619(エピローグ).新たなる伝説
『これで……全てが終わったんだな』
「ああ、決着はついた。でも俺たちにはやらなきゃならねえことがまだまだあるだろ」
「そうね。まずは向こうの世界からやってきたあなたたちが帰るかどうか……ってことを考えなければいけないですよね」
すでに動かなくなっているディルクの身柄を拘束し、真っ二つになってしまったレイグラードをしっかりと持っている、セバクターとエリアスの二人の異世界人たち。
彼らはこの先、エンヴィルーク・アンフェレイアに帰るつもりなのだろうか?
もしくはこっちの世界で過ごすつもりなのだろうか?
ルディアからの疑問を耳にして、二人は自分の考えを述べることにする。
「もちろん僕とセバクターは、向こうの世界に帰ることに決めてるよ」
「ああ。俺たちの目的はもう達成したんだし、これ以上こっちの世界にいる理由もないからな。そのために、これをファーレアル様から受け取って元の世界に帰る特に使えと言われているんだ」
そう言いながらセバクターがズボンのポケットから取り出したものは、一見何の変哲もない魔晶石のような黒光りしている拳大の石だった。
しかしその石をよく見てみると、妙にいびつな形をしているのが気になる。
あの石は一体何なのだろうかとこちらの世界のメンバーたちが考えていると、今度はエリアスがコートの内ポケットからこれまた奇妙な石を取り出す。
そしてその二つの石の断面は、ピッタリとくっつくようになっていた。
そしてその瞬間、くっついて一つになった石が黒光りの状態からいきなり金色の光を出しながら輝き始めたではないか!!
「うわっ!?」
『そ、それは一体……?』
「これはファーレアル様が僕たちの帰還のために創り出してくれた、転移石と呼ばれる特別な魔晶石なんだ。だからこの光に包まれて、僕たちは元の世界に戻ることができるんだよ」
「いろいろと世話になったな。ニルスは空中で粉々になって爆死したし、このディルクとレイグラードの亡骸の処分は俺たちがやる」
「向こうの世界は僕たちに任せて。だから君たちはこっちの世界を頼んだよ!!」
その言葉を最後に、金色の光に包まれたエリアスとセバクターの二人は空に向かって粒状の粉になり、ついには完全に消滅してしまった。
一方で残されたヘルヴァナール側のメンバーたちは、これからどうするかを考えなければならなくなった。
「さて……俺たちはこれからどうするかだな」
「まずはディルクとニルスたちに壊された、各国の街の修復から始めましょう。それからこっちの世界にまだ獣人たちが残っていればその排除もしていかなければならないわね」
そう考えるルギーレとルディアだが、ドラゴンたちにもまだやらなければならないことがあるのだ。
『余たちも、まだこの世界に爪痕をいろいろと残されてしまったわけだからそれの調査に赴くとしよう』
『我とセルフォンは、ファルスとイディリークとラーフィティアの看視と復興をしていかなければな』
『私たちもそれぞれの持ち場があるからな。それに、今回のことに対して各国への説明もしなければならん』
『そーなんだよなあ。全く、これから俺様たちは大変だぜ』
『そうだよ。だが、それは吾輩たちが責任を持ってやらなければならないことでもあるんだ』
『そうだねえ。それじゃ僕はまずヴィルトディンに向かうとしようかな』
『だったら某はイディリークに向かうとしようか。ついでにそなたたちを乗せていくとしよう』
全てに決着はついた。だが、この世界にはまだまだ色々なしがらみなどが残っているかもしれない。
それでも、エターナルソードに認められたルギーレがいるのであれば心配ないだろうとルディアは確信していた。
そんな彼女に対して、ルギーレからこんな申し出が。
「なあ、ルディア」
「何?」
「これから先はまた長い旅路になると思うけど、俺一人じゃあとても手が回りそうにねえんだよ。だから……俺と一緒にまた来てくれねえか?」
その言葉に対して、ルディアが出した答えはこれだった。
「ふふ……もちろんよ。私は元々あなたについていくつもりだったからね」
「助かるぜ。それじゃ……出発だ!!」
ルギーレの声とともに、こうしてまた新たな旅が始まるのだった。
魔剣となったかつての「聖剣」が遥か彼方へと消えていく……。
……もう、この世に魔剣は存在しない。
歴史は常に証明する。
時代は変わるものだと。
今、確かに時代は変わった。
新たな「聖剣」という名の「伝説」とともに……。
実力不足で勇者のハーレムパーティーを追放された男が伝説の剣を手に入れた~そしてのんびりと旅をしながら、最強の少女魔術師と一緒に気に食わない悪党を成敗し続けていったら、いつの間にか英雄になっていました~ 完
ここまでお読みいただきありがとうございました。
また次回の作品でお会いしましょう。




