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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第3部・完結編  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第2章 新世代激突! 秋の新人大会!
20/86

3-20、新人大会はどんどん進み・・・

 ちょっとした騒動となったが、女子団体組手はその後、県立明日市が海月女学院を4対1で下して勝ち上がった。

 小笹は県立明日市戦の先鋒戦、わずか十九秒で8対0の完勝。蹴り技三発であっけなく試合を終え、館内はどよめいていた。存在感が相変わらず抜群に光っている。

 そして、等星女子はその県立明日市を全員完勝の5対0で下し、ベスト4へ。

 等星女子、県立牛頭、足園大付属、国学園栃木がベスト4に出揃い、決勝戦は等星女子と足園大付属。結果として、等星女子が五人とも8対0の完勝という完璧さで優勝。相変わらず、怪物級のものすごい強さだ。

 男子団体組手は、ベスト4に日新学院、右野日大、県立牛頭、県立柏沼農商が勝ち上がり、決勝戦は日新学院と県立牛頭が激突。「ぎゅう! ぎゅう! ぎゅう!」という独特な応援が響き渡っていたが、日新学院には歯が立たず、4対1で日新学院が優勝。

 監督席にいた二斗は、後輩達の試合で、まるで一緒に戦っているかのように大きな気合いを発しながら座っていた。


「うぅるるおおぉあっしゃぁぁぁいっ!」


 館内放送で「監督席にいる人は、気合いを飛ばさないでください」と二斗は注意を受けていた。


 ~~~これより昼食休憩に入ります。午後の個人組手は、一時より開始します~~~


 午前中の競技が終了した。

 田村曰く「後輩達の監督は、やはり自分で試合をするよりも疲れるねぇー」とのこと。


「・・・・・・だから、そういうわけでさぁ、ちょっと大変だったんだよぉー」

「〔そりゃ心配だね。アタシもいてあげたかったなぁ。だいじかなぁ、真衣は?〕」

「まぁ、早川先生と井上がついてって、前歯が一本ぐらぐらしてるけど、ちょっと補正すればだいじだってさ? 鼻血も止まったみたいだし。でも、内山のメンタルが、ねぇー・・・・・・」

「〔アタシらと違うもんね、一年生は。初心者上がりだと、この先で恐怖心が先立つのだけが心配かなー。・・・・・・ちょっとよく、今後はメンタルも見てあげた方がいいかもねー〕」

「そうだな。まぁ、阿部や大南がよくフォローしてくれてるからさ。・・・・・・あぁ・・・・・だねぇ。・・・・・・そうそう・・・・・・。・・・・・・うん。あぁ、そうだねぇー・・・・・・」


 昼休みに入ったのと同時くらいに、田村のところへ川田から電話がかかってきた。

 大会の結果などが気になって、こちらからメールを送る前に電話してきたらしい。団体組手のことを田村が話したら、川田もかなり心配しているようだった。


「じゃ、またな。ゆっくり大学見てこいよ? こっちはまかせとけー」

「〔ありがと! またね!〕」


   ピッ!

   ・・・・・・むー  むー  むー  むー  むー


「なんだよぉ、今度は。休まらないねぇ! ・・・・・・中村か?」

「みんな、心配なんだよきっと。僕にもさっき、森畑さんや神長君からメール来てたから、ちょっと団体戦のことを僕なりの言葉で説明して、返事しておいたからね」

「おっす。俺、田村ー」

「〔新人戦、どうだ? 神長のところには前原からメール来てたが、大変だったんだって?〕」

「いま、川田からも電話来て、説明したとこだー。いやー、等星にやられちったねぇー」


 中村と神長は午後もみっちりと課外授業が入っており、応援に行きたいが抜けられないとのこと。

 田村が再び、同じ説明を電話越しにしていた。


   ピッ!

   ・・・・・・むー  むー  むー  むー  むー


「だぁーっ、もぉーっ! 俺にメシを食わせてくれぇ! ・・・・・・次は、森畑ぁ?」

「なんだかんだで、電話に出てくれるんだから、みんなそういう田村君の気質をわかっててのことなんだよ、きっと。てか、僕が送った説明が、わかりにくいのかなぁ?」

「あいよ! 俺、田村ー」

「〔真衣が血みどろで打ちのめされたって何! だいじなの真衣は! 今、どうしてる?〕」

「森畑ぁ、前原からどーゆー説明されたんだよぉ。・・・・・・だいじだ。前歯が・・・・・・」


 どうやら、前原が送ったメールは表現がちょっとオーバーだったようだ。次から次へと田村の所へ、同期メンバーから電話が入る。田村はなかなかお弁当が食べられず、いらいらしている。


「・・・・・・うん・・・・・・。まぁ、そういうこったねぇー。・・・・・・はい、またねぇー」


   ピッ!


「田村先輩、お弁当どうぞっ! わたしたち、お先にいただきました!」

「わりぃ、大南。まったく、前原ぁ、オーバーに表現しすぎだって。みんな、内山がとんでもねぇ状態で血みどろにされて再起不能なんじゃないかって、心配で電話してきたぞぉ!」

「ご、ごめん田村君。わかりやすくしたつもりだったんだけどなぁー」

「田村先輩。それにしても、あの等星の矢萩和光って、すっげぇ威力の突きでしたね!」

「みつるも俺も、ぶったまげました。真衣が一撃で鼻血噴き出すなんて・・・・・・」

「(もぐもぐ)あのときはさ(もぐもぐ)カウンターで(もぐもぐ)うちやまに(もぐもぐ)つきが、はいったからねぇー(ごくん) カウンターの威力って、すげーんだよ!」

「わたしと戦った川島さんと、矢萩さん。どっちが強いんでしょうかねぇ?」

「うーん。僕が見ていた感じだと、矢萩さんのがやや上かなぁ? 川島さんと矢萩さんだと、組手スタイルが違うから何とも言えないけど。ちょうど、朝香さんと崎岡さんがまったく違う組手スタイルだったようにね?」


   ざっ・・・・・・  ざっ・・・・・・  ざっ・・・・・・


「前原の説明のとおりだね、大南。・・・・・・わかったかい?」

「「「「「 さ、崎岡さん! 」」」」」


 前原たちがお弁当を食べているところへ、等星三本柱の三人が訪れた。


「・・・・・・内山は、うちの矢萩との試合で残念なことになってしまったな。ケガの具合は?」

「田村先輩が電話で聞いて下さいましたが、前歯が歪んだこと以外、特に心配ないそうです。わたしも紗代も、けっこう焦りましたけど。ケガよりも、真衣のメンタルがこの先心配です」

「・・・・・・そうだったの。残念ね、内山さん。・・・・・・病院は、どこへ?」

「柏沼総合病院だよ。学校のすぐ近くに、大きい総合病院があって。そこの歯科か口腔外科に行ったんだと思う。・・・・・・もう、診察終えたから、今は家だと思うけど・・・・・・」

「そうかぁ。お大事にね。・・・・・・有華、里央、そろそろ行かないと遅れちゃうけど?」

「ちょっと待て、朋子・・・・・・」


 崎岡は携帯を取りだして、何やら高速でメールを打ち始めた。


   バババババババッ  タタタタタタッ  タタタタタッタタタタタタタタッ


「ん? 有華、どうしたんだ?」

「・・・・・・ふふっ。有華らしいね。・・・・・・そういうことか」

「これで・・・・・・よし、と。・・・・・・悪かったな、柏沼のみんな。・・・・・・じゃ、私らは午後用事があるから、ここらで失礼するよ?」

「おぉ、またなぁ。わざわざ悪かったねぇー、崎岡ぁ。朝香も諸岡も、またなー」

「また、どこかで。監督役も大変だろうが、頑張れー? 田村なら大丈夫だろうけどさ。私も有華や朋子らと、今日は用事があってねー」

「またね、みなさん。・・・・・・阿部さん、新人戦で主将はいろいろ大変だろうけど、ファイト」

「あ! は、はい! ありがとうございます、朝香さん! 頑張ります!」


 崎岡たちは、手を振って会場から去って行った。三人でこれから買い物に行くとのことだ。諸岡お勧めの、小鳥のマークが目印のお洋服屋さんに行くらしい。

 お昼休みも半分が過ぎ、みんな、午後に向けてそれぞれの時間を過ごしていった。

 午後はどのような熱戦が展開されるのか、まだまだ目が離せない。


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