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599.屋上のやり取り

「……ああ、わかった。そっちの方は片付いたんだな?」

「そうだ。こっちも何とかなったがそっちも終わったみたいだな」


 ようやく上に向かうルギーレたちの部隊と、地下に向かったセバクターたちの部隊で連絡が取れた。

 それぞれの部隊はそれぞれの偽者たちを殲滅し、セバクターたちは引き続き魔力砲の軌道に取り掛かり、ルギーレたちは最上階まで一気に駆け上がるだけである。

 地下に関してはもう昇降機も止めたので大丈夫だとは思うのだが、問題は最上階まで向かうルギーレたちの話だった。


「だが、ニルスがまだいないのだろう?」

「ああ。最上階にいるはずだとは思うんだが……行ってみないとわからない。今は九十五階までやってきたし、ルディアの偽者たちが山ほどいたダンスホールも制圧したから、残る敵で今のところわかっているのはニルスとディルクだけだからな」


 そう……これまでの一連の事件の元凶であるニルスとディルクを倒さない限り、この不毛な争いはいつまで経っても続くだけなのだ。

 しかし、ニルスとディルクがまだこれだけで終わるような男たちであるとは到底思えない。

 勇者パーティーを扇動し、数々の兵器を創ってこの世界中で大暴れさせられるだけの技術を持っている底知れぬ男たちであるという以上は、完全に奴らの息の根を止めるまでルギーレたちは安心できなかったのだった。

 それに、今までここにいるはずの黒いドラゴンとやらにもまだ会っていないのも気になる。

 なので、獣人たちや残っているルディアの偽者たちを倒しながら最上階である百階部分まで一気に突き進み、そこでルギーレたちが見たものはといえば……。


「……誰もいないぞ?」

『そんなはずはないだろう。現にここに奴がこの城の全体をいたるところからの視点で見られる大きな水晶があるのだからな』


 最上階に造られた、この大木城の主でありゼッザオの国王として認知されている黒いドラゴンのイークヴェスが住んでいる大きな部屋。

 ドラゴンの姿ではなく人間の姿で執務ができるようになっている長方形のその部屋には、この部屋を現在の寝床にしていると思わしきニルスの姿は見られなかった。


『こんな水晶は以前はなかった。となるとおそらくこれはニルスかディルクが用意したものなのだろうな』

『そんなことよりもタリヴァル、ニルスとディルクはどこに行っちゃったのかな?』


 水晶のことばかり気にしているタリヴァルにシュヴィリスがそう聞いてみるものの、そもそもここにニルスやディルクがいたのだろうか……ということも実際には定かではない。

 この上に残るは屋上だけなのだが、ドラゴンたちが言うには黒いドラゴンの魔力をそこから感じるということで、もしかしたらそこにニルスとディルクもいるのかもしれない。

 そう考えた一行はルギーレとタリヴァルを先頭にして屋上へと上がってみたのだが、そこで見た光景は期待外れのものだった。


「……あれ?」

『……お前だけか? イークヴェス……』


 もともと天まで伸びていきそうなぐらいに高いこの大木を利用した城というだけあって、屋上はさぞかし葉っぱで覆われているのかと思いきや、屋上はしっかりと整備された白い床が……百階部分の天井がそのまま地面になっている奇麗な造りをしていた。

 そしてその屋上部分では、タリヴァルやグラルバルトといった七匹のドラゴンたちのサブリーダーを務めている大きなドラゴンよりもさらに一回りほど大きな、紫色の闘気を出している黒いドラゴンの姿があっただけだった。

 その真っ黒な体躯に大きな角を生やし、赤黒く光っているその目つきは睨まれただけで気絶しそうなほどの迫力があった。

 しかしそこでただ黙って対峙していても話が進まないので、タリヴァルに続いてエルヴェダーが久々の再会を果たした黒いドラゴンに話しかける。


『よう、久しぶりじゃねえかイークヴェス。俺様たちの前からずーっと……ずーっとずーっとずーっと姿を消していただけあって、すげえ久々に会った気がするんだがな』

『僕もだよ。いったいどこで何をしていたの? まぁ……僕たちはちょっと人間を捜しに来たんだけど、いろいろと積もる話が君にはあるんだよねえ』


 エルヴェダーに続いてシュヴィリスもそのように話しかけてみるものの、目の前に鎮座している黒いドラゴンは黙ったままの状態が続く。

 十秒か、一分か、それとも一時間か。

 どれだけ時間が経ったのかわからなくなるぐらいの妙な緊張感の中で、ようやく黒いドラゴンのイークヴェスが口を開いたのだが、その答えは余りにも意味不明で意外すぎるものであった。


『異世界に消えた』

「……ん!?」

『お前らが余に聞きたいのは、あのニルスとかいう男のことだろう。あの男だったら空中で空間を割いて、自分の世界に帰っていった』

「いや、あの、それじゃ困るんだが……」


 まさか、せっかくここまで来たのにそんなオチだったなんて。

 今までのここまで上ってきた苦労は果たして何だったのだろうかと、ルギーレを始めとした一行はその答えにどう反応していいのか非常に困ってしまった。

 しかし、その中でもルギーレはニルスという男がそう簡単にこの世界のことをあきらめるわけがないとも考えてしまう。


(いろいろと世界中に被害を出しておきながら、自分の世界に帰っただと? ここまで来てそれは……俺には理解できねえ。きっとまだ何か、あいつが考えていることがあるはずだ!!)

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