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616.打ち消す力

 彼女の力が必要? しかも病み上がりなのに?

 さすがにその申し出には賛成できないとタリヴァルを止めようとする他のメンバーたちだが、それを静止したのは他ならぬルディア本人だった。


「私なら……大丈夫です」

「ダメだよルディア、まだ動いちゃ!!」

「これぐらいなら平気です。皆さんのおかげでここまで回復できましたから。それで私に手伝って欲しいことって何ですか?」

『それはな……』


 向こうが奥の手を出してきたのであれば、こちらも奥の手を出さないわけにはいかないのである。

 ただしそれも想像だけの思いつきに過ぎないので、まずはタリヴァルがイークヴェスから預かってきたもう一本のビンを取り出した。


『このビンにお前たちのありったけの魔力を注ぎ込むんだ!!』

「俺たちの?」

『そうだ。奴の魔力の多さは想像を超えたものだ。それを超えるには我らの魔力を全て注ぎ込むんだ!!』


 もちろん思いつきだけの作戦なので、これで上手くいくかどうかは全くわからないが、魔術師であるルディアがこうして動けるようになったのは大きいので、彼女の魔力も全て注ぎ込んでもらうことにする。


『全員でこのビンに向かって手をかざすんだ!!』


 タリヴァルの指示通り、いまだに戦いを繰り広げているルギーレとイークヴェス以外のメンバーたち全員の魔力が、かざされた手を通してビンの中に入っている透明な液体に向かって送り込まれていく。

 すると中のその液体が赤から青、青から黄、黄から緑……というように次々に色が変わっていくではないか。

 中でそれぞれの魔力が液体を通して混ざり合っているらしく、異世界の人間であるセバクターとエリアスの魔力も合わせて、最終的にはドス黒く濁った液体が完成した。


「うわぁ……何だか気持ち悪い色ですね」

『これでいいんだ!! 感謝する!!』


 ちょっと引き気味になっているのを隠そうともしないルディアに背を向けたタリヴァルは、ルギーレと一緒に戦っているイークヴェスの元へと全速力で戻っていく。


『イークヴェス、できたぞ!!』

『よし、投げろ!!』


 タリヴァルの声に反応したイークヴェスは、そのタリヴァルが投げてきたドス黒い液体の入ったビンを何とか受け取った。

 そしてルギーレに向かって大声で叫び、最後の準備を整える。


『ルギーレ、余に向かって走れっ!!』

「は……っ!?」

『早くっ!!』


 こんな戦っている状況でどーしろってんだよ、とルギーレはすぐに行動に移すことはできなかったのだが、そこは再び加勢しにきてくれたタリヴァルに加えて、回復魔術ですっかり回復したルディアやセバクター、それからグラルバルトがルギーレとディルクの間に入ってディルクを足止めしてくれる。


「くっ……邪魔をするなああああっ!!」

『ぐああああっ!?』

「きゃああっ!!」

「ぐふっ……」


 瞬間、地面をえぐり爆風を巻き上げるディルクの強大な一撃が、彼を足止めするべく集まってきたメンバーたちに襲いかかる。

 レイグラードにこれ以上入らないぐらいにまで魔力を込め、思い切り振り下ろすことによって魔力による爆発を引き起こすのだ。

 それによって吹き飛ばされるメンバーたちを視界の隅で一度確認しつつ、視線をまっすぐ前に戻したディルクのその視界に飛び込んできたもの。

 それは、爆風と巻き上げられた砂煙の中から虹色に輝く闘気を纏いながら飛び出してくるルギーレの姿だったのだ。


「うわぁっ!?」

「おりゃあああっ!!」


 その余りの闘気に、一瞬怯んでしまったディルクに対してルギーレが一気に斬りかかる。

 ガァン、と激しい音を立てて刃同士がぶつかり合い、虹色の闘気が飛び散ってディルクの腕から全身にかけて痺れをもたらすことに成功した。


(さっきよりも攻撃力が上がっている……!? くっ、ここまできて怯んでたまるか!!)


 ルギーレの戦闘力が上がったのを肌で感じながらも、それでも自分だって負けるわけにはいかないディルクも気を取り直してレイグラードを構え直し、向かってくるルギーレの攻撃に合わせていく。

 まさに我慢くらべの限界バトルが続くのだが、その一方で決着の瞬間も確実に近づいていた。

 そして何より、ルギーレのみならず戦えるメンバーはまだ他にもいる。

 回復役がいれば攻撃役もいるので、そのメンバーたちもルギーレを援護するべくディルクとルギーレの知らないところで徐々に動き出していた。

 全てはディルクを倒すために。

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