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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第3部・完結編  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第2章 新世代激突! 秋の新人大会!
21/86

3-21、新主将 阿部恭子、組手もがんばりまーす

   ひた  ひた  ひた  ひた

   ちゃりん!  ピッ  がこがこ がこん  ・・・・・・ぷしゅ  ごくごくごく


「あー、おいしい! サッパリしたぁーっ! ・・・・・・阿部チャンも、なんか飲む?」

「わたしは、どれがいいかなぁ? なぁんかいつも、『イチゴみるくオーレ』だけが売り切れてるんだよねぇ、試合の日ってさー。誰か買い占めてるのかなぁ?」

「ワタシがいま飲んだ『冷やしカシスレモネード』も、サッパリして、おいしいよぉッ?」

「よくそんな冷たいの飲めるね。おなか壊したら嫌だなぁ。午後も試合だしさー」

「あははっ! 阿部チャン、それなら『おしるこ』にしたらーッ? くすくすっ」

「そぉね。あったかくて、甘いのにしよーっと!」


   がこがこん  がこっ  ・・・・・・ぷしゅ


 自販機コーナーで、笑い合いながら飲み物を飲む二人。

 阿部は、廊下でばったりと会った小笹と一緒に、組手の準備をして選手待機所へ向かうところだった。


「大変だったねっ、阿部チャン? 真衣チャンは、とりあえず、心配ないんだって?」

「ありがと。そうなの。歯はグラつくけど、補正すればだいじだって。それにしても、わたしもあんな瞬間初めてだったからさ、目の前で起こるのが。焦ったよー。真衣がパニックになってたから、主将がオロオロしちゃいけないって思って、平静を装ってたけどさ」

「ワタシも、あの後さ、後輩の一人が組手怖がっちゃったんだぁー。自分の感覚とは違うからか、後輩を引っ張っていくのって、大変なんだなぁーって思ったよぉー」

「末永ちゃんも、今や海月女学院のエース主将だもんなぁ。・・・・・・そう言えば、たしかさ、以前に白帯は六人って言ってなかったっけ? 今日、五人しかいないよね?」

「うん・・・・・・。まぁ、最初は六人ちゃんといたよ? でも、ひとり辞めちゃったんだよねぇ。あーぁ、残念だったなー・・・・・・。なんかさぁ、やっぱり、海月女学院ってお嬢様進学校でさぁ、その子の両親が、空手なんてダメですぅって学校に言ってきたみたいで。だから、一年生は五人になっちゃったのぉ」

「そうだったんだぁ。そうかぁー。親に言われちゃ、どうしようもないもんなぁー」

「でも、その子、道着は今は着てないけど、マネージャー役で同好会には残ったの。たまに、体操着で基本稽古とかは一緒に混ざってやってるケドね。あははっ!」

「大変だなぁ、同好会って。でも、末永ちゃんには福田先輩もついてるしさ、だいじだよ! ・・・・・・午後、頑張ろうね! 末永ちゃんと組手、当たりたいんだ!」

「くすっ。ワタシは、お友達の阿部チャンでも、容赦しませんからねぇーッ? あははっ!」


 ~~~午後の個人組手に出場の選手は、選手待機所にお集まり下さい~~~


「あ。招集アナウンス入った。じゃ、わたし紗代たち連れてくるから! また、試合でね!」

「はーい。まったねぇー。バーイ! ・・・・・・さーて、とっ・・・・・・。ワタシも、そろそろいくかー・・・・・・」


 いよいよ、午後の個人組手が始まる。

 前原は黒川と長谷川、田村は阿部と大南の監督役だ。特に田村は、BコートとDコートを移動しながらの監督役となるため、なかなか大変そうだ。

 大会も折り返しとなった午後は、どんな激闘が繰り広げられるのだろうか。



 * * * * *



   ワアアアアアアアアアアアアアアア  ワアアアアアアアアアアアアアアア


「しぃぃええぇいりゃあぁーーーっ!」


   バチイイィィンッ! パパパパァン!  ギュウンッ! ドガアアァッ!


「「「「「 いいぞ畝松ーっ! にっしぃぃーん! ファイ! ファイ! ファイ! 」」」」」


   ワアアアアアアアアアアアアアアア  ワアアアアアアアアアアアアアアア


「ツアアァァーーーーァイッ!」


   キイィーンッ!  パッカァァァァァンッ!  キイィーンッ!  ドパアァンッ!


「「「 末永先輩、やったぁーっ! ナイス一本ーっ! 」」」


   ワアアアアアアアアアアアアアアア  ワアアアアアアアアアアアアアアア


 四つのコートで一斉に始まった、午後の個人組手。

 日新学院の新主将である畝松や、今回最注目選手の小笹は初っぱなから大暴れ。優勝候補筆頭としての存在感を見事なまでに発揮していた。


「・・・・・・赤、棄権。青の、勝ち!」


 一年生大会のDコートでは、内山が棄権したため、柏沼メンバーは残った大南が一人で出場している。


「(うちやまに良い報告が出来るよう、わたし、うちやまの分も全力で戦うからね!)」


   ワアアアアアアアアアアアアアアア  ワアアアアアアアアアアアアアアア


 そして、Bコートでは小笹の試合があっという間に終わった。たった十秒で、立て続けに上段蹴りを三発決め、鶉山女子高の選手をあっという間に下したのだ。

 そのあとすぐに、阿部が出陣。


「赤、青藤大足園高校! 星川選手!」

「はい!」

「青、県立柏沼高校! 阿部選手!」

「はあいっ!」


 ~~~選手!~~~


 監督席に座る田村は、阿部になにかアドバイスを送る。振り向いた阿部は、メンホーの奥で目を見開いて、なにか驚いた様相。そして、口元をきりっと上げてコートに入った。


「勝負、始め!」

「たあああああぁぁーっ!」


   ダダッ  タタアァンッ!  シュパアッ  パカアァァンッ!


「(なっ!)」

「止め! 青、上段蹴り、一本!」

「よおっしゃ! いいぞぉ、阿部! 俺の思ったとおりだねぇー」


 なんと、速攻で上段回し蹴りを放った阿部は、開始早々に一本を先取。それも、真っ正面からではなく、やや左斜め前に踏み込んでからの右上段回し蹴りだった。


「(ほ、ほんとに取れた! しかも、相手、反応してなかった。・・・・・・よぉし、行ける!)」


――――。

(阿部、あの星川にはリベンジしたいんだべ? なら、迷わず、速攻で上段を蹴ってみ?

(えっ!? 速攻で、ですか?)

(相手は、おそらく最初は油断してる。今の阿部なら、絶対、決められるからさ!)

(えぇー!? ほ、ほんとですか! 速攻で、上段蹴り、ですか・・・・・・。よぉし!)

――――。


「(まさか、田村先輩、始まる直前にあんなこと言うなんてなぁー・・・・・・。キャリアが違うとこんな大胆な作戦も思いつくのか。勉強になるなぁ、主将として・・・・・・)」


 ちらっと監督席の方へ目を向けた阿部に対し、田村はにやっと笑って、余裕の表情で座っていた。


「さぁ、阿部! あとは、好きにやるといいぞぉー。俺は、おやすみするー」

「(は? ちょ、ちょっと田村先輩。それは余裕出し過ぎでしょぉーっ?)」


 田村はなんと、監督席に座ったまま、寛ぎ始めてしまった。まるで自宅のリビングにいるかのように、ゆったりとして、やる気が微塵も感じられない。相手の監督も、ぽかんと口を開いて呆れている。


「続けて、始め!」

「(あ! は、始まった! もぉー、田村先輩! ・・・・・・こうなったら、相手の星川さんには、自力で勝つしかないじゃないですかぁ! インターハイ予選のリベンジをしなきゃ!)」


   タタタァンッ  タタタァンッ  タタタァンッ・・・・・・


 ステップを小刻みに、そして規則的に踏む阿部。相手は同じようなステップで、阿部よりもややテンポを上げて仕掛けてきた。


「てやーーーーっ! てやあっ!」


   ヒュッ  ヒュヒュヒュッ  トトォン  ヒュンッ


「(あ! み、見える! 以前は攻撃がよくわからなかったけど、今日は、余裕で見える!)」


   パシッ  パシンパシンッ  タンッ パアンッ!


 上下に技を振り分けて突っ込んできた相手に対し、阿部は両掌で難なく捌く。最後の突きをぐいっと強く弾き飛ばしたため、相手の姿勢が斜め前にぐらっと崩れた。


「たあああああああーいっ!」


   ダンッ!  バチイイィッ!


「止め! 青、中段蹴り、技有り!」

「(や、やった! ・・・・・・田村先輩、見てましたか? ・・・・・・って、あれ?)」


 田村は、阿部が気づいたときには監督席で、腕組みをしたまま目を瞑っていた。


「(えーっ? ね、寝てるんですかぁ! うそー・・・・・・)」

「続けて、始め!」

「(うそでしょ、寝てるなんて? アドバイスもらえないじゃないの! ・・・・・・もしかして、これって、わたしに、アドバイス無しで勝てってこと? そうなんですか、田村先輩?)」


 相手と構え合い、技を次々と出し合う阿部は焦らずに、きちんと冷静に対応している。

 田村はその様子を、片目を薄くちらっと開いて、時々じっくりと観察するように見ていた。


「てやーーーーっ!」

「たああぁーーっ!」


   ヒュヒュヒュッ   パシンッ!  スパァーンッ!


「止め! 青、中段突き、有効!」


 見事な中段逆突きのカウンター炸裂。着実にポイントを重ねてゆく阿部。

 速攻の先制点が3ポイントであったためか、相手は焦って雑な技がどんどん出ているようだ。そこを阿部はきちんと冷静に対処して、返し技を決めていく。あっという間に、点差は6対0。


「続けて、始め!」


   タタタッ  スタタタッ  タタタァンッ!  ヒュンッ


「てやーーーーっ! てやーーーーっ!」

「(フェ、フェイントっ!)」


 ステップからのフェイントを織り交ぜてきた相手。

 阿部は相手のリズムに乗せられ、タイミングを狂わされてしまった。そこを、相手の上段刻み突きが襲う。


「(ま、まずっ! あぶないーっ!)」


   ぐるっ  よろっ  パシンッ!


 姿勢を崩しながら、仰け反るようにして阿部は突きを回避。そして、右掌で相手の突きを弾いた。


「たあああああああーいっ!」


   シュッ  バチイイィッ!


「止め! 青、中段蹴り、技有り! 青の、勝ち!」

「(や、やったぁ! か、完勝できたぁ! やったーっ)」


   パチパチパチパチパチパチパチパチ  パチパチパチパチパチパチパチパチ!


 勝利した阿部に、いつの間にかきちんとした姿勢で座っている田村が、拍手をしている。

 阿部はメンホーをはずし、相手と握手をして一礼したあと、小走りで田村のもとへ駆け寄る。


「よかったなぁー、阿部! リベンジできたじゃんかー。しかも、完勝だねぇー」

「もぉーっ! なんで寝てるんですか田村先輩! ちゃんとわたしの組手、見てましたぁ?」

「うん。だいじだ、見てたー。阿部はもう、自分が思ってる以上のレベルにまで達してんだ。だから、自分で考えて試合の組み立てができるはずなんだよねぇー。だから、動けたろ?」

「まぁ、そうですけど・・・・・・。でも、ひどぉい! 寝なくたっていいじゃないですかぁーっ」

「わりぃー。お弁当食べたら、つい。午後は眠くなっちまってねぇー。でも次は、とてもじゃないが寝てらんないからねぇー。それにこの後、大南の方にもつくようだしな」

「そうですよぉ。次は、末永ちゃんとの初対戦です! 寝てるヒマないですからね? わたし、この末永ちゃんと初対戦するために、必死なんですから!」

「ほえー。いいねぇ阿部。だーいぶ気合い入ってるねぇー」

「わたし、望んでたんです。末永ちゃんのレベルは、とんでもなくハイレベル。かつて、あの森畑先輩や崎岡さんすらも下しましたしね。インターハイでも、東北商大高校のあの強いひとにも勝ちましたし、わたしなんかがどこまで戦えるかわかりませんけど・・・・・・。頑張りますからね!」

「気合い負けしなきゃ、だいじだ! 末永の組手はトリッキーな印象が強いが、教科書通りの基本的な動きもすべて精度が高い。そして、今日はまたさらに、スピードとキレも磨きがかかってるしな。突きの風切り音は、あの朝香朋子に近いレベルになってきてた!」

「ふー。そうなんですよねぇ。わたし今、えらくドキドキしてますよ本当に。・・・・・・緊張するなぁ、末永ちゃんとの試合。楽しみなんだけど、胃が口から飛び出そうです」


 阿部は、拳サポーターをじっと見つめ、赤側に座っている小笹の方へ顔をくるりと向けた。それに応えるように、小笹は屈託の無い笑みを阿部に返す。


「(くすっ。待ってたよぉ、阿部チャン! ワタシとの勝負、望んでたんだよねぇーッ?)」

「(末永ちゃん、か。実際に戦ってみないことには・・・・・・。全力でいくよ。よろしくね!)」


 一気に盛り上がる個人組手。前原も、間もなく出陣する黒川の監督役としてスタンバイ中だ。


「田村君のほうは、いい感じに勝ち上がってるなぁ。僕も、黒川君や長谷川君が一つでも多く勝ち上がって、良い結果を出せるように頑張らなきゃ」


   ワアアアアアアアアアアアアアアッ!  ワアアアアアアアアアアアアアッ!


 新世代が入り乱れて激突する新人大会。個人組手では、誰か台風の目となるのだろうか。

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