ! ・・・・・・す、すっごい前蹴り! 負けるかぁ!)」
「とあああぁーーーっ!」
・・・・・・ダアァンッ! ベシイイィィッ!
「(くっ! 間髪入れずに、中段を蹴り返してくるとは!)」
ズババババババッ! ドバババババババババババババババァッ
パパパパパッ パパパパァン! ドパァン ドパァン!
崎岡が蹴れば、森畑も意地で蹴り返す。崎岡が連打で攻めれば、森畑はそれを受け捌いてカウンターを返す。カウンターを返されれば、崎岡はもらってなるものかと意地で避ける。
かつて、川田と死闘を繰り広げた内容とは異なるが、あの時と同じような意地を見せる崎岡。意志の強さは、未だに等星ナンバーワンなのかもしれない。
「菜美、やるなぁ! いつのまに、あんなレベルにまで・・・・・・。崎岡と互角だなんて、アタシの知る菜美よりも、遙かに強いじゃんかー」
「あれは・・・・・・きっと、隠れて稽古してたね・・・・・・。有華も基本稽古は続けてたけど、森畑さんも、独自に何か鍛錬や稽古をしてた動きだね。足腰がしっかりしてるもの・・・・・・」
「森畑のカウンターを、さらに寸前で避ける有華もすごいけどな。集中力が尋常じゃない!」
「(森畑の突き、こんなに伸びるものだったのか? こいつ、基礎量がとんでもないな。まったく同じ軌道を何度も突けるのがその証拠。無駄の無いフォームで、避けにくい!)」
崎岡は、森畑の突きを受け捌きながら、奥歯をぐっと噛みしめた。
「とあああぁーーーっ!」
・・・・・・バシンッ! ぐららっ
「(しまった・・・・・・く、崩された・・・・・・)」
「(もらった! 背中、いただき!)」
「(・・・・・・と、思ったら、甘いぞっ!)」
・・・・・・ドンッ! ギュルウンッ! シュバアァーーッ! ドッスウンッ!
「(うぁ・・・・・・ッ!)」
・・・・・・ヒュウンッ! タッ! ・・・・・・ずざざっ・・・・・・
「止め! 白、中段蹴り、技有り!」
・・・・・・ワアアアアアアアアアアアア ワアアアアアアアアアアアアーッ
カウンターの上段突きを囮にし、森畑は崎岡の前足をコンパクトに横へ払った。足払いで、姿勢をぐるんと崩された崎岡だったが、そこをめがけて踏み込んだ森畑へカウンターで鋭い後ろ蹴りを撃ち込んだ。
残心を取り、蹴り足をくるりと戻して姿勢を整える崎岡。後ろ蹴りの威力で、数歩後ずさる森畑。これで、お互いに技有りを一つずつ取り合った、互角の展開に。
「・・・・・・小笹ー、このイベント、面白いさぁ。規模としては、ものすごく小さい大会だけど、出てる選手や試合内容はハイレベル、そしてルールはものすごく緊迫する、独自のモノ。いつもの高体連ルールよりも、やるかやられるかの緊張感だねぇーッ!」
「ワタシも、このルール初めてだけどぉ、やってみて面白いし、見てて何となくコツもわかったんだよねぇーッ! 森畑センパイーッ! ワタシと美鈴を、決勝に連れてってぇー」
がやがやがやがやがやがやがやがや がやがやがやがやがやがやがやがや
「続けて、始め!」
「とあああぁーーーっ!」
・・・・・・ギュンッ ダシュッ! タタアァァンッ! バシュウッッ!
「せええあああぁぁっ!」
パアンッ! ドギュウンッ! ズダダダダダダダァンッ!
「とああああああぁーーーーぃっ!」
パパパパァンッ! シュンッ! シュシュンッ! シュバアッ!
「せええやぁあああぁぁっ!」
シュンッ! シュバアッ! ドバババババババババババババババァッ!
・・・・・・トトォォーーーンッ トトォォーーーンッ
ズダダダダダダダッ! ダアアンッ ダシュンッ! パパパパァン!
お互いに、至近距離から打ち合い、集中力を研ぎ澄ませて攻撃を繰り出し、躱し、ぶつかり合っている。
森畑が間合いを切っては崎岡が追いかける。
追ってくる崎岡に、森畑は絶妙なタイミングで突きや蹴りのカウンターを放つ。それを防ぎながら前に出る崎岡と、間合いを保って迎え撃つ森畑。
両者は、気を漲らせた鷹のような眼で、さらに高次元の試合を繰り広げていった。




