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研究員解禁です

  


 世の中、何が起こるかなど本当に分からないものだと、最近、正文はつくづく思う。

 

 昨年の今頃は、どうにかこうにかこなせる様になった店長の仕事に手一杯で、まさか自分が村長などと言う仕事に就くとは夢にも思っていなかったし、自分の傍らに美しい女性、それもダークエルフなどという存在が居るようになるとは想像の埒外であった。


 

 そして、本来「爆発しろ!」と言う側の小田と言われる側の美男子が、こうして仲良さ気に互いの嫁自慢をしている光景なども、そうした思いもしなかった光景の一つだ。






 祖父の味方作りがひと段落すると、それまで既婚者、女性に限られていた研究者等の財閥関係者も、独身の人間の現地調査・研究の許可が下りた。


 財閥側ではダークエルフたちの保護という観点から、こうした規制がかかっているとしか思っていなかった様で、祖父は彼女たちのプレデターぶりを故意に触れなかった節がある。


 まあ、とは言っても、その辺りをあからさまに口にしたり、大声で喧伝すると言うのも色々と憚れるものではあったのだが・・・。





 そうして、見事に独身の研究者や社員たちが捕まった。



 そうした捕まった人間の一人がこの小田と談笑している美男子だ。


 イケメン、というより美男子と言った方がしっくりくる、素材に無頓着な研究馬鹿の雰囲気を纏いつつもどこか育ちの良さを感じさせる青年は、あろうことか財閥創始者の本家筋の人間だった。



 

 当初は「うわぁ、見事に捕まってるなぁ」と気楽に構えていた正文だが、彼の素性を知って「げっ、厄介な事に」と頭を抱えた。



 小説やドラマなんかを通じたかなりバイアスのかかった情報が元ではあるが、そうした血筋の人間の結婚相手などというものは簡単にはいかないというくらいは分かる。

 少女マンガやメロドラマだと、そうした御曹司と恋に落ちた普通の娘は色々と酷い目に遭っていた。


 「妾、愛人なんてのもあり得るか、その辺どうダークエルフに説明したらいいんだろ?」と、正文は一人悶々と頭を悩ませたりしていたが、事は思っていたよりも遥かに簡単に収まった。






 なんでも今まで女性に目もくれず、学問そして研究に邁進し、縁談等には関心も持たず、平気で寝癖頭に白衣で見合いに臨んだりして、親も半ば結婚は諦めていたらしい。


 外見はいいので、妹の友人や同じ大学だった人間からもアプローチは受けてはいたものの、鈍感な上に優先順位(研究優先)がはっきりし過ぎていて、女性が寄り付く事が出来なかったという話も後から耳にした。



 上に男が二人、下に女が二人と兄弟の数が多い上、上二人が既に結婚している事も彼への風当たりを弱めていたそうだ。



 とは言っても親にしてみれば、やはり自分の息子が結婚もせず、一生独身で過ごすと言うのは不安でもあり、淋しくも感じる事であったので、相手が何者であろうと「結婚をする気になった!」というだけで望外の喜びであって、相手の素性が財産目当ての詐欺じみた相手でない限り、誰であろうと感謝こそすれ反対はしないと、わざわざ時間を作って嫁の顔を見に来た。



 「意外に面食いだったんだな」とは嫁の顔を見た父親の感想。


 母親の方は「今度はそちらが遊びに来てね、出来れば孫を連れて」等とかなり気持ちが先走っていた。




 

 その場に付き合うことになった正文は、なんとはなく、祖父が「計算どおりじゃ・・・」などとニヤリと笑っている映像が頭に浮かんでげんなりした。


 ここまでうまくいくケースがあるとは思っていなかったろうが、財閥サイドの人間を更に自分たちの方に引きずりこむ為の手のひとつであったろう事は間違いない。


 実際、研究員やら社員は彼ほどのサラブレッドではないにせよ、それなりに良家の子弟が多く、そこを身内として取り込めれば今後、プラスになる事は間違いない。






 美男子は相変らず研究バカではあるものの、今では嫁にはしっかりとゲットされてしまっており、嫁を通じて小田やら正文やらとも交流を持つ様になっている。



 一緒にあちらの世界の村等にも行っている。


 嫁の案内で山の斜面にへばりついては土や岩のサンプルを採ったりしている姿は、あちらに行った際の定番の光景だ。

 もやしっぽく見えるのに意外と体力がある様で、嫁と一緒に結構身軽に斜面を動いている。




 最初の時に比べれば行き来の緊張感は薄れ、それでもダークエルフたちはパートナーと一緒で無ければ行こうとしないが、最初の時の様に全員揃ってという事はなくなってきている。



 爺様、婆様たちも何度かあちらに行き、マサ爺などは猟銃で猪に似た(牙だけでなく、角まで有った)モンスターを仕留めたりして(しっかりとダークエルフたちのサポート付きではあったが)、ダークエルフから尊敬の眼差しを受けて悦にいったりしていた。




 

 「いやあ、ウチの嫁さんは努力家でウチの実家の味を既にかなりマスターしてますよ!」


 「ウチの嫁さんは話す時は声は小さいけど、歌が好きでとても綺麗な声で歌うんですよ! でもって歌い終わった後に照れた表情なんか見せて、それがたまらなく萌えるんです!」



 「今まで腹が膨れればなんでもいいと思ってたんですが、もう嫁のメシ以外は食えませんね!」


 「休日は二人でお菓子とか手作りで作ったりしてるんですよ。これがまた、一所懸命作ってるトコも、出来あがりをワクワクしながら待ってるトコも、食べて幸せそうな顔してる所も全部魅力的で!」



 

 なんというか・・・漏れ聞いてるだけで「ごちそうさま」と言いたくなる二人の会話に「よく聞くと微妙にかみ合ってないよなぁ」などという意外に冷静な感想を抱く正文。


 既にかなりの惚気耐性が付いてしまっている。

 彼らだけでなく作業員やら、新たに捕まった研究員どころか、あの孝典からまで惚気を聞かされており、耐性が無ければ口から砂糖を吐いている所なのだ。



 そうした傍観者的振る舞いをしている正文も、来週には個人的では有りながら、対外的にも大きな意味を持つイベントが控えており、こうして彼らに付き合ってその話を聞いているという現状は、一種の逃避である。 



 シオネと正式に結婚式を行い、多くの客人を招いた披露宴を開くのだ。





そろそろ、ダークエルフの売れ残りが少なくなってきました

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