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601.異世界から飛んできた鳥

 そのころ、地下にある魔力砲の部屋では着々と起動準備が進められていた。

 自分の偽者が現れたとルギーレから報告を受けていたセバクターを中心に、足りない部品を集めて何とかこの段階まで持ってこられていた。


「ふー、これでもうちょっとというところだろうか?」

『そうだな。魔力に関しては黒いドラゴンがどこかから送り込んできているみたいだから、そこは充填の必要はないとみえる』


 グラルバルトいわく、この魔力砲にはすでに黒いドラゴンの魔力がたくさん充填されているようで、この一発だけで町どころか各国の都を一瞬で吹き飛ばせるほどの絶大な威力を誇るものとなっているらしい。


『それだけの魔力が充填されているんだから、吾輩たちだってくらえばどうなるか……』

「そ、そこまですごいの?」

『ああ。吾輩たちのリーダーというだけのことはあるからな。とりあえずはこれがあれば大丈夫だとニルスやディルクの方も考えていたらしいが、すでにそれは吾輩たちの手の中にあるからな』


 だから何かあった時のために起動しておけば、それだけで精神的にもすごく楽になるもんだぞとエリアスに対して苦い笑いが隠せないアサドールの一方で、粛々と起動準備を進めていたセバクターに魔術通信が入ったのはその時だった。


「……ルギーレ?」

『セバクターっ、ドラゴンたちに緊急出動させてくれ!!』

「え……どうした?」


 今までに聞いたことがないほど切羽詰まったルギーレの声に、これは絶対にただ事ではないとセバクターは判断した。

 しかしその先の話を聞いてみないとわからないので、ルギーレに対して何が起こっているのかの説明を求めたセバクターは、よくわからない話を聞くことになる。


『大きな金属製らしい鳥が俺たちを襲っている!!』

「えっ? 金属製の鳥?」

『そうだ! それもドラゴン並みにでかいものだ!! 物理攻撃は弓矢以外届かないし、魔術も耐性があるのか効きやしない!!』


 ルギーレの切羽詰まった話をよくよく聞いてみれば、それはどうやらニルスが異世界から持ち込んできた未知の兵器らしいのだ。

 ドラゴンたちをも上回る速度で空中を飛び回り、両側の翼に取り付けられている弾丸を発射する装置で攻撃してきたり、恐ろしい速さで突進攻撃を仕掛けてきたりするので屋上にいるルギーレたちは全然歯が立たないらしい。

 それは時間を少しだけ遡り、最初にその未確認飛行物体が空中から現れてすぐにわかったことであった。


「おい、何だあれは!?」

「金属製の……鳥!?」


 最初にそれを目にしたルギーレとルディアが、空を見上げて驚きを隠せない。

 銀色に輝く流線型のそれは、空間を切り裂いてこの世界にやってきた。

 どうやら鳥の魔物の一種らしいのだが、それにしては恐ろしい速さで空中を飛び回っている。


『な……何だあの鳥は?』

『僕たちでもあの速さには追いつけないような気がするけど、あれって多分ニルスがこの世界に送り込んできたんだよね!?』

『じゃなきゃ説明つかねーよ!! 俺様だってあんなの見たことねえし!!』


 とにかくあれを止めなければとんでもないことになってしまうのは目に見えているので、ここはドラゴンたちの斬り込み隊長的な役割も果たすことがあるエルヴェダーが元の赤いドラゴンの姿に戻って、その未確認飛行物体に一気に接近する。

 しかしその時、その場から動けないままのイークヴェスが大声を上げた。


『……ダメだ、戻れエルヴェダー!!』

『あっ!?』


 そのイークヴェスの声に反応してしまったエルヴェダーが、何がどうなっているのかわからないうちに銀色の鳥が動く。

 空中を軽快に宙返りして一気にエルヴェダーの方に頭を向けたかと思えば、その翼に取り付けてある砲口から弾丸を発射してきたのだ!!


『うおおっ!?』

「エルヴェダー!!」


 思わず大声をあげてしまったルギーレのその視線の先では、ギリギリで身を翻して弾丸を避けようとしたものの結局何発か被弾してしまい、空中で体勢を崩して落下していくエルヴェダーの姿だった。

 だが彼は懸命に空中で体勢を立て直し、何とか屋上まで戻ってきた。


『はあ……はあ、何だよあれ……!?』

『あれは戦闘機といって、エンヴィルーク・アンフェレイアで実用化されている空中戦闘用の超高速兵器だ』

「戦闘機……」


 イークヴェスの説明にもっと耳を傾けたいルギーレたちだが、どうやらその戦闘機という兵器はそんな時間すら与えてくれそうにないようであった。

 そう……それを操縦しているニルスも切羽詰まった状況なのだから。

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