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614.強さの秘密

「お……おおおおおおおっ!?」

『よし、いけるぞルギーレ!!』


 今まで防戦一方だったのに、目の前でその優勢だった相手が吹っ飛んでいくのをこの目で見たルギーレは、その光景に喜びと驚きが混じった叫び声をあげる。

 その隣でビンを渡したイークヴェスは、ビンの中の液体の効果に満足そうにうなずきつつルギーレを勇気づける。


(ぐっ……今のは何だ? 何が起こった……!?)


 一方で、完全に優勢だった自分がこんなにあっけなく吹っ飛ばされてしまったことに驚きを隠せないディルクは、レイグラードを杖代わりに地面に刺しながら起き上がった。

 その起き上がるのにも、身体中を貫くこの痛みは一体何なのだろうか。今までの人生の中でここまでの痛みを受けたことはない。

 そして、その痛みを自分に与えたのは間違いなく目の前に立っているルギーレであり、彼に与えられたあのビンの中に入っている謎の液体の効力だろうというのは簡単に心当たりとなった。


(向こうにはドラゴンたちがついていて、僕はたった一人……このままではまずいな!!)


 かといって、このまま普通に戦っても到底こちらには勝ち目はない。

 ならばこちらも、今まで以上の力を解放するしかあるまいと判断したディルクは、レイグラードの柄をカチャカチャと何やらいじり出す。

 実はそのレイグラードの柄の部分には、ディルクだけしか知らない秘密があった。


(ここに指を引っ掛けて開けて……この赤いボタンを押せば!!)


 柄の部分が開くようにできているレイグラードは、その中にあるボタンを押すことによって更なる……ルギーレでさえも気づいていなかった、真の力を解放できるようになるのだ。

 それは、本能にある闘争心を揺さぶる禁断の力でもあった。


「ぬぐぐ……うあああああああああっ!!」

『な……!?』

『まずい、離れろっ!!』


 イークヴェスとタリヴァルがそう言いながらルギーレを引っ張り、大きく距離を取る。

 レイグラードを中心に、多大なる魔力の解放が感じられるとなれば自然と距離を取らないわけにはいかないからであった。

 そして距離を取られた側のディルクはといえば、レイグラードから発せられる眩い光に包まれて強大な力が身体の中に入り込んできているのが感じられていた。


「うっ……うおおおおおおおおっ!!」


 まるで獣のような咆哮をあげつつ、光が収まって現れたそのディルクの姿は……特に見た目としては何も変わっていない。

 だが、よく見てみるとその面長の頬に紫色に輝く紋様が血管のように浮かび上がっているのがわかった。

 それに伴って、彼を包み込んでいるのが同じく紫色に輝く気迫のような煙であった。

 いずれにしても、レイグラードをいじったせいで何か得体の知れない変化が起こったのだとルギーレたちにはわかった。


「な……何だありゃあ?」

『迂闊に近づくのは危険だろう。少なくとも我にはそう思える』

『余も同感だな。……しかし、近づいていかなければ余たちに勝ち目はないのもまた事実……』


 ただただ驚くばかりのルギーレと、冷静に分析をする白と黒のドラゴンたちだが、そんな三名に対してディルクはレイグラードを構えて一気に駆け寄ってくる!!

 来ないならこちらからいくぞ、とその行動で表現しつつ、ひとまずルギーレがエターナルソードを構えてそれに立ち向かうことにする。


「くっ……!!」

『お、おいルギーレ!!』

「やってみなきゃわかんねえぜ うおおおおおっ!!」


 イークヴェスの静止を振り切ってディルクに立ち向かうルギーレだが、向かっていった先は明らかにこれまでとは違う力が渦巻いていることがわかったのは、その数秒後のことだった。


「……無駄だよ」

「ぐおわっ!!」


 まるで先ほどのお返しと言わんばかりの……いや、それ以上の力によってディルクに吹っ飛ばされるルギーレが宙を舞う。

 それもレイグラードの斬撃ではなく、ディルクから生み出された衝撃波によって吹き飛ばされた結果だった。

 先ほどのディルクの気持ちが痛いほどにわかりながらも、これは規格外の力だと吹っ飛ばされつつ確認したルギーレは、エターナルソードを先ほどのディルクのレイグラードと同じく杖代わりにして立ち上がった。


「ぐ……はっ、な……んだよあれは……!?」

『くそっ、化け物め!!』


 もはや彼は人間ではなく、完全に化け物と化してしまったのをルギーレたちはヒシヒシと感じていた。

 こんな化け物を相手にどうやって戦えばいいのだろうか?

 その鍵は、ルギーレたちの中にいるとある人物が握っているのであった。

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