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59.尋問



【和暦:緯新30年 対モンスター部隊特別研修センター】



 俺は抵抗をやめ、そのまま黙ってカサマツについていった。


 連行されてきたのは、軍の敷地内にある施設だった。

 対モンスター部隊特別研修センター、と書かれた門をこえて、センサーにカサマツが前腕をかざすと、電子音とともに白い扉は開かれた。


「ここで待ってろ」


 そう言われて入ったのは、白い部屋だった。

 机と椅子が一組あるだけの狭い部屋。

 内装は新しく清潔感があるが、窓がないため圧迫感も同時に感じる。


「待ってるって、何を」


「……知らん。オレはお前を連れてこいとしか言われてへん」


 カサマツは無線機に向かって何かを報告している。学生一名、研修棟に収容完了しました。

 収容、という物騒な言葉に心がざわつく。


 そのままカサマツは部屋を出て行った。一人で真っ白な部屋に取り残される。


 これから何をされるのだろう。

 連行、と聞いて、想像していた警察施設や牢屋のような空間ではなかったことは意外だった。


 カサマツが出ていったドアのノブを引いてみるが、当然開かない。

 通り抜けるためにはチップか何かでの認証が必要なのだろう。



 どれくらい、そこにいただろうか。


 時計も何もない空間で、スマホも研究室に置いてきたままだ。

 時間を確認する手段はないが、体感的には数十分経っただろうか。


 白い部屋に、一人の男が現れた。


 その男は、いつかの配信で見たことがある。鋭い眼光と短く整えられた黒髪、軍服の上からでも筋肉が盛り上がっているのがわかった。

 目が合った瞬間、ぞわりと全身が粟立った。

 これは恐怖。生物として、絶対に逆らえない強者の迫力。


「……三波善」


 男は短く俺の名を呼ぶと、靴を鳴らして一歩一歩、俺に近づいてきた。


「……イズミノ、陸将……」


 自分の声が震えているのがわかった。汗が粒となって、だらだらと背中を伝う。


「座りなさい」


 目の前の椅子を示して、そう短く指示をする。

 情けないことにもつれそうになる脚で、俺は椅子に座った。


「きみは立ち入り禁止区間に、軍の許可なく侵入した。これは認めるか?」


「……」


 上から降ってくる声に、脳がじりじりと焼ける心地がした。

 黙っている俺に、イズミノ陸将は畳みかける。


「無言は肯定と捉えるが。……もう一度聞く。きみは立ち入り禁止区間に侵入した。認めるか?」


 有無を言わせない迫力に、喉の奥で引っかかってしまった声を、なんとか絞り出す。


「……はい。……立ち入り禁止なのは、知りませんでした」



 イズミノ陸将は俺をまっすぐ見たまま続ける。


「きみはモンスターについて堂々と嗅ぎまわって、我が国の秘密事項を暴こうとした。……これは認めるか」


「そんな、……」


 そんなつもりはなかった。そもそも機密情報であることも知らなかったのだ。

 興味のままにモンスターの痕跡を調査し、偶然そこにたどり着いてしまった。

 それを話そうとした途端、イズミノ陸将は、俺の肩を掴んだ。


「イズミノ・スイを知っているな?」


「……!」


 食い込む指の感触。聞き慣れた名前。

 イズミノ陸将の娘、人類の電池。


 俺の反応で察したのだろう。イズミノ陸将は表情を変えないまま、声のトーンを落として話し続けた。


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