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602.翻弄される人外たち

(ふむ、七匹のドラゴン全てがここに集まったか。それならそれでちょうどいいですねえ)


 ルギーレたちの周りに七匹のドラゴン全てが集まっているこの状況からして、ここでこの世界の看視者たちを一気に潰して向こうのエンヴィルーク・アンフェレイアと世界を繋ぎ、二つの世界を統一して自分と師匠による統治を行なう。

 それが自分たちの壮大なる計画なのだと内心でほくそ笑みながら、まずは忌々しいルギーレたちを全員ここで抹殺するべく、空中を旋回しながら弾丸を撃ちまくるニルス。

 当然それを止めるべくドラゴンたちが襲いかかってくるものの、この戦闘機は例えドラゴンの魔術だったとしてもそうそう簡単にやられはしないほどの魔術への耐性を持っている。


(しかも、この兵器の機動力はドラゴンたちよりも明らかに高いですからねえ。ハッキリいってこの世界の看視者といえども敵うような兵器ではないんですよ!!)


 アガートも割となかなかの戦績をあげてくれてはいたものの、そのアガートでさえも追いつけないほどの速さで移動可能である。

 ドラゴンたちも数の差を活かして襲いかかってくるが、まるで空中を舞う木の葉の如くニルスはヒラリヒラリと機体を軽快に操って、逆にドラゴンたちの背中を取ってやる。


(ふふふ、そこですよ!!)

『ぐおっ!!』


 手元の操縦桿の先端についている青いボタンを押し、弾丸を発射するニルスに背後を取られたグラルバルトが、先ほどのエルヴェダーと同じく避けきれずに攻撃を受けてしまう。

 この世界の看視者として全ての生物たちの頂点に立つとも言われているドラゴンたちだが、違う世界からやってきた相手にはその頂点の座も譲るしかなくなってしまうのかもしれない。


【たかが……たかがこんな鳥一匹に僕たちが翻弄されるなんて!!】

【恐ろしいほど速い!! だが遠くから見れば大体あの鳥の動き方や速さがわかってきたぞ!!】


 絶望的な表情になってしまうシュヴィリスと、そんな絶望的な状況の中でも何とか活路を見出そうとするアサドール。

 だが、シュヴィリスが霧を出して戦闘機の視界を遮ろうがセルフォンが竜巻を起こして吹っ飛ばそうとしようが、ニルスはそれを嘲笑うかのように機体を操縦して攻撃していく。

 このままでは本当に全てのドラゴンがやられてしまう可能性が出てきた現状だが、だからといって人間たちがどうすることもできないのも歯痒くて仕方がなかった。


【お手上げか、くそーっ!!】

『……ん?』


 セルフォンが諦めかけたその時、そばで怪我を堪えながら戦いを続けていたグラルバルトが下から何者かが接近してきていることに気がついた。


『……あれは!!』

「ふっ!!」

「む……?」


 ルギーレたちとは別に行動していた、ニルス以外の異世界の住人が満を持してやってきた。

 セバクターは空こそ飛べないものの、ドラゴンたちよりも小柄なため、背中に乗せてきてもらったグラルバルトとともに戦闘機の下から回り込む。

 そして、そのニルスが視界を確保するべく見ている前の窓に向かって飛びついて、身体全体で遮る!!


「ふん……生意気な」

「うわあっ!?」


 だがニルスは、両手でそれぞれ握っている二本の黒い操縦桿のうち左の操縦桿の側面についている、赤いボタンをガチッと音がするまで押し込んだ。

 その瞬間、窓に向かってブシャーッとヌルついた液体が噴射される。

 これは飛行中に窓が汚れてしまった時、応急処置として窓の汚れを取り除いてくれる特殊な液体なのだが、石鹸の成分が入っているためにセバクターが目にそれを入れてしまえば当然痛くて目を開けていられないのであった。


「うっ……」

『セバクター!!』


 とっさに一番近くにいたエルヴェダーが急行し、戦闘機のガラスの上から落ちていくセバクターを空中で受け止める。

 そのまま大木城の屋上に彼を運び、回復魔術で目の中に入った液体を消し去ることに成功したのだが、このままでは埒が明かない。

 人外として、人間たちよりもいろいろな面で優秀な能力を持っているはずの仲間たちが戦闘機一つに翻弄されている。

 このままどうにもできないのか……と歯軋りをしたルギーレが戦闘機を見つめた時、ふと先ほど聞いたイークヴェスの一言を思い出した。


『ああ。そして余は動けないままだから、勝機があるとすれば今まで溜めに溜めた魔力を使った魔力砲の一撃で何とかするしかない』


 もしかしたらそれがいけるかもしれない。

 いや、自分だからこそきっと行けるはずだ。

 そう考えたルギーレは足枷をつけられたままのイークヴェスに駆け寄り、自分の作戦を手短に話した。


『……何だと? お前があの戦闘機を引き付けて倒すだと?』

「考えたんだがこれしかない。いいか、まずはな……」


 そう……成功すればお慰みのその作戦は、ルギーレ以外の一行を驚愕させるには十分なものだった。

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