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かざす掌/束の間
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唸る騒音 耳障りな声
下心ばかりの温もりが
私の全てを奪って
麻痺した感情
呑んだ溜息は囁いた
いくつも手に入れるくらいなら
最初から何処へも行けないよ
貴方は気づかないのね
だから私の頬に触れて
瞳を覗き込んだってもう
透き通った夢は沈み切った後
素直になれなかった
その白が濁っていくだけ
これでいいの裏側は臆病
貴方と向き合うことよりも
私を壊す方が簡単だった
そうずっとそうしてきたの
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きっと世界は単純だ
そう感じることは難しいけど
だってあの時間一つだけで
僕は変わってしまえるから
生まれた意味も正解の価値も
君と居れば必要ないから
死にたい衝動も壊したい自分も
そうするしかなかったから
きっと世界は単純だ
君への感情はエゴに塗れて
果たしてこれは恋なのか
いつもそうだ
名前や場所に興味はない
君の声 君の匂い
そんなことばかり覚えている
言葉の輪郭を忘れ
現実は剥離していくばかり
どうすれば大切にできる